私たち人間は、もともと自然の中で暮らし、生活してきました。都市化が進んだ今も、植物や自然に触れたい、落ち着くといった思いを抱くのは当然のことです。
しかし、自然が身近にあるメリットは、それ以上に大きいものかもしれません。リラックスできるだけでなく、仕事面でも効果があるようなのです。
この「自然と創造性の深い関係」特集では、そんな自然の力を紹介すると共に、その恩恵を享受するためのグリーン活用法についてお伝えします。
第3回は、ワーケーションの魅力にどっぷりはまり、週の半分は都心を離れた場所で仕事をするという山田竜也さんが登場。
ワーケーションの醍醐味とそのノウハウを紹介した前編に続き、今回はワーケーションをスムーズに行なうためのエリアや宿の選び方、持参したいおすすめのギアについて教えてもらいました。
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山田竜也(やまだ・りゅうや)

同志社大学哲学科卒業後、3年半の会社員生活を経て、2007年にフリーランスとして独立。株式会社パワービジョン代表取締役。専門分野はWebマーケティングで、成長スピードの激しいスタートアップやNPO法人を得意とするほか、コンサルティング、広告運用、Web管理の他、自分の所有するメディアからの広告収入、セミナー講師、著書印税、イベント売上など複数軸の収入を持つポートフォリオワーカーでもある。『すぐに使えてガンガン集客! WEBマーケティング123の技』(技術評論社)ほか著書多数。Twitter/@aryuaryu
快適なWi-Fi環境はマスト。他に大切にすることは?
滞在先で仕事をするとなると、おろそかにできないのがエリア選び、宿選び。山田さんはどのようなポイントを基準にしているのでしょうか。
エリア、ホテル選びの際にチェックしたいこと
1. 自然と触れあえる場所が近くにあるか
前編で紹介した「宿ごもりワーケーション」や「バランス型ワーケーション」のように、観光にあまり時間がかけられないときは、駅やホテルから近い場所に自然を感じられる公園や散歩道があるとベスト。
森林浴、森林療法という言葉がありますが、樹木が発散するフィトンチッドという揮発性の物質は、自律神経や呼吸を整えるといった癒やし効果があることもわかっているそうです。
散歩するだけでもリラックスできるので、そのあとの仕事が捗ります。
2. Wi-Fiが快適に使える環境かどうか
Wi-Fiが使えるだけでなく“快適に”使えることが大前提。
高級旅館の離れや大手チェーンのホテルでも油断は禁物です。大容量のデータをダウンロードするためにわざわざ部屋を出て、ロビーなどに足を運ぶようでは仕事になりません。
がっつり仕事をしたいときに限ってWi-Fiが使い物にならないと、泣くしかない…。ワーケーションあるあるですね。
ホテルや旅館のホームページに「Wi-Fi可」と書いてあっても、念のため電話で聞いてみるといいでしょう。「Wi-Fiが入りやすい部屋で」とオーダーするのもありです。
3. 近くにカフェやワークススペースがあるか
ホテルのWi-Fiも持参したモバイルWi-Fiもつながらないからといって、大切な仕事を投げ出すわけにもいきません。
近くにWi-Fiが使えるカフェやコアワーキングスペースがあるかどうかを事前にチェックしておきましょう。
温泉地や郊外は、中心地から離れるとたちまちWi-Fiが入らなくなることが多いです。
中心地に宿を取るか、Wi-Fiが使えるカフェやコアワーキングスペースの有無を調べておくといいですね。気をつけたいのは営業時間。地方はお店が閉まるのも早いですから。
何度でも訪れたい、旬なワーケーションスポットは?
週の半分はワーケーションをしている山田さんが実際にどんなエリアを訪れているかも気になるところです。
山田さんがすすめるワーケーション向きのエリア
1. オフシーズンのスキー場は穴場
白馬や越後湯沢といえば日本屈指のスキー場ですが、オフシーズンは冬とは違った雄大な自然が望める穴場なのだとか。宿泊代は手頃で、シャトルバスの送迎など、サービスが厚いのもおすすめの理由。
山田さんがよく行くのは「白馬」エリア。
「白馬東急ホテル」は、ワーケーション用のデスクとチェア、電源が完備されていて、Wi-Fiがものすごく速い。ドリンクバーも充実しているので1日中いられます(笑)。
それから「snow peak LAND STATION HAKUBA」や「THE NORTH FACE GRAVITY 白馬 CAFE」のように、アウトドアブランドも力を入れています。ますます楽しみなエリアですね。
また、「越後湯沢」は東京から新幹線で1時間というアクセスの良さと、駅の構内が充実しているのが山田さんのお気に入り。駅前にホテルがたくさんあるので、作業に没頭したいワーケーションのときによく利用するそうです。
温泉街ならではの情緒に浸りたいなら「野沢温泉」もおすすめとのこと。
2. 初心者はまず“地方都市”でお試しを
失敗がないのは、大阪、名古屋、福岡などの地方都市。アクセスの良さのはもちろん、出張でビジネスパーソンが訪れるためWi-Fi環境も整っています。
ホテルや駅、カフェなど、通信インフラが整っているのは安心です。
初心者の方はまず行ってみて、自分のワーケーションスタイルを探るのもいいですね。出張の機会があれば1日延泊して仕事をしてみるのもいいと思います。
山田さんいわく、初心者に特におすすめしたいのが京都。あちこちに寺社仏閣があるため、どこに泊まっても散歩で風情のある景観を楽しめ、観光気分も味わえます。
また、地方在住者なら「東京がおすすめ」と山田さん。「東京は意外と緑が多く、街並もダントツにきれい。首都圏在住の人もあえて都内の宿に泊まってワーケーションをしてみてほしい」と話します。
3. 外国人に人気の観光地

そんな京都や東京に共通するのは、外国人に人気の観光エリアであるということ。山田さんがよく訪れる箱根も、コロナ前は多くの外国人観光客が訪れました。
山田さんによれば、インバウンド向けに整備された街や宿はワーケーションが快適に行なえることが多いとか。
アクセスも良く、Wi-Fi環境も安心。自然や見どころも多くあるので、観光するにもちょっと食事をするにも事欠きません。
何よりいいのが「椅子の文化」。
文豪気分を味わいたいなら話は別ですが、畳に座椅子で長時間パソコンに向き合うのはつらいかもしれません。
外国人観光客向けに手を入れている宿なら椅子に座って仕事ができるデスクやスペースがあるはず。あえて和風にしている宿もあるかもしれないので念のため確認しましょう。
ギアからスマホアプリまで。あると便利なのは?
最後に、山田さんがワーケーションに欠かさないギアや、スマホに入れておくと便利なアプリを教えてもらいました。
●フリーWi-Fiアプリ「Japan Wi-Fi auto-connect」
スマホで近辺の情報などを検索したいときなど、フリーWi-Fiに接続を試みるも、その都度ログインの設定をするのが面倒であきらめてしまう…。そんなモヤモヤを解消してくれるフリーWi-Fiアプリ。
もともと外国人観光客向けに始まったサービスで、一度登録すれば、ログインに手間をかけることなく、日本全国で自動でつながる無料のスマホアプリです。
PCなどで仕事をする際は、フリーWifiは使用せず、固定IP&暗号化でセキュリティ対策が万全なサービスを利用しているのだそう。
●2メートルの延長コード
例えば、宿泊する部屋のコンセントがベッドの脇にしかないために、ベッドに腰かけて仕事をする羽目になったり、PCの充電器などプラグの形状が大きいために他のプラグとぶつかってコンセントに差し込めなかったり…。
山田さんが「何度も痛い目にあった」という電源問題を回避するためにも、2メートルほどの延長コードが1本あると便利です。
●防水グッズ
ワーケーションで登山を楽しむことも多い山田さんは、突然の雨に見舞われても仕事道具や着替えが濡れないように、「グラナイトギア」の防水スタッフバッグを愛用。
また、シューズは「ノースフェイス」「コロンビア」などの防水性や通気性に優れた素材のものを好んで履いているとのこと。
仕事だけじゃない。勉強や読書をするのも有意義
前編で「ワーケーションにはクリエイティブな仕事が向いている」と語った山田さん。
でもきっと「自分の仕事はクリエイティブではないし…」「セキュリティ上、旅先でなんてできる仕事ではない…」という人だって、たくさんいるはず。
そんな人がワーケーションを楽しむにはどうしたらいいのでしょうか。
山田さんは「クリエイティブな自己投資のために、ワーケーションを取り入れてみては?」とアドバイスをくれました。
語学や資格、副業のための勉強をしたり、目標や計画を立てたりすることも、すごくクリエイティブな作業です。
ふだんは捻出できない読書やビジネス本に書き込むノートワークの時間を旅先でつくるのも有意義ですし、それならWi-Fiのことを心配するもありませんから「泊まりたい」と思うエリアや宿を最優先して選べますね。
コロナ禍の今は積極的に移動することがはばかられますが、ワーケーションをするならどんな場所に行きたいか、旅先でどうやって仕事を進めたいかを考えるのも有意義です。
また、近くのカフェやホテルで行なう“ご近所ワーケーション”を試してみるのも良さそう。
そのときは、自然近くの公園を散歩したり、自然を眺めたりしてリフレッシュするアイデアを予定に盛り込むこともお忘れなく。
自然と創造性の深い関係を、ぜひご自身で探ってみてください。
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