私たち人間は、もともと自然の中で暮らし、生活してきました。都市化が進んだ今も、植物や自然に触れたい、落ち着くといった思いを抱くのは当然のことです。
しかし、自然が身近にあるメリットは、それ以上に大きいものかもしれません。リラックスできるだけでなく、仕事面でも効果があるようなのです。
この「自然と創造性の深い関係」特集では、そんな自然の力を紹介すると共に、その恩恵を享受するためのグリーン活用法についてお伝えします。
第2回は、ライフグリーンプランナーの森田 紗都姫さんに「仕事場とグリーンの関係性」をテーマに、仕事場にグリーンを取り入れるメリット、空間・目的別の植物の選び方などを教えていただきます。今回は前編です。
▼後編はこちら
森田 紗都姫(もりた・さつき)

ライフグリーンプランナー。室内外の植物空間を提案するデザイン事務所にて個人邸からオフィス、商業施設までプラン・施工を述べ100件以上手掛ける。幅広い視点で日常に植物を取り入れるきっかけを作りたいという想いからstudio YAMAMORIを設立。「植物とヒト」双方に心地よい場づくりを目標に幅広く活動を行なっている。[@yamamori_green/Instagram]
仕事場にグリーンを取り入れよう

集中して作業をしているときに、ふっとグリーンが目に入ると気持ちが和む。無機質な部屋の中に観葉植物やお花を飾るだけで空間に柔らかさが生まれるーー誰しもそんな経験はあるでしょう。
そんな癒しの効果のみならず、そこに植物を置くだけで集中力や創造力を高めることができるとしたら、殺風景なオフィスのデスクや在宅勤務が増えた自宅のワークスペースにもグリーンを取り入れてみたくなります。
植物を置くと、どんな効果が生まれるの?

植物が私たちに与えてくれる影響はさまざま。
ストレス軽減、生産性アップ、空気をきれいにするというのは数多くの実験で立証されています。
なかには、自然の要素を取り入れた環境では「人間の幸福度」が15%、「生産性」が6%、「創造性」が15%向上する効果がある(※1)という調査レポートも。
それ以上に、空間にグリーンを取り入れてみると、あったほうが過ごしやすく気持ちがいい!という感覚を実感できると思います。
たとえば、仕事でストレスがかかることがあったとき、森田さんは植物に触ったり、眺めたりするのだとか。
植物には、ストレスがかかったときに急激に分泌されるホルモン「コルチゾール」を抑制する働きがある=「ストレスを緩和する効果がある」という研究結果があります。これは植物に直接触れずに目で見るだけでも効果的なんだとか。
植物は環境をよくしてくれるだけでなく、人の心に影響を与え、精神的にもよい効果が与えてくれるからこそ、仕事場にはグリーンが欠かせないと言えます。
とはいえ、なんとなくグリーンを置くのではなく意識的に選ぶ必要がありそうです。
まず、集中したいオフィス環境では、「緑視率(※2)」を13%程度にとどめること。
視界に入る植物が多くなりすぎると圧迫感が生まれたり、ワクワクしたり、ざわざわと心が落ち着きにくくなってしまいます。
空間の緑視率を測るには、目線の位置でその場所の写真を撮ってみて、緑の量のバランスを確認するのがおすすめです。
※1:ビジネス心理学を研究するロバートソン・クーパー社が発行した調査レポート「ヒューマンスペース・グローバル・レポート(PDF)」(世界16カ国の働く人々を対象に行った調査)より。
※2:「緑視率」人の視界に占める草木の割合を示す指標
「集中」と「リラックス」。観葉植物の上手な選び方
グリーンプランナーとして、植物と人をつなぎ双方によい環境をづくりをしている森田さんのご自宅は、まさに植物と対話しているような、室内と広いベランダに大小なんと100種類を超える植物がバランスよく配置された空間です。

集中できる環境とリラックスしたい空間、どのように切り分けて植物を選んでいるのでしょうか。
目的別に植物を選ぶポイントは、葉っぱが尖っているもの、丸いものの違い。あとは植物とのコミュニケーションの量が重要です。
人は、尖っているものを見るとシャキッと身が引き締まる感覚になり、逆に丸いものを見ると癒されたり落ち着いたり。
植物も同じように、集中したい場所にはシャープな上向きの葉を持つものを選ぶこと。リラックスしたい場所には丸く、下向きの葉を持つものを選ぶとよいのだそう。
「集中」と「リラックス」目的別に参考になる選び方を教えてもらいました。
集中したい場所:ワークスペース/デスク周りなど
- シャープな上向きの葉を持つもの
- 葉っぱがワントーン、柄がない
- 乾燥に強く、風通しが悪いところでも育つもの
- 管理に手間がかからない
リラックスしたい場所:リビング
- 丸く、下向きの葉を持つもの
- 水やりしたり、愛でる目的で選ぶ
- インテリアに合うか
- 好きな形・自由に選ぶ
植物とのコミュニケーションの量とは、どれだけ手をかけるかどうか。
ワークスペースには、なるべく手間がかからないグリーンを選ぶのがおすすめです。
仕事や考えごとに集中したいときに目の前の植物の調子が悪かったり、水やりを頻繁にしないといけない状況だったりすると落ち着きませんよね。
逆にリラックスしたい場所では、グリーンに触れることも癒やされるひとつの要素。
リビングは、多少手間がかかっても柔らかい気持ちになり、愛でられるものを選ぶとリラックス効果が高まるはずです。
後編(8月16日公開)では、具体的なグリーンの選び方と、初心者でも育てやすいオススメ観葉植物7選などをご紹介します。
▼後編はこちら
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Source: ヒューマンスペース・グローバル・レポート(PDF)