「あなたは、ここではもちろん、どこに行っても絶対成功しませんよ!」
明らかに、これは上司の口から決して聞きたくない言葉です。実際、こんな言葉は、普通は解雇される時に言われるものです。
この言葉を聞いた時、私は誰かに殴られたようにうずくまりました。そしてもちろん、とても恥ずかしいのですが、その場で号泣してしまったのです。
私は、大手のeコマース企業に入社して7年間キャリアを歩んだ後、リーダーのポジションに昇進しました。
人事評価も良く、頼り甲斐があって勤勉で、顧客を第一に考える少し厳しめなリーダーという評判を手に入れました。
さらに自社だけでなく他の会社でも大きな成果をあげ、有名校のMBAも取得。それでも、彼女のこの言葉は私の胸に突き刺さりました。
そんな私が、フォーチュン100社に入る企業で大きなチームのリーダーを務める33歳の立派な大人が、号泣したのです。
上司がそれほどまでに自分に不満を抱えていたことに、私は唖然としました。
上司からの不意打ちなダメ出し
もともと私は、人の心や状況を読んで自分に何が期待されているか理解する能力には自信がありました。
実際に、直属の部下に「超能力者」と呼ばれ、「人の心が読めるんですね。ちょっと怖いです」と言われたことも。
私の耳の中で上司の言葉が鳴り響きました。私はどうやってここまで来たんだろう。どうしてこうなったんだろう。
6カ月前、私は別のチームからこのポジションに異動しました。
新しいポジションに就くと、責任を持つ範囲が広くなり、新しく馴染みのない部署や複数のチームを統括することになりました。役割をまっとうするために必要な強みは、その頃の私にはまだありませんでした。
それに当時、私は仕事を最優先にしていませんでした。家には3人の幼い子ども(双子の乳児と幼児)がいたので、私は育児に疲れ果て、仕事にうまく集中できず、苦労していました。
上司自身、そんな私に頭を悩ませているように見えました。しかし、あの言葉を投げつけられるまで、私はまだ何とかやれていると思っていたのです。
会社を辞めようと思った。でも辞めなかった
上司に例の言葉を言われ、「辞める」という考えが頭をよぎりました。そうすれば、すぐにこの状況から永遠に解放されます。
自分から辞めることにすれば、メンツを保てますし、解雇されることはありません。
それに、自省することも避けられます。自省しないと事態を好転させられないので、上司に対する復讐にもなります。
私は怒っていました。上司が私の仕事のパフォーマンスに満足していないにしても、私が辞めたら彼女は痛手を負うでしょう。
しかし、私は辞めませんでした。解雇もされませんでした。チームを統率して昇進しました。
それからさらに3年そのポジションにいて、自分のキャリアの中で最高の3年間を過ごしました。 何よりも重要なことは、私が職業的にも個人的にも成長し、大いに楽しんだことです。
そのポジションに留まる方が退職するより大変でした。しかし私には、その方がやりがいのある選択でした。
その過程で、辞めたいと思っても(仕事という)試合を続ける方法について学んだことがいくつかあります。
1. ネガティブなフィードバックは個人攻撃ではない
私はこの言葉を数え切れないほど耳にしたことがあり、社員を率いるマネージャーとして、厳しいフィードバックを出したり、社員を解雇したりすることには長けていました。
ところが、いざその厳しいフィードバックが自分に向けられると、人間としての価値を測られているように感じてしまいます。
しかし実際はそうではありません。自分の価値は他人には決められないのです。
また、フィードバックを出す人自身にも課題や不安な気持ちがあり、それがフィードバックの内容に影響しています。
たとえば私が置かれていた状況では、その上司も新しい仕事の範囲に慣れておらず、結果を出さなければいけないという、彼女の新しい上司からの強いプレッシャーにさらされていました。
ですから、上司の不満は、こうした要因によっても生じていたのです。
2. 自分の強みとチャンスがありそうな分野を把握する
成功した人たちは、自分のポジションに必要な強みを自分が備えているかどうか、よく吟味しています。
自分に合ったポジションとは、自分が持つ強みのトップ3のうち、少なくとも2つが求められるポジションです。
成功するために最も重要な強みを身につけるのに苦労しそうであれば、他の方法をとり、次に進みましょう。
たとえば、私の場合、技術的な専門知識が不可欠でしたが、ポジションを任された時点で私はまだ持っていませんでした。
特に、同じ会社の中で異動する場合、新しい上司は、既に周りからの評判が良い人のことを好意的にとらえる傾向にあります。
このことは必ずしも成功につながるわけではないので、自分でしっかり勉強しましょう。
3. 周囲に良いメンターを置き、助けを求める
良いメンターとは、あなたと楽しくランチする人のことでなく、過去にあなたを公平な目線で批判したことがある人です。
たとえば、私が、その週に急なランチをメンターにお願いしてこの出来事を話すと、彼は「ええ、そのポジションに就いてからのあなたの仕事ぶりには、私も感心していませんでした。改善できるとしたら、次のような点です」と言いました。
耳が痛かったものの、彼のコメントのおかげで、私が必ずしも間違ったことをしていたわけではないことがわかりました。私には改善の余地があったのです。
しかし、メンターは時に擁護者である必要もあります。別のメンターが、私の強みがはるかに良く生かされそうな新しいポジションを見つけるのを手伝ってくれました。
4. 失敗から前進する
自分が置かれた状況をよく考えてみましょう。どのような自己認識が必要でしょうか? どんなことならもっとうまくできたでしょうか? 学べることは何でしょうか? そして、学んだら、次に進みましょう。
こんな出来事があると、それにより自分の人間性が決めつけられたように感じ、自信を打ち砕かれそうになります。いつまでも嫌な気分にとらわれて、もがいていたかもしれません。
ただし、自省には時間制限を設けてください。答えを知りたくない質問は自問しないで結構です。
キャリアには良い時期もあればそうでない時期もあることを知り、それぞれの時期から学んで、改善を重ねましょう。
5. 上司と信頼関係を築く努力をする
成功も失敗も、多くの場合、たった1人の悪い上司や仕事の人間関係に左右されます。
もっと優秀な上司がいたら、私はこのポジションで最も優秀な社員となることはできなかったかもしれません。フィードバックにも驚かなかったことでしょう。
信頼を築き、上司と社員が相互に有益な関係を築くには、プロ意識が不可欠です。
どちらかの当事者が不満を感じる前に、フィードバックを双方から自由に出せるようになりたいもの。そのためには、信頼と連携を築くように努力しましょう。
物事がうまく行かなくなってくると、辞めたくなります。時には、辞めることが唯一の選択となることがあるかもしれません。
しかし、大変な仕事をするポジションにいると、多くの場合、その裏側では個人的にも職業的にもより大きく成長できます。
最後に、詩人のEdgar A. Guestの詩の有名な一節をご紹介します。
やめないで
(中略)
成功は失敗の裏返し
必要なら休みなさい。でも、やめないで
Originally published by Fast Company [原文]
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