「個人の境界線(他者との境界線)」というのは、主観的なものだと考えられがちです。

しかし、それは狭義には事実ですが、自分の境界線を意義深く調べることで、自分の生活や人生においてもっと効果的に境界線を取り入れる方法がわかるようになります

境界線が損なわれている時は特にそうです。

個人の境界線とは何か

カリフォルニア大学バークレー校の保健サービスによると、個人の境界線とは、「人間関係における自分自身の限界やルールのこと」です。

この分かりやすい定義は、個人の境界線の細部やさまざまなタイプの性格に踏み込むと、さらに細かく変わってきます。

カリフォルニア大学バークレー校は、境界線は、個々の性格によって厳密であったり、曖昧であったり、健全であったりなどの特徴を持つと説明しています。

個人の境界線が厳密な人

親しい関係の人が少ない確率が高いです。たとえ恋愛関係にある人でも、ほとんどの人を安全な距離に置く傾向にあります。

個人の境界線が曖昧な人

人を喜ばせたくてたまらない、もしくは他者の満足のために自分が居心地が悪くても我慢するように見えます

「相手に従わなかったら、拒絶されるのではないか」と恐れており、断るのが苦手です。

個人の境界線が健全な人

自分の好みや優先事項を理解し、それを犠牲にしないことが多いです

自分の情報を与え過ぎたり、他者の要求に応じて自分の尊厳を損なったりすることはしません。

これらが個人の境界線ですが、日常生活でどのような時に個人の境界線を引くべきかを判断するための考え方はもっとあります。

個人の境界線の5つのタイプ

私たちは生活するなかで、個人の境界線を行動に反映します。心理学者は、さまざまなタイプの個人の境界線を、身体的、感情的、性的、物質的、時間的な境界線に集約しました。

・身体的な境界線

ただバスで隣に誰かが座るにしても、友だちと悪ふざけするにしても、他者と身体的に接触することをいとうか否かというものです。

例えばハグが苦手な人は、境界線を設定するなら早いに越したことはないので、「私はハグが苦手なんです」と自信を持って相手に伝え、握手を求めましょう。

・感情的な境界線

本音や心の奥底の感情を他者とどこまで共有するかというものです。また、特定の人間関係に対して費やせる感情的なエネルギーや労力も含まれます。

例えば、「今はこの件について話し合う余裕が本当にないから、また別の時に話しましょう」と言うことも、感情的な境界線を引くことになります。

・性的な境界線

性的な接触に対する同意や心地よさについてです。望まない性的な接触に限らず、長年連れ添ったパートナーとの関係にも適用します

特に早い段階で、「私はそういうのは好きじゃない」、「私はそういうことはしない」と自信を持って伝えれば、それは明確なメッセージとなります。

・時間的な境界線

自分の時間をどのように使いたいか、知り合いの誕生日パーティーに出席するというようなさまざまな労力に対して、自分の時間をどれだけ割くかというようなことです

「2〜3時間だけなら顔は出せると思う」のように言うことで、時間的な境界線を効果的に伝えることができます。

・物質的な境界線

認知行動療法心理学協会によると「何を、誰と共有するかの制限を設けること」です。自分の所有物を丁重に扱わない恐れがある家族には車を貸さない、というようなことです。

相手との関係性によって、自分が物を貸さない理由を説明するかどうかは決めていいですが、くれぐれも言い合いにならないよう気をつけましょう。

個人の境界線の使い方

Psychology Today」で心理療法士のF. Diane Barthが説明しているように、境界線というのは自分自身について知り、好みや優先することを効果的に表明することです。

境界線は、人を追い払ったり、相手をコントロールしようとするものではありません。自分のスペース、信条、自尊心など、自分にとって価値のあることを明確にするものです

そのような価値を明確にし、伝えることで、自分自身の気分が良くなるだけでなく、驚くべきことに、他人との人間関係も改善されることもあります

自分の境界線を効果的に相手に伝えることができれば、自立心や自意識だけでなく、対人関係も改善することがわかるでしょう。

Source: Psychology Today, uhs.berkeley.edu, CBT Psychological Associates