ビジネスパーソンであれば、誰もが日常的に行なっている「メモ」。ここ数年で「バレットジャーナル」というノート術が世界的にブームになるなど、国内外で「メモの力」に注目が集まっています。
この『深化するメモ術』特集では、「考える力」や「思考力」がビジネスパーソンの必須スキルとされる中、その大きな助けとなる「メモ」の効力やその活用法について紹介していきます。
第3回は「ミーニング・ノート」の開発者・山田智恵さんが登場。日々の出来事に価値や可能性を見出して書き出すメモ術を紹介した前編に続き、後編では書き出したメモを生かしてチャンスへと変えるテクニックについて解説します。
▼前編はこちら
山田智恵(やまだ・ともえ)

チャンスをつかむメソッド「ミーニング・ノート」開発者。同メソッドにより「一家全員無職」の状態から、外資系スタートアップ企業の社外取締役として参画するなど人生の好転を数多く経験。現在はセミナーや講演、著書『ミーニング・ノート 1日3つ、チャンスを書くと進む道が見えてくる』(金風舎)などでミーニング・ノートの理論とメソッドを紹介し、多くの人の自己実現をサポート。
書き出すだけでは道半ば。カギは「振り返り」
前編で紹介したとおり、ミーニング・ノートは
- 1日3つ、チャンスをノートに書き出す
- ノートに書いたチャンスを見返す
という2つの手順を踏みます。
はじめはチャンス(出来事)を見つけて書き出すことばかりに必死になってしまいがちですが、実は重要視したいのは「振り返り」のほうだと山田さん。
見返すために書き出すと言ってもいいぐらい、振り返りがミーニング・ノートの真骨頂。
書きっぱなしにせず、チャンスを振り返ることで自分の「成功パターン」を知るデータベースとしてノートを活用することが可能になります。
振り返りの方法
振り返りのやり方は慣れてしまえば簡単です。
毎日チャンスを3つ書き出すので、1週間分では21個。
その中から、特に自分の心が動いたものを3つ選んで印をつけます。3つに絞ることで、「自分がその時何に意識を向けているか」の優先順位も見えてくるからです。
もう1つの作業は、21個のチャンスにつながりが生まれていないかを探し、見つけたら線(矢印)で結ぶこと。
たとえば「いつも使うプレゼン資料を見直してわかりやすく整えた」という出来事の数日後に「取引先がプレゼン資料を気に入ってくれて受注できた」ということがあったとしたら、このつながりのある2つのチャンスを線で結びます。
この時、因果関係が明らかなものだけではなく、
「同僚の活躍をうらやましく思った」
→「自分の仕事に無駄がないか、タスクを整理してみた」
といった他人からは見えない自分の心の中で起きたつながりや、
「お年寄りに席を譲った」
→「探しても見つからなかったハンカチが出てきた」
といった自分なりの一風変わった不思議なつながりでもOK。

こうした手順を踏んでチャンスを見返し、その先につながった価値を意識することで、「大したことない」と見過ごしていた物事が、思いもよらない成功へとつながっていくことに気づき、アイデアやひらめきも得やすくなるのだそう。
さらに、「このチャンスは温めておいたほうがいい」「以前こうした流れでうまくいったことがあった」と、自分の成功パターンを見つけることが可能になるため、その再現性を高め、その時取るべき行動が自ずと決まると山田さんは強調します。
「チャンスの目利き力」は挑戦を後押しする糧に
ただ単に書き出すだけでは、出来事がどのように今後のチャンスにつながっていくかはわかりません。
しかし、点ではなく線で物事を見るようにすることで、「チャンスの目利き力」が上がると山田さん。
「チャンスの目利き力」とは、いずれ大きなチャンスにつながるような小さなチャンスを見逃さない、いわば“選球眼”のこと。
振り返りを続けていると、書き出したチャンスの「先」を意識して行動できるようになります。
つながった先の価値を見返して分析することで、新たなチャンスを見つけるアンテナは高くなり、チャンスをつかむスピードも上がるでしょう。
目利き力が養われればチャンスを次々と見つけられるようになるので、挑戦することが怖くなくなるというのもミーニング・ノートの醍醐味の1つ。
ミーニング・ノートでは、自分の心が動いたことをチャンスと捉えますが、それはすごく怖いことでもあります。
なぜなら、周囲と同じ方向へ進んだり、誰かのアドバイスに従ったりしたほうが楽だし安心だから。自分の心に従うことは大きな挑戦でもあります。
それを支えてくれるのが意味づけ力であり、チャンスの目利き力なのです。
先につながるチャンスが見えてくること、そして挑戦する勇気が湧くことで、必然的に行動が促されるという好循環が生まれます。
ミーニング・ノートはヒントが詰まった「黄金の書」
ミーニング・ノートの最大のメリットは、毎日起きるたくさんの出来事に価値と可能性を見つける「意味づけ力」の習得。
ないものに理想を求めるのではなく、すでにあるものを活用して人生を豊かにすることができる稀有なメソッドだと言えます。
ミーニング・ノートは、自分のすべてがつまった世界に1つだけのデータベース。これ以上の財産はありません。
忘れていた人とのご縁、感銘を受けた言葉や物事との出会いなどは、忙しさのなかで追いやられ、忘れてしまいがち。
でも、行き詰まった時やさらなる気づきを得たい時に、ノートを見返せば何かしらのヒントが得られるはずです。
チャンスを書き出して、見返す。
これを繰り返していくだけで、自分の持ちうる情報を最大限に活用し、次にとるべきアクションが明確化されるようになる「黄金の書」と言っても過言ではないのではないでしょうか。
さっそく今日からミーニング・ノートを始めようと決めたなら、「ミーニング・ノートに出会った」という出来事に、あなたならどんな意味づけをしますか?
「自分を変えられそうな気がした」「試しに3カ月やってみる」と価値や可能性を感じたら、それは未来のチャンスにきっとつながるはず。試してみる価値は十分にあると言えそうです。
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