あの「【漫画】南の島の脱力幸福論」が再び帰ってくる!
2020年6月から12月までの半年間、ライフハッカー[日本版]で連載していた漫画連載がパワーアップして書籍化。国民の94%が幸せを実感している南国フィジーの「幸せになる習慣」をたくさんの人に届けるために、2021年8月、いろは出版から出版されます。
今回は書籍化を記念して、フィジー在住の著者・永崎裕麻さんにオンライン取材。
コロナ禍でますます幸せについて考えるようになった今、あらためて役立つフィジー流の幸せに生きる秘訣とは何か? お話を聞きました。今回は前編です。
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ロックダウン…そのときフィジー人はイモを植えた

このコロナ禍でフィジーにも大きな変化があったと永崎さん。
「自給自足&物々交換、そしてコミュニティによる助け合い。この2つを軸とした生活にフットワーク軽く切り替わった」と話します。
「第一波のときは1人目の感染者が出た直後にロックダウンになったのですが、みんな『そうだ、キャッサバ植えとこう』という感じで庭にイモを埋めはじめたんです。
Facebook上の物々交換サイト『Barter for Better Fiji(より良いフィジーのための物々交換)』も立ち上がり、自給自足しながら助け合っていこうという流れになった」
コロナ以降、フィジーに残るリスクはあったけれど、「フィジーの新しい顔が見られるかもしれない」という期待から帰国せずそのまま滞在を決めたという永崎さん。
「まさにそうで、“今、ここ”にフォーカスするフィジーの強さを目の当たりにしました。
今年の4月から第二波が始まり、1日300人ペースで感染が広がっているので、また状況が変わりつつあるのですが…。それでも未来を悲観せず、今できることを考えるフィジー人はたくましいというか、サバイバル能力が高いと感じましたね」
スーパーがあっという間に“助け合いのハブ”に
「【漫画】南の島の脱力幸福論」で印象的だったフィジー人は「のんびり、マイペース」というイメージと違って、その迅速な行動力には驚いたと永崎さん。
「僕が運営する学校の隣のスーパーは、1日100斤のパンの無償配布をすぐにはじめました。
さらに市民の声で『寄付棚』ができ、買い物客がお金のない人のために、家に余っている食材や日用品を置いていくようになった。気づけば、あっという間にスーパーが助け合いのハブになっていったんです」
幸せは「所有」して掴むのではなく、「共有」して掴むのがフィジー流。アイデアがあれば「いいね、やってみよう」とすぐに決まるのは、フラットな人間関係や、既存のルールに縛られない自由さも作用しているようです。
コロナ禍で生まれた意外なメリット
永崎さん自身はオンライン会議やイベントが普及したことで「以前よりも日本と繋がれるようになった」と感じているそう。
「フィジーから参加すると主催者もすごく喜んでくれる。
誰でもどこからでも参加できるからこそ、フィジーにいることの価値が上がった気がします。イベントに呼ばれることも増えたし、自分でも『南国ライフスタイルLABO』というコミュニティを立ち上げて、毎月3本くらいイベントをするようになりました」
ライフスタイルが選べる時代になったからこそ、「これからどういうスタイルでいこうか」という迷いが生じていると永崎さん。
ラボでは、永崎さんがフィジーで学んだ幸せの習慣や働き方、お金や環境問題など、さまざまなテーマについて語り合っています。
「共助」のフィジーと「自助」の日本

フィジーはブータンのように「国策で幸せを追求している国」でもなければ、北欧のように「社会福祉が充実していて老後も安心な国」でもありません。それでもフィジーが2016、17年の「世界幸福度調査」で世界一に輝いたのは、「幸せの習慣を持つ人たちの集まり」だからだと永崎さんは話します。
「フィジーの幸せの要素のひとつは、共に助け合う共助社会であること。
今回のコロナ禍では、自己責任を重んじる日本の自助社会の限界や矛盾も感じました」
日本でトイレットペーパーの買い占めが起きたのは、人に貸してといえないから。他人に迷惑をかけないように、必要以上に蓄える。その行動が人に迷惑をかけるという矛盾を生んだと、永崎さんは分析します。
「蓄えは確かに必要ですが、余裕って本当は社会に還元していかないと、格差が広がっていくばかりだと思います。人に頼れないから、未来への不安が大きすぎて、その余裕を社会に還元できない。それは自助社会の弊害です」
誰とでも「光の速さ」で友達になるフィジー人は、人を助け、人に助けられながら「繋がり」という資産を形成していきます。
それはモノやお金という資産を蓄えることよりも、ある意味では合理的であり、有事の際には助けとなるのです。
「脱・成長!」したっていいじゃないか

コロナ禍で様々なストレスを受け、息苦しさ、生きづらさを感じることも増えた昨今。フィジー流の「脱力幸福論」を日本で実践するとしたら、どこからはじめるとよいのでしょうか。
「最近いいなと思っているキーワードは『脱・成長』。自助社会である日本では、自分で自分を助けないといけない。だから成長がマストになっていて、無理も多いし、いつも時間が足りません。
でも、もしも“成長しなくてもいい”となったら、生活に余裕が生まれますよね。それで時間ができたら、自然といろいろなことがしたくなる。その結果“成長していた”という循環の方が、じつは健康的なんじゃないかなと」
何かをするために時間を節約するのではなく、思い切って先に時間をつくる。そんな発想の転換を邪魔しているのは、「成長しなければ幸せになれない」という固定観念なのかもしれません。
永崎裕麻さんに聞く、フィジー流「脱力幸福論」。後編ではライフハッカー[日本版]連載時のハラハラ・ドキドキの思い出や、面白い取り組みも加わった書籍版の見どころを伺っていきます。
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永崎 裕麻(ながさき・ゆうま)

移住先を探す「世界一周」の旅を終え、世界でいちばん幸せな国フィジーに移住し、15年目。ライフスタイルをアップデートする英語学校カラーズの校長。フィジー・デンマーク・日本を行き来する「世界3拠点生活(トリプルライフ)」に挑戦(現在はコロナ禍でフィジーに滞在中)。著書に「世界でいちばん幸せな国フィジーの世界でいちばん非常識な幸福論」「まんが南の島フィジーの脱力幸福論」(いろは出版)。
Source: まんが南の島フィジーの脱力幸福論