ビジネスパーソンであれば、誰もが日常的に行っている「メモ」。ここ数年で「バレットジャーナル」というノート術が世界的にブームになるなど、国内外で「メモの力」に注目が集まっています。

この「深化するメモ」特集では、「考える力」や「思考力」がビジネスパーソンの必須スキルとされる中、その大きな助けとなる「メモ」の効力やその活用法について紹介していきます。

第1回は、手帳評論家の舘神龍彦さんが登場。後編となる今回は、舘神さん自身のメモ活用法について具体的に聞いていきます。

▼前編はこちら

「駆け出す前に書き出せ」 思考を深める“メモ”の力と可能性

「駆け出す前に書き出せ」 思考を深める“メモ”の力と可能性

舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

profile

デジアナリスト・手帳評論家。主な著書に『凄いiPhone手帳術』(えい出版社)、『意外と誰も教えてくれなかった手帳の基本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『手帳と日本人』(NHK出版新書)など。「マツコの知らない世界」(TBSテレビ)「HelloWorld」(J-WAVE)はじめテレビ・ラジオ出演多数。ISOT2021文具PR委員。文具の製品開発、講演等を行っている。Yahoo! Japan クリエイターズプログラムで文具・手帳の動画を発信中。twitter:@tategamit

前編では、今世界的に注目が集まる「メモの力」、そしてデジタルメモとアナログメモのそれぞれのメリットや特徴、使い分けることの大切さについて聞きました。

手帳評論家である舘神さん自身は、メモを具体的にどう活用しているのでしょうか?

舘神さんのメモ術は、大きく以下の4つに分かれます。

B6サイズの横罫ノート…主に個別プロジェクトの管理に使用

小型のメモ帳…アイデアや気づきなどをすぐに書き記す一時記録として使用

手帳(B6サイズ)…グーグルカレンダーと併用してのスケジュール管理がメイン

二つ折りのリングノート『コンパックノートB5』(キングジム)…図解をするときや構想を考える時に使用

舘神さんのメモ活用法は、アナログとデジタルのハイブリッド型。アイデアや思考を整理するときはメモなどにすぐに記録します。

そして、それをあらためてまとめる際、なんらかのアウトプットにつながりそうなら各種ファイルとして作成する、ということです。

スケジュールはGoogleカレンダーにまず入力して、手帳に転記

舘神さんは、Googleカレンダーと手帳を併用して予定管理しています。予定が入ったらまずGoogleカレンダーに入力し、その後手帳に転記しながら詳細も記入。

スケジュールの変更があった場合も、同様の手順だそうです。

Googleカレンダーの場合、「何時から何時までこの作業をやる」といったことしか(カレンダー画面では)入力できませんが、手帳なら、その作業の目的、具体的な数値目標まで自由に記入できます。

もちろん個別スケジュールをクリックすればGoogleカレンダーにも詳細を記入できますし、見ることは可能です。しかし「一覧性」「アクセスのよさ」では手帳のほうが早いですし、優れているので、多少面倒でも両方に記載することにしています。

予定を確認しながらそのメモを一覧することで、作業の質が大きく変わるのを実感しています。進捗についてはプロジェクト用のノートに記入。それを参照しつつ、手帳に書き込んでいます。

作業ごとにデジタルとアナログの役割を振り分ける

以下のように、舘神さんは業務内容と目的に合わせて、デジタルとアナログを使い分けています。

「原稿」はデジタル

連載原稿や本の執筆など、始めからデジタルで書いたほうが確実に早いと分かっているものはテキストエディタを使っています。

●「仕事のアイデア」は小型のメモ帳

仕事のアイデアは常に携帯している小型のメモ帳に書き込んでいます。このメモの立ち位置はあくまで一時記録用。メモが企画として形になりそうなら、その情報に肉付けして、WordやPowerpointのファイルを作成します。

最初からデジタルにしないのは、企画になるかどうか分からない走り書きまでなんでもデジタル化すると、後で検索する時などにノイズとして引っかかってしまうからです。

なんでも保存できるのはデジタルのメリットですが、無駄な情報が多すぎると「検索性の高さ」というメリットが生かしきれないというわけです。

●「パワーポイントの下書きや動画の絵コンテ」は『コンパックノート』

舘神さんは、動画を作成するにあたってどんなコマ割にするか、そのコマで何を説明するのかといった構成を考えるときに、大きめの『コンパックノート』を使っているのだとか。

あまり大きなサイズを持ち歩きたくないため、2つ折りにできるものを愛用しているそうです。またルーズリーフなので、ページごとに取り外しやすいこともメリット。

動画の撮影中も赤ペンで都度チェックを入れていくので、PC画面とメモはそれぞれ独立しているほうが使い勝手がいい。

パワーポイントで資料を作るときの要素やレイアウトを考えるのにも、フリーハンドで簡単にアイデアを形にできるノートとペンが便利です。

下書きなしで要素を考えながら操作を同時に行うのは、パワポに相当習熟していないと難しい。パワポの下書きはまず紙で行なったほうが、結果的に効率がいいと思います。

また細かくメモをとる習慣がつくと、役割を割り振ろうとツールが増える傾向がありますが、ノートやメモ帳を増やしすぎると把握し切れず、ストレスに感じてしまいます。

私の場合はアナログツールは4つに絞っていますが、それ以上増やさないほうがベターだと思っています。

プリントアウトして書き込んでもいい。電子ノートという選択も

このようにアナログメモのメリットは大きいのですが、まっさらな白紙の状態から手書きでメモをとることにこだわり過ぎてしまうと、ときに遠回りになることもあると舘神さんは指摘します。

普段私たちに入ってくる情報の多くはデジタルです。WEBサイトやPowerPointをプリントアウトしたものに、ペンで追記していくほうが効率的な場合もあります。

また、デジタルとアナログのそれぞれの良さを取り入れるという意味では、各社から登場している電子ノートを活用するのも一つの方法です。思いついたアイデアを手書きタッチで書き込め、Wi-Fi経由でPCや他の端末に送ることができます。

私のおすすめは『フリーノ』(キングジム)や『クアデルノ』(富士通)あたり。デジタルでありながらアナログのよさも体感できると思います。

舘神さんおすすめメモアプリ&メモ帳6選

ここからは舘神さんおすすめのメモアプリ、手帳を紹介します。

デジタルツール

iPhoneの「メモ」

iPhoneユーザーなら誰もが使ったことがある標準搭載の「メモ」アプリが意外と多機能。チェックリスト機能はもちろん、紙の書類をカメラでスキャンして貼り付けたり、描画ツールを使えば指でなぞって手書きの図版を作ったりすることもできます。

Bluetoothキーボードと併用することもでき、舘神さんはタスクごとにフォルダ分けすることを推奨しています。

Post-it®

75mm四方の付箋に書いたメモをキレイにスキャンしてアプリ内に取り込むことができます。入り口はアナログ、出力はデジタルという、まさに両方のいいとこ取りができるアプリです。

まとめて撮影して取り込んだ付箋データを、アプリ内でバラバラにして分類することも可能。PowerPointやPDF形式でエクスポートでき、クラウドに上げることもできます。

Google Keep

メモ機能、チェックリスト機能、音声入力、撮影した写真をテキストメモと一緒に記録できる機能あり。iPhone標準のメモと比較するとWindowsPCとの親和性が高く、Google Driveとの同期もできます。

アナログツール(手帳)

G.B.Planner(アートプリントジャパン)

月間ブロックに折りたたみ式のA4サイズのガントチャートがついた手帳。スケジュールと各プロジェクトの進捗がひと目で管理できるので、アナログの一覧性の高さをより生かすことができます。

7231 NOLTY メモリーポケット3 (日本能率協会マネジメントセンター)

月間ブロックページに豊富なメモページが組み合わされている手帳。メモページのノドには、インデックス記入欄があって項目別の情報の記入が簡単です。

罫ページだけでなく、方眼ぺージもあるため、さまざまな書き方が自由にできます。

ほぼ日手帳 day-free(ほぼ日)

月間ブロックの予定記入欄に方眼ページがたっぷりついているので、予定とそれに関係する内容をメモしやすい。「カレンダー付きメモ帳」といった感覚で使用可能です。

メモの目的は「行動を変える」こと

舘神さんは、「メモは行動を変えるためのツール」と語ります。

自分の考えていること、気づき、アイデア、何でも書き出すことで、自分が本来やりたいことや目標に立ち戻ることができます。

Googleカレンダーはスケジュールは管理してくれますが、なぜその作業や予定をやらなくてはいけないのかといった「目的管理」まではしてくれません。

自身の作業や思考をメモを通じて振り返り、本来の目的に立ち戻りながら、どうやったらその目標を達成できるのかを考える。できれば具体的な数字に落とし込んで、メモの横に書き込んでみてください。

そうすることで、意識が変わり、行動も変わります。仕事に対してもより主体的に取り組めるようになり、人生が豊かになると思います。ぜひメモを有効活用してもらいたいですね。

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「駆け出す前に書き出せ」 思考を深める“メモ”の力と可能性

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