あなたは遅刻魔でしょうか。どれほど気をつけていても、日ごろから、時間が経つのをつい忘れてしまうタイプですか。

その原因はもしかしたら、「タイム・ブラインドネス」と呼ばれる状態にあるかもしれません。

けれども、適切な対策を講じれば、時間どおりに行動できるようになります。

1. タイム・ブラインドネスとは?

タイム・ブラインドネスは、単に計画性がないということではありません。

ADHD(注意欠如・多動症)を専門とするペンシルベニア州の精神分析医Ari Tuckman氏によれば、「時間の感覚が曖昧で、うまく把握できない人が存在する」のだそうです。

そういったタイプの人は、時間の経過を正しく理解できずに苦しんでいる可能性があります。

タイム・ブラインドネスの人は、頭のなかにある時計がうまく機能していません。ですから、1つの行為に要する時間を少なく見積もることもあれば、多く見積もることもあります

遅刻することが多い一方で、遅れまいと必死になるあまり、つねに早めに行動する人もいます。いずれにせよ、根本原因は同じなのですが、結果として起こる問題はさまざまです。

「生活するうえでは、時間調節が欠かせません。」そう話すのは、フロリダ州の心理療法士Stephanie Sarkis氏です。

時間調節がうまくできなければ、悲惨な事態を招きかねません。

遅刻が常習化していると、ありとあらゆる面で困った事態が引き起こされ、飛行機に乗り遅れたり、人間関係が壊れたり、仕事をクビになったりします。

他方、時間に遅れまいと過剰なほど早めに行動するタイプの場合は、無駄な時間が増えるのはもちろん、遅刻するのではないかと大きな不安を抱えるというマイナス点もあります。

2. タイム・ブラインドネスはなぜ起こるか

タイム・ブラインドネスは、ADHDの人に多く見られる傾向です。けれども、ADHDの人に限ったものというわけではありません。

Tuckman氏は、「ADHDではなくとも、時間を把握することが一般的に苦手な人もいます」と述べます。

同氏は、人の能力は連続体として見ることができると指摘します。生まれつき時間を見積もるのが得意な人もいれば、とても苦手な人もいますが、ほとんどの人はその中間に位置しているわけです。

状況によってタイム・ブラインドネスになる場合もあります。

たとえば、休暇中でリラックスしているうちに曜日の感覚がなくなってしまうのは、一時的にタイム・ブラインドネスになった一例です。日常に戻れば、タイム・ブラインドネスも解消されます。

タイム・ブラインドネスはまた、ストレスや不安、鬱、睡眠不足、薬物の乱用がきっかけで起こることもあります。

「時間の把握とは認知能力です。認知能力に影響を与える要因は、時間の感覚にも影響を与えます」と、Tuckman氏は説明しています。

3. タイム・ブラインドネスの対処法

決まった時間までにどこかに行く必要がある人に対してアドバイスしたい時、普通はどう言いますか? 「いつもより1時間早く起きなさい!」ですよね。

ただしこのアドバイスは、相手に時間を正確に推し量る能力が備わっていることを前提にしています。

そのようにアドバイスしても、タイム・ブラインドネスの人には効果がありません。何らかの行動に要する時間を正確に推し量ろうといくら努力しても、どうしても間違ってしまうのです。

また、外れる範囲も、パターンが決まっているわけではありません。Sarkis氏は次のように主張します。

見積もった時間は不正確で、短すぎることもあれば、長すぎることもあります。時間の見積もりには一貫性がありません。

「自分は時間の感覚がちょっとずれている」と思っているなら、その原因がADHDのような障害であれ、状況的なものであれ、うまく対処する方法があります。

根本原因を解明する

決まった時間までにどこかに行かなければならない時には、さまざまな手順を完了したり調整したりする必要があります。

そうした手順は、たいていの人なら何も考えずにできるようなことです。

たとえば、必要なものは何かを予測したり、正確に時間を見積もったり、想定外の出来事(渋滞やバスの遅れなど)に備えて計画を立てたりといったことです。

タイム・ブラインドネスが原因でいつも遅刻してしまう人は、そういった手順の一部やそのすべてを、うまく遂行できていない可能性があります。

Tuckman氏は次のように指摘します。

大事なのは、問題が起きている理由を正確に理解することです。そうすれば、介入方法をどう絞り込めばいいのかがわかります。

人によっては、万事が順調に運んだ場合だけを想定して時間を割り出し、ラッシュアワーのような予想外の出来事を考慮しないこともあるでしょう。

家を出るまでに用意すべきことをすべて忘れてしまう人や、カギや財布といった貴重品をしょっちゅう紛失してしまい、外出のたびに大慌てで探さなくてはならない人もいます。

こうしたことが積もり積もっていくのです。Tuckman氏は次のようにアドバイスしています。

一般的な解決策を提案する前に、まずは、うまくいっていないことを見極めてください。

目で見てわかりやすいアナログ時計などを使う

時間を把握するひとつの手段が、いつどこにいてもアナログ時計が目に入るようにしておくことです。壁掛け時計でも、腕時計でもかまいません。

デジタル時計よりもアナログ時計のほうがいいのは、長針と短針が視覚的に時を示しており、「時間がどのくらい経過したのか」「時間がどのくらい残っているのか」がひと目でわかるからです。

たとえば、午後2時に家を出なくてはならない時に、時計が1時30分を指していれば、残り時間が30分であることが目で確認できます。これがデジタル時計となると、ちょっとつかみにくいのです。

「時間の進行が見えるアナログ時計のほうが、デジタル時計よりも時間がはっきりと見て取れます」とTuckman氏は述べます。

一般的には、そういった視覚的な手がかりがあるほうが、時間をもっと具体的に感じられるのです。

他人の力を借りる

時間を約束して面接に行くといった、とても大事な約束や用事がある場合は、リマインドしてくれる相手がいると助かります。

外出の支度に取り掛からなくてはならない時間になったらメッセージを送ってほしいと友だちに頼むなど、簡単なことでかまいません。

「友だちからメッセージが届いたら、必ず読みますよね。人はメッセージを絶対に放置しませんから」とSarkis氏は言います。

あるいは、他の人の力を借りて、大規模プロジェクトを期日までに完了できるよう一緒に計画を立てたり、大事な作業の進捗状況について時々確認の連絡を入れてもらったりするのも一案です。

時間を管理する習慣を身につける

タイム・ブラインドネスの人は往々にして、自分が時間をどう過ごしているのかをうまく把握できません。

本人が思っている以上にソーシャルメディアに時間を費やしていたり、タスクに要する時間を少なく見積もったり、タスクに伴う要素を見落としていたり。そういったことがすべて積み重なっていきます。

そこでTuckman氏は、自分がどのようなことに時間を費やしているのかについて、意識を持ち、意図的な行動を心がけるようアドバイスしています。

「多くの場合、時間の管理は、集中力を管理すること、あるいは誘惑を管理することから始まります」とTuckman氏は説明します。

インターネットの使用を制限できるブロッカーをパソコンにインストールするもよし。特定のタスクに費やす時間を自発的に確認するもよし。

大事なのは、自分がどの行動にどのくらい時間をかけているのかを正確に把握することです。

これは、多忙な生活を送るすべての人に有益なことですが、日常のタスクをうまくこなせないタイム・ブラインドネスの人ならなおさら、そうしたことが重要となってきます。

生まれつきのタイム・ブラインドネスを簡単に解決できる方法はありません。

必要なのは、欠けているところを埋め合わせる対処法です。ADHDに起因するタイム・ブラインドネスなら、投薬治療で大きな効果を得られることがあります。

というのも、ドーパミンやノルエピネフリン(別名ノルアドレナリン)といった神経伝達物質の分泌不足が原因にあるかもしれないからです。

Sarkis氏は次のように言っています。

そうしたタイム・ブラインドネスは、神経生物学的な疾患です。インスリンの分泌量が足りないからといって、糖尿病の人を非難したりしませんよね。タイム・ブラインドネスもそれと同じなのです。