自分の意見や思いを人に伝えるのは、なかなか難しいもの。部下に思いを伝えたり、指示を出さなければならないリーダーは、とくにそう感じる機会が多いのではないでしょうか?
『人を動かしたければ1分以内で伝えろ!』(沖本るり子 著、知的生きかた文庫/三笠書房)の著者も、リーダーになりたてのころにはそうした悩みを抱えていたようです。
そこから抜け出せたのは、「自分が『聞いてくれない』とイライラするばかりで、聞いてもらえるように話す工夫や努力をしていなかった」ということに気づいたからだそう。
たしかにそれは、リーダーにとっての重要なポイントだといえるでしょう。
「話し手の思い」は、話し手が思っている以上に、聞き手には届かないものです。 とくに「長い話」は、ただ「長い」というだけで相手の耳に届かない可能性があります。
話を聞く側が人の話を集中して聞けるのは、1分が限界です。
「1分以内に、何をどう伝えるか」が勝負です。
「相手にわかるように」とだらだら長く話をすればするほど、かえって相手の聞く気を削いでしまうのです。(「はじめに」より)
「そんなことはわかっている」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ところが頭ではわかっていたとしても、実践が難しいのが「話し方」だということ。そこで本書では、ビジネスの現場での伝え方や話し方をまとめているわけです。
きょうはCHAPTER 1「部下に声を掛ける やる気を引き出し、チーム力を高める!」のなかから、基本的な2つの考え方を抜き出してみたいと思います。
求められるまで、アドバイスはしない
とかく伝えることにばかり意識が向いてしまいがちですが、リーダーにとっては、部下を見守ることも重要な役割のひとつ。
見守っていると仕事と進め方が気になったりして、つい口出ししたくなることもあるでしょう。しかし、お節介は禁物。あえてグッとこらえ、部下からアドバイスを求められるのを待つことも重要だということです。
リーダーのことを慕っていたり、「このリーダーは頼りがいがあるなぁ」と思っていたとしたら、部下は自然にアドバイスを求めてくるもの。
逆にいえば、それがないうちは、リーダー側がどんなアドバイスをしても聞く耳を持ってもらえないわけです。
ましてや「アドバイス」は、往々にして「自慢話」や「成功体験談」にすり替わってしまいがち。しかもそれは、「長話」になってしまうものでもあります。
部下にとってそれは、聞くに堪えない話。せっかくの親切も時間の無駄になってしまい、「お節介が多く、話が長いリーダー」といった悪い印象を持たれてしまう可能性があるのです。
気になったときは、「なにかあればいつでも相談に乗るよ」と、一声かけるだけで充分。なぜなら「聞く耳を持たない」状態の部下にとっては、長々と説教をされるのも、自慢話を聞かされるのも、アドバイスをされるのも、すべて同じようなものだから。
リーダーは心配してアドバイスしたつもりでも、相手にはうまく伝わっていないということです。(18ページより)
あいさつは自分からする
「あいさつは目下からするもので、こちらからすると負けた感じがする」と考えているリーダーもいるかもしれませんが、著者はそこに疑問を投げかけています。
たとえば私たちは、赤ちゃんや子どもに対しては「大人」という目上の立場からあいさつをするはず。
にもかかわらず、大人になるといつの間にか「目下のものからあいさつをするべき」というルールに縛られてしまいがちだというのです。
リーダーには「部下の育成」という大切な役割があります。
自ら先にあいさつをして、「あいさつのできる部下と職場を育てていく」という気持ちに切り替え、リーダーがあいさつのお手本を見せましょう。(37ページより)
あいさつを浸透させるうえで効果的なのは、ひとりひとりの名前を呼ぶこと。
大勢に向かって「おはよう」と声をかけても、部下が「自分はみんなのなかのひとりだ」と思っていたとしたら、それは「誰かがあいさつするだろう」という考えにつながるため、結果的には誰もあいさつをしないという状況になりがち。
しかし「○○さん、おはよう」と名前を呼べば、部下は「自分にあいさつをしているのだ」と受け止めることができるわけです。
とくに効果的なのは、気づかないふりをして目を合わせてくれない場合。「○○さん」と名前を呼ぶことで、振り向かせられるのです。
ちなみに相手がひとりでいるときでも、必ず名前を呼ぶことが大切。そう主張する著者は、できるリーダーはその際にもうひとことをつけ加えるものだとも指摘しています。
「○○さん、おはよう! スーツ、新調したの?」
「○○さん、おはよう! 風邪がはやっているけど、お子さん大丈夫?」
これらは、「朝のあいさつ」であると同時に、「あなたに無関心ではありませんよ」というメッセージでもあります。
また、相手の反応を見ることで、「いつもと違うな」とか、部下の状況を知る手段としても使えます。(38ページより)
たしかにこういう“ちょっとした声かけ”が、職場のムードを明るいものにするのかもしれません。(36ページより)
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テレワークが増えた状況下、部下とのコミュニケーションに難しさを感じている方も多いはず。
ただしオフラインでもオンラインでも、「話は短く簡潔に」という理論は変わらないと著者は主張しています。むしろオンラインだからこそ、“ひとこと”の力が発揮されるといっても過言ではないとも。
だからこそ、本書を利用しながら“簡潔に伝えるスキル”を身につけてみてはいかがでしょうか?
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Source: 三笠書房