「嫌いな上司から、キツいことばを投げかけられてムカムカした」
「自分のミスで周囲に迷惑をかけてしまい、モヤモヤした気分になった」
「同期と比較されて、嫌な気分になった」
このように、“負の感情”を抱いてしまうことは少なくありません。しかも放っておくと、つい何度もそのことを考えてしまったりもするものです。
『働く人のための自己肯定感』(中島 輝 著、朝日文庫)は、そんな悩みを抱える方に最適な一冊。著者は「自己肯定感」の第一人者である心理カウンセラーです。
なにかあったときに落ち込んでパフォーマンスを落としてしまうなら、そこにはその人自身の自己肯定感が大きく関わっているそう。また、「認知」も影響しているようです。
認知とは、ものの見方や捉え方です。現在、自分が置かれているシチュエーションや自分が持っているリソースは、ものの見方や捉え方で、その後の展開も大きく変わります。
そして認知を変えることができれば、行動も変えることができます。つまり、成功しやすい行動を選択することができます。(「はじめに」より)
では、どうすれば認知が変わるのでしょうか?
そこで著者が提案しているのが、自己肯定感を成長させること。自己肯定感を育て、成長させることで、自分の認知は容易に変えることができるというのです。
なぜなら自分の価値観や思い込み、習慣などはすべて自己肯定感によって育まれているから。つまり自己肯定感を成長させて認知を変えるということは、生き方をよい方向にコントロールできるということ。
こうした考え方を念頭においたうえで、CHAPTER 1「仕事のパフォーマンスを底上げする『自尊感情』」に焦点を当ててみましょう。
自己肯定感で仕事のパフォーマンスを上げる方法
自己肯定感は、6つの要素から成り立っているのだそうです。
① 自尊感情(自分には価値があると思える感覚)
② 自己受容感(ありのままの自分を認める感覚)
③ 自己効力感(自分にはできると思える感覚)
④ 自己信頼感(自分を信じられる感覚)
⑤ 自己決定感(自分で決定できるという感覚)
⑥ 自己有用感(自分は何かの役に立っているという感覚)
(22ページより)
1から順に積み重ねていき、6つの感がすべて満たされると自己肯定感は完成するということ。
しかし著者は経験的に、この6つの感がすべて低い人は、普通の生活を行えているビジネスパーソンにはほとんど存在しないと感じているそうです。
すべて低いというよりは、6つのうちのどこかの感が不足しているというケースが多いわけです。
つまり仕事のパフォーマンスを上げたいのであれば、6つの感のうち、自分に不足していると感じる部分を補い、自己肯定感を向上させることが重要。
どの部分が不足しているかは、もちろん個々人によって異なるでしょう。しかし著者は、大きく分けて2つのパターンがあると考えているのだといいます。
第一のパターンは、責任感が非常に強く、自ら積極的に行動しているにもかかわらず、まわりに流されて結果に結びつかないタイプ。自分で自分の人生をコントロールすることができず、心が疲弊している人だともいえるそうです。
そして30代から40代の働き盛りの人に多いのが、1〜3の感に相当する自己肯定感の木の根っこや幹の部分がとても低いタイプ。
木の根幹の部分が正しく育まれていないのであれば、その上になにを積んだとしても充分にパフォーマンスを上げられなくて当然です。
そこで著者は、まず1〜3の感を重点的にトレーニングするべきだと主張しています。なぜなら1〜3の感覚が身についてくると、気持ちに余裕が出て、段々と楽になってくるから。
社会に出てそれなりの経験を積んでいるのであれば、ある程度の自己信頼感や自己決定感、自己有用感はあると感じているはず。その小さな感覚を、トレーニングでさらに伸ばしていくことがポイントになるわけです。
第二のパターンは、20代の若手社員や、アルバイトやフリーターを長期間続けてきた人など。このタイプの人は、4〜6の枝葉の部分の感が低い場合が多いそうです。
自己肯定感のなかの自己決定感や自己有用感は、実際に社会に出て働いたり、社会生活を続けていくなかで得られることも大きいもの。
しかし社会経験が少ない人の場合、自分で決定できる感覚や、「自分はなにかの役に立っている」という感覚は、最初はあまり感じられないかもしれないわけです。
そういうときには、4〜6のトレーニングを重点的に行い、1〜3の感覚をもう一度、自分のなかでトレーニングするべき。そうすれば、大きな効果が望めるはずだと著者は記しています。(22ページより)
自己肯定感が下がる2つの要因
大人になってから自己肯定感が下がりやすくなる理由は2つあり、そのひとつは「経験」が増えること。生きていく以上、成功の経験も失敗の経験も増えていきますが、失敗した経験は強く印象に残ってしまうもの。
嫌悪感や恐れといった本能的な感情を記憶する扁桃体の記憶は書き換えにくく、それが自己肯定感を低くし続けるトリガーになるのです。
そして、もうひとつが「比較」。
私たちは常に誰かとの比較を行う性質があり、経験を積むほど比較の対象は大きくなっていきます。自己肯定感が強ければ、競い合うことができてよい刺激になるはず。
ところが自己肯定感が低いと、他人と自分を比較し続け、マイナスの方向に偏ってしまうわけです。
この2つの要因により、自己肯定感が低くなったときに現れるのが承認欲求。自分で自分を認められないため、心が満たされず、他人からの評価を求めようとしてしまうのです。
誰かから認められたいと思ったら、自己肯定感はかなり低い状態にあると思って間違いはないでしょう。
他人から評価してもらおうと依存的に行動するので、自己肯定感はさらに低くなってしまいます。
過去の経験が強化されてしまったり、マイナスの比較の行動が続いてしまったりして、悪循環に陥ってしまいます。(27ページより)
著者によれば、こうした負の連鎖から抜け出すためには、自己肯定感を高めていく以外にないのだそうです。(25ページより)
*
近年は過度な競争や功利主義の影響で、自己肯定感を成長させることが難しくなっているそう。
しかし、自己肯定感はいつからでも養うことができると著者は断言しています。本書を参考にしながら、人生のパフォーマンスを上げてみてはいかがでしょうか?
>> いまならKindle Unlimitedが3カ月99円、200万冊読み放題!
>> いまだけ3カ月無料! 聞く読書 「Audible」キャンペーン実施中
Source: 朝日文庫