これまでの日本のコミュニケーションといえば、「空気を読む」「いわなくても察する」ことが主流だったかもしれません。
しかし今後は(とくにオンラインにおいては)、自分の思いや考えをしっかりことばにし、相手が受け取りやすく伝えるスキルを身につけることが必要。
『仕事ができる人の話し方』(阿隅和美 著、青春出版社)の著者は、こう主張しています。
数十年にわたるキャスター/アナウンサー経験を軸に、現在は話し方、プレゼンテーション、コミュニケーションの研修やトレーニングを行なっている人物。
これまで1万5000人以上のビジネスパーソンに指導をしてきたそうですが、一時は新型コロナウイルスの影響で、体面の研修や講演のキャンセルおよび延期が相次いだのだとか。
しかしオンラインに切り替えることで仕事を再開でき、全国各地からセミナーに参加してもらえるなど、オンラインならではのメリットも感じることができたと振り返っています。
そこで、これまでの経験から体系化した、うまくいく話し方のセオリーをベースに、「対面でも、オンラインでも両方で活用できる方法」を、できるだけ身近なビジネスシーンに置き換えてお伝えしたのが本書です。(「はじめに」より)
そんな本書の第1章「できる人の『話のきっかけ』のつくり方」のなかから、「初対面の挨拶」に関するポイントを抜き出してみたいと思います。
初対面の挨拶。一度で距離を縮める話の切り出し方
ここで紹介されているのは、客先を初めて訪問したときの話し方。しかも、こちらからお願いしてわざわざ時間をつくっていただいたお客様だとしたら、なかなかコミュニケーションは難しそうです。
まずは、「『初対面の挨拶』がうまくない人の話し方」を見てみましょう。
「はじめまして。今日はお時間を取っていただきありがとうございます。だいぶ、暖かくなってきましたね……」
(18ページより)
超定番ともいえる「天気ネタ」は役に立ちそうですが、相手によっては「そうですね」「暖かいですね」程度の返事で会話が終わってしまう可能性も。
あまり話すのが得意でない相手や、忙しくて時間がない相手であればなおさらです。
一方、会話のきっかけづくりがうまい人は、「相手にとって身近なこと」について質問を投げかけるのだそうです。
対面で『初対面の挨拶』がうまい人の話し方 「高層で眺望がすばらしいオフィスですね!○○さんのお席からもこのロケーションが見えるのですか?」
「こちらのフロア、人が少ないですね。みなさんテレワークですか?」
「この界隈、再開発が進んでいますね」
(19ページより)
すると相手は、こんなふうに返してくる可能性が高いわけです。
(自分「○○さんのお席からもこのロケーションが見えるのですか?」)
相手「いえ、私の席からは資料の山しか見えません」
自分「あはは、そうですか。それにしてもすばらしい眺めで、思わず見入ってしまいました」
(自分「みなさんテレワークですか?」)
相手「ええ、出社率50%以下に制限されています」
自分「そうなのですね。それでは、今日○○さんにこうしてお目にかかれるのは本当に貴重な機会です。お時間をいただき本当にありがとうございます」
(自分「再開発が進んでいますね」)
相手「ええ、馴染みの店がなくなってさみしいところです」
自分「そうですか。改札を出たら風景が変わっていたので驚きました」
(20ページより)
初対面の相手との会話においてなによりも大切なのは、「心の距離を縮める」こと。
そのためにはこちらが一方的に話すのではなく、何度も“会話にキャッチボール”を重ねることが必要なのです。
コミュニケーションの世界では、「30秒で1往復」の会話より、「15秒で3往復」の会話のほうが、早く関係が深まるといわれているそう。
したがって、相手にとって身近なことを“質問ボール”にして投げ、返事が返ってきたらまた“質問ボール”にして投げ返す。これを繰り返すことが重要だということです。(18ページより)
オンラインの場合はどう距離を縮める?
一方、オンラインで「初対面」の場合、最もホットで身近な話題といえばリモートワークのことであるはず。
オンラインで「初対面の挨拶」がうまい人の話し方
「御社でもテレワークですか? 週に何回出社ですか?」
「オンラインは、結構利用されていますか?」
「そのオンライン用の壁紙、御社のロゴマークが入っているんですね」 (22ページより)
リモートワークは新しい働き方であるだけに、盛り上がる会話の「鉄板ネタ」なのです。
いずれにせよオンラインでもリアルの場でも、天気ネタや時事ネタよりも、「相手にとって身近なこと」から話を始めるのがいちばんだということ。(21ページより)
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これからの時代はこれまで以上に、対面とオンラインのどちらでもうまく話せる人がチャンスを手にしていくと著者は推測しています。
そこで本書を参考にしながら、対面とオンラインで話し方を使い分け、職場やクライアントとの良好な関係をつくることを目指したいものです。
Source: 青春出版社