ウェイトリフティングほどシンプルなエクササイズはないでしょう。何かを持ち上げて、下ろすだけなのですから。
とはいっても、ただ持ち上げるだけでいいわけではありません。
きちんとウォームアップをすれば、ハードなトレーニングに向けた準備を整えるのに役立ちます。今回は、ウェイトリフティング前の最適なウォームアップ・ルーチンについて説明します。
なぜウォーミングアップが必要か?
はじめに、ウォーミングアップによって何が変わるのかということについて話しておきましょう。
ウォームアップをすれば魔法のようにケガを防げる、みたいな話をする人がいます。
それは必ずしも真実ではありません。また、ワークアウトの後に筋肉痛になる(もしくはならない)可能性に関しても、ウォームアップは実際のところ、あまり影響を与えません。
あなたがジムに入ってまっすぐスクワットラックに向かうやり方が快適だと感じているのなら、ウォームアップを追加する必要はないかもしれません。
では、なぜウォームアップをする必要があるのでしょうか?
ウェイトリフティングというタスクのための準備と考えるといいでしょう。あなたの筋肉は、温まっている(文字通り温度が高い)ときのほうが、いい働きをしてくれます。
また、リフティングに必要とされるあらゆる動き方に備えておくことができます。
たとえば、足首がかたくなっているなら、足首を動かしておけば、スクワットをするときに筋肉が収縮しやすくなります。
ウォームアップの構成を決めるときには、ウェイトリフティングに向けた準備をするために、何が必要なのかを考えておくことが重要です。いくつかの選択肢と、それが役に立つケースについて説明しましょう。
体を温め、タスクの準備を整える「カーディオ・エクササイズ」
多くの人は、ウェイトリフティングをする前に、トレッドミルやローイングマシンに乗って5~10分ほど運動することを好みます。あるいはジャンピングジャックを何回かする人もいるかもしれません。
こうした運動を「カーディオ・ウォームアップ」と呼びますが、これにはいくつかの利点があります。
- 筋肉が物理的に温まる
- 一部の筋肉と関節を動かせる
- 筋肉に十分な力を供給できるように、エネルギー系を慣れさせられる
ランニングの最初の1キロ(あるいは最初の10分など)を走っているときの、なかなかエンジンがかからない感じを思い出してみてください。
そうなるのは、あなたの体がエネルギー系の調子を上げている最中だからです。体は、その後のワークアウトでもっと効率的にエネルギーを使えるように準備中というわけです。
クロスフィットのWOD(ワークアウト・オブ・ザ・デイ。今日のワークアウト)のように、ウェイトリフティングに短い休憩時間が伴う場合、その後のワークアウトを台無しにしないためには、カーディオ・ウォームアップが欠かせません。
一方、自分のペースでリフティングをするだけなら、カーディオ・ウォームアップは必要不可欠というわけではありません。それでも、体を温めて動かせば気分がよくなり、これからしようとしているワークアウトに、心と体を慣らすことができるでしょう。
動きの準備を整える「モビリティ・エクササイズ」
ここで言っているのは、いわゆるストレッチのことではありません。
静止時間の長い、深いストレッチをして、柔軟性を高めたいのなら、ワークアウトのあとまでとっておいたほうがいいでしょう。一方、ウェイトリフティングの準備のためには、モビリティ・エクササイズが効果的です。
ここで言うところの「モビリティ」とは、ワークアウトで必要とされる形で動けるようになることを意味します。スクワットをする場合、ふくらはぎと足首がかたくなっていると思いのままに深くスクワットすることができません。
その場合、スクワットをする前に少し時間をかけて、足首のモビリティ・エクササイズをするほうがいいでしょう(こちらの記事で、いくつか具体的な提案をしています)。
それと同じ理屈は、あなたがしようとしているあらゆるエクササイズにあてはまります。
ベンチプレスで背中を曲げるのに苦労しているのなら、まずは背中のモビリティ・エクササイズをするといいでしょう(個人的には、フォームローラーの上に仰向けで寝転がることが好きです)。
スナッチやオーバーヘッドスクワットをする場合は、肩のエクササイズをするといいかもしれません。たとえば、頭の上でバーを両手で持ち、腕をまっすぐ伸ばしたまま背中のほうに倒すエクササイズなどがあります。
フロントスクワットでパワークリーンをする場合は、広背筋のストレッチをするといいでしょう。
この段階で使えるのが、フォームローリングとダイナミックストレッチです。
フォームローリングは、ちょっとしたマッサージのように、筋肉を緩めるのに役立ちます。ダイナミックストレッチは、その後のワークアウトでどれくらい動かすつもりにせよ、その可動域で関節を動かすウォームアップです。
「〇〇のためのモビリティエクササイズ」でグーグル検索すれば、エクササイズが山ほど見つかるはずです。
要するに、このウォームアップセクションで動かすのは、それが何であれ、その後のワークアウトに役立ちそうな部分ということです。試行錯誤しながら、いろいろと追加したり省いたりしてみてください。
筋肉の準備を整える「アクティベーション・エクササイズ」
メインのワークアウトで使う筋肉を、軽めのウェイトを使ったり、まったく違う動きをしたりして動かす「アクティベーション・エクササイズ」も、よいウォームアップになります。
たとえば、エクササイズバンドを使ったグルートブリッジは、スクワットやヒップスラストをメインにしたワークアウトの準備を整えるのに役立ちます。
誤解のないように言っておくと、筋肉を「アクティベート」しなくても、後でその筋肉を使うことはできます。
アクティベーション・エクササイズは、単にメインイベントですることを筋肉に前もって知らせるためのもので、メインのリフティングのウォームアップセット(以下を参照)を少しだけ早く終わらせるのに役立ちます。
スキルを磨くのに役立つテクニックドリル
正確なテクニックが求められるリフティングをする場合は、その特定のリフティングに役立つ練習をするといいかもしれません。たとえば私の場合、スナッチをする前に、バーだけを使った練習をするのが好きです。
ハングスナッチやオーバーヘッドスクワット、トールスナッチでもいいでしょう。この場合も、練習する必要のあるテクニックは何かを考えて、この段階で行うエクササイズを決めましょう。
ようやく、ウォームアップセット
ここでようやく、実際にリフティングをします!
たとえば、今日は200ポンドでスクワットをするとしましょう。ウォームアップが終わったからといって、バーに200ポンドのウェイトをつけて、すぐに始めていいかといえば、少し違います。
これまでに紹介してきたウォームアップは、どれも必要不可欠というわけではありません。けれども、たいていのアスリートやコーチは同意してくれるはずですが、直前にするウォームアップセットは必須です。
さらに言えば、これまでに紹介してきたほとんどのステップのかわりにもなります。
というのも、ウォームアップセットを十分に行えば、体を温め、必要な動きをこなし、筋肉をアクティベートして、これからするリフティングのテクニックを練習することができるからです。
まずは、メインのワークアウトセットで予定しているのと同じ回数、もしくはそれ以上の回数から始めましょう。つまり、200ポンドで5回の予定なら、バーだけで5~10回のセットから始めます。
その後で少しウェイトを足し、またもう少し、というように、その日のワークアウトセットの目標ウェイトになるまで足していきます。
ウェイトをどれくらいずつ足していくのか、その正確な幅は、その日のワーキングセットの目標に達するまでに数回の段階を踏んでいる限り、さほど重要ではありません。
200ポンドの例で言えば、まずは95ポンド、次に135、それから155、185、そのあとでようやく200ポンド、という感じでもいいでしょう。そして、私だったら1ステップにつき5回程度にします。
ただし、軽めのウェイトのときは、もう少し多め、たとえば10回にしてもいいかもしれません。
自分なりのウォームアップを組み立てよう
ウェイトリフティングのウォームアップについては、ウォームアップセット(上のセクションで説明したもの)に、ウォームアップセットではカバーしきれない要素を必要に応じて組み合わせる、というふうに考えるといいと思います。
ですから、ウォームアップセットだけで得られる効果に加えて、さらにモビリティ・エクササイズが必要だと感じる場合は、ジムのトレッドミルで5分ほど足を温めて、その後でフォームローリングや足首のストレッチをしてから、スクワットを始めるといいでしょう。
この場合、テクニックドリルやアクティベーション・エクササイズは一切していませんが、あなたが必要だと感じていないのなら、それで問題ありません。
あるいは、サーキットスタイルのワークアウトをする予定で、モビリティには問題ないけれど、リフトのあいだにいつも息切れするのが許せないという人は、カーディオ・ウォームアップに少し力を入れて、ペースの速いワークアウトに向けた準備を整えるといいでしょう。
ワークアウトのたびに違うウォームアップをしても、あるいは時とともにウォームアップを変えていってもかまいません。年配のアスリートが、若いころよりもウォームアップに時間をかける必要があると感じることは珍しくありません。
また、どんな人でも、暑い日よりも寒い日のほうがウォームアップをしっかりする必要があるかもしれません。自分にとって意味のあるものは何かを考え、それに応じて、自分なりのウォームアップを組み立てましょう。
Source: YouTube, BarBend, Catalyst Athletics