新しく始まった特集『「好き」だけ残して、シンプルに生きる』は、ライフハッカー[日本版]の新コンセプト「WORK FAST, LIVE SLOW.」を体現するようなキーパーソンのインタビュー集です。
第6回は株式会社クロスリバーの社長として734社16.3万人の働き方改革の支援事業を行いながら、「週休3日」を実践するコンサルタント・越川慎司さんのインタビュー。『「週休3日」でどれくらい成功するかやってみようと思った』に続いての後編です。
越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表。株式会社キャスター執行役員。元マイクロソフト業務執行役員。国内および外資系通信会社に勤務、ITベンチャーの起業を経て、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践。場所と時間にとらわれず利益を上げていく「稼ぎ方改革」の実行を支援。『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『週休3日でも年収を3倍にした仕事術』(PHP研究所 )など著書15冊。
僕のように「週休3日」での働き方を実現するためには、労働時間を増やすのではなく、時給を高める必要があります。
同じ1時間でも5千円稼ぐのではなく、5万円稼ぐということ。そのためにはクライアントにそれ以上、例えば20万円の価値を生まないと報酬はいただけません。我々も自分の価値を最大化するために、日々研鑽を重ねています。
週休3日のうち1日はインプットにあてる
僕は働き方改革の目指すべき本質的なゴールというのは、学び方改革だと思っています。
弊社のメンバーや、弊社が週休3日制をデザインした企業の方のほとんどは、週休3日のうち1日をインプットにあてています。映画を見たり、本を読んだりするのもインプットです。僕は大学で講義をしていますが、生徒として学びにも行っています。
僕が敬愛するパナソニックの創業者の松下幸之助さんは、週休2日を日本で一番初めに浸透させた方ですが、なぜ2日なのかと問われたときに「教養と休養」が必要とおっしゃったそうです。教養の時間をとらないと、上質なアウトプットをすることができなくなってしまいます。
しかし、今の週休2日では現実的に難しい。この忙しいなかで、心身を休めるために2日は欲しい…となると教養の時間はとれません。
週休3日を実現するのは難しいことかもしれませんが、いきなり会社のルールを変えることはできなくても、働く時間を再配置することはできるのではないでしょうか。
再配置というのは、今やっている仕事のムダを極力削ること。しかも削って終わりではなく、その結果として生み出されたスキマ時間を自分に投資する。
それが学び方改革であれば自己投資になりますし、しっかりと休養や趣味にあてるのであれば、心や体力のチャージになり、健康貯金にもなっていきます。
「内省の時間」を作ることで生産性が高まる
そういった意味では、「いかに時間を絞り出すか」ということがファーストステップとしてはすごく重要です。やはり日々の仕事に追われてしまう方々が多いと思います。
僕もそうでしたが、無駄だと自覚しながら作業していることってほぼないんですよね。しかし、後で振り返ると必要なかったということが多い。
だから時間の生み出し方としては、1週間に15分でも良いので内省の時間、振り返る時間を作ること。
16万人を対象に調査したところ、1週間の労働時間のうち43%を社内会議に費やし、14%を資料作成に充てていることが分かりました。「会議のための会議のための会議」をやってしまったとか、パワーポイントの資料をていねいに作りすぎたとか。そういったことは振り返らないと気づけません。
内省の時間を作るだけでも、かなり生産性が高まることが行動実験で分かっています。週に15分の内省を義務付けたクライアント企業25社では総労働時間が平均8%も減少しました。
働き方や成果の出し方の選択肢をどうやったら自分のものにできるかというと、行動実験しかありません。
まずは行動に移して行動しながら微調整していきます。多くの行動を実践し、そこで得た学びを次の行動に移せば必ず進化していきます。そうすることによって行動の選択肢が増えていき、とっさの時にスムーズに対応できるようになります。
行動実験のポイントは、日々の業務の中に落ちています。
それを意識して探し出して、会社ぐるみではなく個人でも実験してみる。その繰り返しで、結果的に短い時間で成果を出しやすくなると思います。
幸せを感じるのは「自己選択権」を持てるとき
クロスリバーでは大規模な調査を頻繁に行うのですが、以前16万人に働きがいのアンケートをとったところ、1位は報酬ではなく自己選択権でした。
僕自身、仕事でも私生活でも一番幸せを感じるのは自己選択権を持ったときです。そして自己選択権を獲得するために何が必要なのかというと、やはり仕事で成果を残すということなのではないかと思います。
今回の特集のテーマは『「好き」だけ残して、シンプルに生きる』ですが、「好き」というのは、ある意味で「自由」でもあると思います。
自由と責任というのは、特に働く人にとっては表裏一体。責任を果たせば報酬も自由も獲得できます。厳しいけれど資本主義社会が継続するとしたら、成果を残した人が自己選択権を獲得できるということになるのではないでしょうか。
英語で自由はリバティー(Liberty)とフリーダム(Freedom)という2つの表現があります。フリーダムは与えられる自由、リバティーは勝ち取る自由です。
これからはやはり、勝ち取る自由、リバティーを目指していくべきかなと。自由な時間を勝ち取るために、仕事はスマートに終わらせていこう──。
このコロナ禍が終わった暁には、皆がそんなふうに考えるようになっていくのではないかと予想しています。
自分ができること・やりたいことを大きくするほどリバティーが広がる
僕自身が人生を考える上で大切にしているのは「3つの円」です。自分がやりたいこと、自分ができること、人から求められる(やらなければならない)こと。
今はその3つの円が重なったところに、一番の働きがいと生きがいを感じています。世の中から求められることであると同時に、自分にできることであり、自分のやりたいことでもある。仕事ではそこをどうやって設計するかということを常に考えます。
残念ながら人に頼まれることや、やらなければいけないことって、意外とコントロールできないものですよね。その点、自分ができることとやりたいことの円は、自分のコントロールで大きくすることができます。
そして、円が大きくなれば大きくなるほど、3つが重なる可能性が高くなっていく。様々な選択肢を通じて、自分ができること・やりたいことを確実に大きくしていくことで、獲得できるリバティーはどんどん広がっていくのではないでしょうか。
My Favorite

朝に自律神経が乱れると効率が大幅にダウンするため、朝時間の使い方をとても重視しているという越川さん。モーニングルーティンは洗顔後、肌触りの良いタオルで顔を拭くこと。
エジプト綿100%で吸収性があり、なめらかな肌触りの「アビス&ハビデコール」のタオルを愛用しています。カラーも鮮やか!

会社のメンバーとは「HoloLens 2」を使い仮想空間で協働。装着すると左側にオンライン会議中のメンバー、中央にクライアント向けのプレゼンを行うメンバー、右側にアプリ開発中のメンバーが見える……といった仕組み。
これがあればリモートワーク中でも、みんなが自分のまわりで仕事をしているような感覚が得られるとのこと。「こういったハイブリッドな働き方は今後可能性があると思います」(越川さん)

越川さんの「週休3日」を実現した“一番の立役者”は、意外にも千円ほどのキッチンタイマー。このタイマーを使って、1セット45分で仕事を小分けにして作業を進める「ポモドーロテクニック」を習慣化しています。
人間の作業効率がもっとも上がるのは、ズバリ「〆切前」。会議も45分に設定し、40分にタイマーがなるようにすることで、高確率で時間通りに終了できるとのこと。これも〆切効果のひとつです。
▶︎前編はこちら
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