2020年4月27日(火)、オンライン書店「BOOK LAB TOKYO」で開催されたトークイベント「BOOK LAB TALK」。
ライフハッカー[日本版]編集長の遠藤祐子が『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』(SBクリエイティブ)の著者であり、LinkedIn(リンクトイン)日本代表の村上臣さんをお迎えして、現代における転職の価値観や方法について語り合いました。
2021年は「働きがい元年」
遠藤:「転職」はビジネスパーソンにとって常にイシューです。ただ、村上さんの『転職2.0 日本人のキャリアの新・ルール』を読んで感じたのは、この本は裏を返すと才能2.0でもあるし、働き方2.0でもある。転職をいま考えていない人にこそ読んで欲しい本だと感じたのが、このイベントに村上さんをお招きした理由です。
ライフハッカーの読者にアンケートをとったところ、転職のイメージはとてもポジティブ。転職したいと思っている人が6割でした。
意外だったのは転職先に求めるもののトップが給与ではなくて…。
村上:これは面白い、ダブルスコアで「仕事内容」になっている。これがまさに今年の日本のトレンドなんだと思います。僕は勝手に2021年を「働きがい元年」と呼んでいます。「働きがい」をより重視する人が、特に若い人に増えてきているんです。
「働きがい」の要素には、「やりがい(自分の望む仕事をして評価される)」と「働きやすさ(自分のライフスタイルに合っている)」の2つがあると村上さん。
コロナ禍の影響もあり、今後はこの2つが掛け合わさる「働きがいのある仕事」を得ることが、ビジネスパーソンのテーマになっていくのではないかと語ります。

これからは誰もが4回転職する時代
著書のタイトルを『転職2.0』とした理由を聞いてみると…。
村上:僕のなかで1.0は、旧来の日本型雇用。いわゆるメンバーシップ型です。そこにジョブ型雇用というのがここ1~2年でムーブメントになってきた。ソニーのような大企業も全社員がジョブ型に移行すると発表されて、これが2.0になると感じました。
社会では終身雇用、年功序列、企業別労働組合といった日本型雇用の要素を維持できなくなってきているのに、2.0となるジョブ型雇用との違いがわかっている人が少ない──。
日本企業からLinkedInに転職し、両者の違いを実感した今なら、1.0と2.0の違いを書けると思ったと村上さん。
遠藤:転職の際は、どんなことを大事にされたのでしょうか。
村上:よく考えるのは、どうしたら世の中に貢献できるのかということ。それと自分が持っているバリューを出せるかどうか。それが重なると仕事って楽しいんですよ。
これは持論ですが、人生80年働くとすると、企業の平均的な寿命は25年なので、自身が望まなくても4回くらいは転職せざるを得ない。誰しもこれからは、4回は転職する時代なんです。そうすると会社に頼るわけにはいかない。自分のなかで、仕事に対する関係性をどう作るかが重要です。
村上さんいわく、「仕事とは、社会に対して個人が持つ窓」。
仕事を通じて生活の糧を得られるのは、会社が世の中にバリューを提供しているから。
そのバリューを広げる役割の一部を担うことができれば、仕事は楽しく感じられると話します。
自分の「市場価値」を最大化する方法
遠藤:著書のなかでは「2.0時代の転職」の在り方として、我慢しない、学歴は関係ない、楽しさを追求していい、といったことを挙げていましたが、「市場価値を上げる」というキーワードがとても印象的でした。
村上:会社が人を雇うときのことを考えると、その人を雇うことで利益を上げなければいけない。その人が会社のなかでどういうバリューを発揮してくれるのかしか、経営陣は興味がありません。
この目線に、転職したい個人の言葉が合っていないのが問題。終身雇用、年功序列で働き方を会社が考えてくれる日本型の企業では、身につけられない目線だからです。
多くの企業が「もう無理だ」と言い始めている今、個人が意識を変えなくてはいけないと村上さん。
著書で「市場の中で自分はどういう立ち位置なのか」を知る方法に重点を置いたのは、これができないと企業とのマッチングができないからだといいます。
そのために必要なのが、「タグ付け」「情報発信」「ネットワーキング」。
これらを通じて自分の市場価値を最大化し、経営者目線の言葉で伝えることが、新たな転職の鍵を握るのです。

学歴が「市場価値」に影響するのは新卒まで
村上さんによると、「市場価値に関して学歴が大きく影響するのは新卒くらいまで」。
もっと重要なのは、今までの経験と再現性のあるスキル。
そして「その人を採用したときに、会社で生き生きと働く絵が面接官の目に見えるかどうか」──カルチャーフィットといわれる要素もポイントだそう。
遠藤:そういうカルチャーも含めて自分にタグ付けしていくというか、自分の価値観を整理したほうがよさそうですね。
もうひとつ伺いたいのは「我慢しない働き方」について。給与は我慢代という言い方もありますが、我慢はしちゃだめですか?
村上:ここで一番伝えたかったのは、自分にキャリアオーナーシップがあるということ。
ただ我慢するのではなく、勇気を持って現実を直視してほしいのです。自分が何を一番我慢しているのか、どうしたら変えられるのかを考えてみる。そこの解像度を上げていくと、何をすればいいかが見えてくるのではないでしょうか。
その中で転職が手段として役立つならば、もっと気軽に転職を考えてみたら、というのが僕の提案です。そうやってキャリアをつけて、市場の中で認められるようになってくると、自分がやりたい仕事ができるようになります。我慢の数も減っていくはずです。

自分にタグ付けしたいなら「他己紹介」がおすすめ
遠藤:自分の「タグ付け」のやり方について教えてください。
村上:僕のおすすめは、他己紹介。自分をよく知っている人に、誰かに自分を紹介するとき、どう言うかを教えてもらうんです。そうするとすごく気づきがあって、驚きの一言が必ず出てくる。
もしくは自分が強みだと思っていることを全然言ってくれなかったり。他己紹介をしあうのは、客観的な目線を知るいいきっかけになります。
村上:また、タグ(自分の強み)は時代の流れによって変わるもの。タグもリフレッシュして、自分の振り返りとともに一軍になったり二軍になったり、入れ替え戦があるわけです。
「タグの賞味期限」をいつも意識すること。社会の大きな変化は10年ごとに起き、5年ごとに小波がくるという感覚があります。それにあわせてわかりやすいタグをつければ、転職しなくてもセルフブランディングとして役立ちます。
欧米型の雇用に変わりつつある日本を生き抜く方法を、短時間で惜しみなく伝授してくれた村上さん。
コロナ禍で多くの人が自分の働き方を見つめ直している今、村上さんが語る「我慢しない自由な働き方」のインパクトは、ますます大きくなっていくのではないでしょうか。

次回のBOOK LAB TALKは?
次回のBOOK LAB TALKは、5/26(水)19時より、クリエイティブディレクターでマーケターの鹿毛康司さんをお招きして「心」と「売れる」の関係性について伺います。みなさまのご参加、お待ちしております!
あわせて読みたい