故スティーブ・ジョブズの秘書を務めていたNaz Beheshti氏が本を出版しました。そこには、Apple元CEOの興味深いエピソードの数々がつづられています。
その1つによれば、ジョブズはほとんどiPhoneの電源を切ることがなかったのだとか。
いえ、それ自体はさほど不思議ではありません。とりわけ大企業のトップともなれば、常につかまる状態でいなければならないと思うのは自然なことでしょう。
しかしそのような状態は、たくさんのエネルギーを奪います。スマホのバッテリーからも、人の気力からも。
スマホの電源を切る大切さ
この1年を振り返ると、多くの人がかつてないほどにスマホ漬けになっていたのではないでしょうか。
物理的につながることが難しい世界において、私たちのつながりはスマホに頼るしかなかったのです。こんな世の中になるとは、昨年3月に世界がシャットダウンするまでは、誰も予想していなかったことでしょう。
今や、仕事の会議やなかなか会えない友達、家族とのテレビ通話だけでなく、食料品の買い物にまでスマホが活躍しています。
でも、私たちはそんなに常に世間とつながっている必要があるのでしょうか?
実は、スマホの電源を切ることにはとても大切なメリットがあります。
Beheshti氏の本によると、ジョブズはある特定の時間にだけiPhoneの電源を切っていたというのです。
私はすぐに気がつきました。
スティーブ・ジョブズにとって、遊びの時間がどれほど重要かを。そしてそれこそが、彼がイノベーターとして成功した理由の1つであることを。
誰かが彼を探しているとき、あるいは電話がつながらないとき、彼は確実に決まった場所にいました。それは、Appleの元チーフデザインオフィサー、ジョニー・アイブのオフィスです。
遊ぶ時間の確保がクリエイティビティに
アイブ氏のデザインラボは、2人がおよそ20年にわたり象徴的なテック系ガジェットの数々を生み出してきた場所でした。
ジョブズは、アイブ氏のチームがつくったモックアップやプロトタイプを見に行く時だけ、iPhoneの電源を切っていたのです。
みんな躍起になって、スティーブと連絡を取ろうとしたり、会議に出させようとしたものです。
ある時からは、ジョニーのオフィスに電話して、スティーブを遊び時間から連れ戻してくれとヘルプを要請するようになりました。
スティーブにとってジョニーとの時間は、笑ったり、想像したり、創造したり、新しい自由を感じたりするための余裕と機会を与えてくれる時間だったのです。
多くの人が、クリエイティビティは生まれもった才能だと考えています。
ある程度はそうかもしれませんが、実はそれよりも練習が大切です。つまり、クリエイティビティは伸ばすことができるのです。
そのための一番効率的な方法は、遊ぶ時間を確保することなのだと思います。
「今、この瞬間」に集中する
もちろん、「遊ぶ」ために仕事を止めるのは難しいかもしれません。
やることは常にたくさんあって、報告書を書いたりメールに返信したりを続けることが、生産性向上になるのだと自分に言い聞かせているのでしょう。
その結果、ToDoリストを閉じたり、追われている思考を止めたりできなくなっている人が多くいます。その原因の大半は、iPhoneを通じて常に押し寄せてくるコミュニケーションにあります。
それならいっそスマホを切ってしまえば、「今目の前で起きていることより重要なことは何もない」というメッセージを周囲に知らせることができます。
「自分は今この瞬間に集中している」のだと。それ以外のすべては待たせればいいのです。
それは非常に強力なメッセージになります。そしてこれは職場だけの話ではありません。
夕飯時や子どもに本を読んでほしいと頼まれた時、デバイスの電源を切ってみませんか?
ほかのことは忘れて、相手に全意識を注ぐのです。それが、何よりも相手を大切にしているというメッセージになるのです。
つながらないことを意識しよう
スマホを切ることには、もう1つのメリットがあります。
「誰もが100%つかまること」が当たり前の世界においては冒涜的発言かもしれませんが、スマホを切ることは脳に休息の時間を与えることを意味します。そのことには、あなたが思うよりもずっと大きな価値があります。
多くの人が、Slackやメールなど、外部からの刺激への反応に1日の大半を費やしています。その結果、常につながっていなければならないと自分を条件付けしてしまっているのです。
スマホを切ることで、目の前のことに集中できるようになります。また、通知を気にして90秒に1回iPhoneを見る必要はないのだと、脳を再訓練するためのきっかけにもなるでしょう。
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