みんながオフィス勤務だった頃は、退職しそうな人を見つけるのは、それほど難しいことではありませんでした。

よく外に出て電話をかけていたり、臨時休暇を申請したり、よそよそしい態度をとったりしている人がいれば、別の会社の面接を受けているかもしれないと考えることができました。

しかし、全員がリモートワークをしている状況では、こうした兆候を見つけづらくなっています。

ミシガン州立大学人事労務学部のAngela Hall准教授は、次のように述べています。

最も注意を払うべきは、その従業員に離脱行動と呼ばれる行動が見られるかどうかです。

離脱行動には身体的なものと心理的なものの2種類があります。

幸いなことに、社員のレジリエンスを高めるソリューションを提供するmeQuilibrium社の調査によると、大半の社員(60%)は現在の職場を辞めるつもりはないそうです。

「しかし、社員の7%は今にも船から飛び降りようとしています」と、meQuilibrium社の共同創設者でチーフ・ナレッジ・オフィサーのAndrew Shatté氏は話します。

この7%の人たちや、条件の良いオファーがあれば、退職する可能性のある残りの1/3の社員を手放さないためには、辞めそうな社員がとる典型的な5つの行動に注意する必要があります。

1. アブセンティズム(常習的な欠勤)

Shatté氏によると、辞めようとしている社員は、辞めるつもりのない従業員の2倍以上の時間仕事を休んでいるそうです。

また同氏は、次のように述べています。

そうした人たちは勤務中にも、通常の2倍以上のプレゼンティズム(疾病就業:生産性、エンゲージメント、パフォーマンスの低下)が見られます。

感情的になりやすくなる(特に、不安やフラストレーション、気持ちの落ち込みなど)のも、特徴的なサインです。

ポジティブに考えることができなくなり、深刻なうつやストレスを示すさまざまな兆候を見せます。

そうした不安やストレスは、先延ばしや不眠、常に安心を求める、などの行動となって現れます。

アブセンティズムは、身体的な離脱行動の典型であるとHall氏は言っています。

そうした社員は、以前に比べて職場との関わりを減らそうとします

それは、会議に遅れる、会議に出ない、遅く出社する、早く退社する、通常より多く休暇を申請する、などの行動となって現れます。

リモートワークなら、ウェブ会議にログオンしなかったり、早く退出したり、遅く出席したりなどの行動が見られるでしょう。

2. 態度の急変

「心理的な離脱は、仕事へのエンゲージメントが低下するという現れ方をする」とHall氏は言います。

リモートワーカーの場合は、会議中にいつもカメラの電源を切っている、仕事への熱意が見られない、上司や同僚と距離を置いている、生産性が低下している、などの兆候が見られるだろう、と同氏。

また、離脱行動は必ずしもネガティブなものとは限りません。

履歴書作成サービスTopResumeのキャリアエキスパート、Amanda Augustine氏は次のように言います。

いつも文句ばかり言っている人が急に文句を言わなくなったら、すでに退職するプランを練っていて、それまでの時間稼ぎをしているだけかもしれません。

3. メールの返信が遅い

Academy of Managementのメンバーである、パデュー大学のHeejung Byun氏とメリーランド大学のDavid A. Kirsch氏の研究により、返信の早さ・遅さと、退職する可能性の高さ・低さには相関関係があることがわかりました。

返信が遅かったり、返信しないのは、離職が近いことを示すサインです。Kirsch氏は次のように説明しています。

たとえばあなたが、私からの応答がいつもと違うことに気づいたとしましょう。

もしくは、すぐに返信がある時もあれば、1日かそれ以上たっても返信がない時もあるなどの現象が見られたとします。

つまり、私がリズムを崩していて、2人の間でこれまで築いてきた阿吽の呼吸を外しがちになっているとしましょう。

それはおそらく、将来2人が離れ離れになるサインです。もう私の波長が合わなくなっているのかもしれないし、何か別のことに気を取られているのかもしれません。

とはいえKirsch氏は、結論を急ぐべきではないと言っています。

もしかしたら、私の子どもが病気になっているのかもしれません。パンデミックのせいかもしれません。

ですので私たちは、人事管理者が社員のこうした行動に気づいたら、それはその人が不安を抱えていたり、組織との適合性が低下していることを示すサインであり、将来の離職につながる可能性があると考えることをすすめているのです。

4. 深夜にログインしている

オンラインのアクティビティは、社員が辞めようとしていることを示す、最も見落とされがちな指標であると、サイバーセキュリティプロバイダーであるCode42の社長兼CEOのJoe Payne氏は言っています。

辞めようとしていることを示す最も明確なサインは、ファイルの持ち出しです。

そうした人はファイルをDropboxやGmailに入れたり、USBメモリに入れたりします。ほとんどの人が、辞める前にこうした行動をとります。

そして、そうした行動は、通常の勤務時間内には行われないとPayne氏は指摘しています。

そうした人たちは、勤務時間外に情報を持ち出そうとします。皮肉なことに、そのせいで余計目につきやすくなります。

私たちのデータによると、退職しようとしている社員は、勤務時間外にファイルを自分のクラウドやストレージデバイスに転送する傾向があります

そのほうが見つかりにくいと思っているのでしょう。

5. LinkedInでの活動が活発化している

ある社員のこれまでの行動に疑問を感じたら、その人のLinkedInのプロフィールを確認してみてください。

Augustine氏によれば次の通り。

LinkedInでの活動が急に活発になっていたら、求職活動のために自分のブランドを磨いているサインです。

見出しを編集したり、業界を現在の仕事とは異なるものに変更したりしていたら、キャリアチェンジのための準備をしている可能性があります。

雇用主にできることは?

社員がこれらの兆候を示した場合、手遅れであることもあれば、そうでないこともあります。最も重要なのは、社員との関係をメンテナンスすることです。

大切な社員が組織を離れる可能性を減らすために、雇用主が定期的に従業員の状態をチェックすることが不可欠だとHall氏は言います。

社員に、定期的に発展的なフィードバックを与えてください。

社員の業績を認めてあげてください。リモートで働くことの難しさを認めてあげてください。

そして、雇用主として、リモートワーク環境をどう改善できるかについて、社員から定期的に意見を求めてください。

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Source: Academy of Management

Originally published by Fast Company [原文

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