会社には、給与制度というものがあり、新人、メンバー、チーフ、課長など、ポジションごとに会社が求めているものがあります。
会社が求めているもの=「年収基準」は、社員2000名以上の上場企業であっても、社員3名のベンチャー企業であっても、ほとんど変わりません。これらの普遍的なスキルや行動を身につけることが、年収を上げる最も確実な方法です。
給与が上がれば、誰もがモチベーションが上がります。年収を上げる方法がわかれば、もっと頑張ろうと思います。だったら、その仕組みを非公開にする理由はないはずです。(「はじめに」より)
こう主張する『人事の超プロが本音で明かすアフターコロナの年収基準』(西尾 太 著、星雲社)の著者は、人事のプロとして20年以上、400社以上の給与制度や評価制度の仕組みづくりをしてきたという人物。
これからの時代は、会社や世の中に「安定」を求めることはできません。
ビジネスパーソンとしての「安定」は、自分自身に求めるしかないのです。(「はじめに」より)
新型コロナの影響もあって社会が激変した結果、訪れたのは「給与ダウンが当たり前の時代」。これからは、長く会社に勤めていれば給料が上がった時代とは違うわけです。
だからこそ「年収基準」を公開し、一生懸命にがんばっている多くの人たちに役立ててほしいという思いが、著者のなかにはあるということ。
そんな本書の第2章「これからの時代に年収を決める重要なポイントとは何か?」のなかから、「年収別に必要な仕事のスキルを明確に知っておこう」に注目してみたいと思います。
会社が各ポジションに求めていること
日本の企業の大半では、等級制度や職位制度と呼ばれる仕組みが導入されており、給与はそれらによっておおよそ決まっています。
等級・職位とは「補助・育成クラス(新人)」「自己完遂クラス(メンバー)」「チーフ」「課長クラス」「部長クラス」など、社内におけるポジションのこと。
給与水準は職種・規模・地域・企業ステージ(創業期・成長期・成熟期・衰退期)などによって異なるとはいえ、一般的な基準ともなる標準的な金額はあるもの。モデル年収ともいわれるそれを、本書では「年収基準」と呼んでいるわけです。
しかし、自分の年収が高いのか低いのか、よくわかっていない人もいるはず。ほとんどの企業でも、なぜか給与の仕組みを公開していません。
でも、それがわかればモチベーションも上がるはず。そこで本書では、一般的な「年収基準」を公開しているのです。(44ページより)
各ポジションに求められている人材像
著者はまず、「現在の自分のクラスに求められているスキルや行動はなにか、そして今後必要となるのはどんなことか」を確認することを勧めています。各ポジションに求められている人材像を確認してみましょう。
補助・育成クラス
社会人の基本を身につけ、協調性をもってチームの一員として仕事をする。指示を受けながら業務を遂行し、成長のための学習も怠らない。
自己完遂クラス
任された仕事を完遂。相手の気持ちに共感し、安心・安定感を抱かせ信頼を得る。新たな動きに前向きに取り組み、適切な報連相を行うため信頼されている。
チーフクラス
自分の仕事の完遂とチームメンバーの支援、後輩指導を行う。状況を客観的に見つめ、自ら率先して行動。任された仕事の進捗を管理し、やり遂げる。問題の本質を見ることができ、判断とアウトプットの品質が信頼されている。アイデアを簡潔かつ適切に企画にまとめ、提案できる。
プロジェクトリーダー・主任クラス
率いるプロジェクトの目標達成のための進捗を、適切に管理し成果を出す。メンバーの士気を高め、活性化したチームにする。柔軟性が高く、状況判断力で信頼を得ている、多くのアイデアを出し、常に改善を心がけ、実績を上げる。自身の考えを伝えるプレゼンテーション能力にもすぐれ、相手に理解されている。
課長クラス
任された5〜10名のチームの目標設定・計画立案を適切に行い、計数の管理も行いつつ成果を上げる。各メンバーの人材育成に責任を持つ。傾聴力があるため信頼され、部門単位の決断のための有効な解決策を、論拠とともに示せる。一定領域の専門性を持ち、社内で認められている。柔軟な発想力を持ち、変革を実現する。
部長クラス
3年程度の部門の戦略を策定し、経営の承認を得てメンバーに伝達。明確な部門の目標を設定する。優秀な人材を引き上げ、仕事を任せることによって育てる。また人材育成の仕組みをつくり、実績を上げる。重要な決断のための解決策を十分に練って経営に提言。経営からも同僚・部下からも信頼される説得力を持つ。
役員・本部長クラス
組織のビジョンを描いて、そこに至る戦略を策定。経営の承認を得て、組織メンバーに示す。大きな組織を率い、目配りが効く。優秀な人材を見極めることができ、彼らにチャンスを与えて引き上げる。社内外に持つ人脈をビジネスに活用している。適切に決断し、その責任を負う。
社長・上級役員クラス
会社のビジョンを示し、そこに至る戦略を描いて示す。大きな組織を率い、確固とした新年で多くの人々を導く。広い人脈と、社会的な影響力を持つ。重要な決断をタイムリーに行い、全責任を負う。揺るぎない信念で組織を牽引する。
たしかに、これらを確認して自身のポジションを認識できれば、年収を高める方法や成長ステップの指標になることでしょう。(47ページより)
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本書では、一般的な「年収基準」のみならず、自分自身の現在の実力に見合った適正な年収を導き出す「ジョブサイズ28の指標」も公開されています。
こんな時代だからこそ、その指標でセルフチェックをし、自らの「市場価値」を把握しておくべきではないでしょうか?
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Source: 星雲社/アルファポリス