仕事をおもしろく感じ、毎日を楽しく過ごせるとしたら、それはとても理想的。でも、現実問題として難しいことのようにも思えます。いったい、どうやったらそんな状態になれるのでしょうか?
人材開発コンサルタントである『早く結果が欲しいなら、上司の役に立ちなさい』(前山都子 著、白夜書房)の著者は、この問いに対して「自分自身が『主役』として仕事をしているかどうかに尽きます」と断言しています。
ちなみに仕事を通じて若い人たちを見ていて、「焦っている人がとても多く、すぐに成果を出したがる」と感じてもいるのだとか。
「早く結果が欲しい」と思っているのであればこそ、急がば回れ。
まずは、目の前の仕事に一心不乱に打ち込み、「上司の役に立つこと」から始めてください。
「上司のサポート」が、若手社員のもっとも大切な役割です。上司の役に立ち、チームに貢献することで、あなたは、あなたの仕事で「主役」になることができます。
主役とは、自分の頭で考え、主体的に仕事にかかわり、積極的に人の役に立つこと。それがあなたを成長させます。成長すれば、さらに人はあなたを必要としてくれます。(「はじめに」より)
こういう理由があるからこそ、「上司の役に立ってこそ、自分が主役になれる」というわけです。そんな考え方に基づいた本書のなかから、第5章「人間関係をつくる『ヒューマンスキル』」に焦点を当ててみたいと思います。
テクニカルスキルが仕事内容に密接なものである一方、ヒューマンスキルは良好な人間関係をつくる重要な能力だというのです。
コミュニケーションは永遠の課題
ヒューマンスキルは、良好な人間関係をつくるために欠かせない能力。誰もが一生、磨き続けなければならないスキルでもあるといえるでしょう。
その要素は多種多様ですが、著者がまず意識してほしいと思っているヒューマンスキルの用件は以下の5つだそう。
・コミュニケーション力
・ヒアリング力
・交渉力
・マナー
・後輩指導力
(140〜141ページより)
コミュニケーション力は、普段の生活でも仕事においても大切な能力。経団連が毎年発表している『新卒採用に関するアンケート調査結果』でも、「選考時に重視する要素」として「コミュニケーション能力」が16年連続で1位となっているそうです。
しかしそれは新人だけに限らず、中堅社員やリーダー、役職のある人まで、誰もが高めたいと思っている能力でもあるはず。つまりは、人間関係の基本だということなのでしょう。
社内でも社外でも、仕事をしていくなかにおいては、人とうまくコミュニケーションがとれれば成果も上げやすくなるもの。しかし、うまくいかない場合はいろいろなところに影響が出てくることになります。コミュニケーション不足に悩むケースもありますし、高めていくのが難しいスキルでもあるわけです。
なお著者は、コミュニケーション力の根幹にあるのは「相互意志伝達機能」だと考えているといいます。つまりは、2wayコミュニケーションがしっかりできているかどうか。発信した側の論理よりも、「受信した側がきちんと理解できたかどうか」が重要だということ。
心のなかや頭のなかは見えないからこそ、大切なのは、相手と、お互いに考えていることや感じたことを端的に伝え合う、理解し合うこと。
こちらがどれだけがんばって伝えたとしても、相手が理解できていなければ、それは伝えたことにはならないからです。
結論、理由経過を、しっかり言えているかを、つねに確認しながら話をすることが大事です。簡潔に、短いセンテンスで伝えることに気を配ってください。(142ページより)
さらには、伝えるときに意識しておきたいコミュニケーションの要素についても確認しておく必要があるようです。(140ページより)
コミュニケーションの要素とは
コミュニケーションの要素には、「言語」と「非言語」があります。
いうまでもなく、言語とは使うことばや話す内容のことであり、非言語とは聴覚情報(声の大きさやトーンなど)と視覚情報(表情や身ぶり手ぶり)、姿勢などを指すもの。
それらがどうコミュニケーションに影響を及ぼすのかを考えるにあたっては、自分がミスを犯してしまい、怒っているお客様に謝る場面を想像してみるといいそうです。
たとえばこちらが「申し訳ありません」といいながら、へらへら笑っていて頭も下げないとしたら、それは言語と非言語が矛盾した状態。その場合、お客様は非言語情報が正しい情報だと受け取ることになるようです。
つまり、「こいつ口だけで反省していないな!」と判断され、火に油を注ぐことにもなりかねないということ。
やっかいなことに、人はおおよそ頭で考えながら「言語」を発し、無意識に「非言語」を発しているようです。
とすれば、相手に何かを伝えるときには、言語と非言語を整えることを意識する必要がありますね。(143ページより)
管理職研修をしている著者は、若い人たちから「上司のいっていることがわからない」という不満の声を聞くそうです。
一方、上司からも「部下が話をしっかり聞いていない」という意見が出るというので、お互いさまという部分もあるのかもしれません。
つまりコミュニケーション力は、どの世代の人間にとっても永遠の課題ということになるのかもしれません。(142ページより)
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冒頭でも触れたとおり、本書は基本的に「上司のサポート」を役割とする若手社員のために書かれたもの。しかし普遍的なその内容は、若手だけでなく中堅社員にも応用できるものだと思います。だからこそ、より多くの方に手にとっていただきたいと感じさせる一冊ではあります。
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Source: 白夜書房