今回は、ムダに増え続ける「仕事のための仕事」を減らす方法を紹介します。

というのも、リモートワークが促進される中、「仕事のための仕事」が増えていることが問題となってきており、もはや待ったなしの状況にあると考えるからです。

Asanaが実施した、1万3123人のグローバルナレッジワーカー(知識労働者)を対象とした調査(「仕事の解剖学」インデックス2021 )によると、コロナ禍前の2019年と比較して年間残業時間は242時間から455時間に上昇しているといいます。

同調査によれば、従業員の約87%が1日約2時間の残業をしているのですから、もはや放置できない状況でしょう。

そこで今回は、抱え込みを予防するための「ムダをなくして仕事量を減らす方法」を紹介します。

ムダの発見に役立つ「ECRSの4原則」

穴に向かって向けられたはしご
Image: PM Images/Getty Images

業務のムダを検証する手法「ECRSの4原則」を紹介します。これは「イーシーアールエス」とも「イクルス」とも呼びます。

生産管理における「ムダ・ムリ・ムラ」を撲滅するための定番の法則であり、「排除する」「結合する」「順序を変える」「単純化させる」といった切り口からムダな作業を削減する手法のこと。

あらゆる業務に適用ができ、私が提供するタイムマネジメント研修でも紹介し、効果が得られています。

ムダを見抜く4つのステップ

まず、下記の4つのステップでムダがないかをチェックします。

【「ECRS」4つのステップ】

  • ステップ1:E:Eliminate/排除(=不要な業務を捨ててみる)
  • ステップ2:C:Combine/結合(=複数の業務をくっつけてみる)
  • ステップ3:R:Rearrange/入れ替え(=作業や場所の順序を変えてみる)
  • ステップ4:S:Simplify/単純化(=もっと簡単にしてみる)

大事なのはこのステップ通りに検討すること。つまり、ムダをなくすことが最初のステップ

ムダなことを効率的にすることほどのムダはないでしょう。まず、この流れを覚えておいてください。

最も重要な「E(排除)」実践のポイント

除去されるテキスト
Image: Yagi Studio/Getty Images

では、最も重要な「E:Eliminate/排除(=不要な業務を捨ててみる)」のポイントを解説します。

はじめ、こう思われたかもしれません。「いったい何がムダなのかがわかない!」

リモートワークの場合、この取捨選択をしないと仕事が溜まる一方になります。

ポイントは、まずタスクを「主作業」「付随作業」「ムダ作業」の3種類に分けること。そして、やるべきことは付随作業を短縮化させることと、ムダ作業をなくすことの2つです。

1. 主作業

「主作業」とは、「成果に直結する業務」のこと。増やせば増やすだけ、成果が上がる業務のことを言います。

営業なら商談数や電話をかけることですし、プログラマーならプログラミングをしている時間です。マネジメント職なら、部下との会話も該当します。

増やすほどに成果が出るイメージが持てるのではないでしょうか。

2. 付随作業

「付随作業」とは、主作業をするための「準備」にあたります。

たとえば、営業ならリストアップや企画書を作成すること、クライアント先に訪問するための移動時間などが該当します。(移動時間を増やしたところで成果に影響しないからです)。

デスクワークの場合は、メールや文書作成の多くは付随作業であることも少なくありません。連絡や調整のメールが増えていることでしょう。丁寧に返信するとタイムアップになってしまいます。

プログラマーなら、打ち合わせ時間がそれにあたりますし、マネジメント職であれば情報共有を目的とした定例ミーティングも付随作業です。

減らしても成果には影響しないものは付随作業です。付随作業を短縮化させることとを考えましょう。

3. ムダ作業

そして、「ムダ作業」。主作業の準備でもなく、気がつけば時間がとられているものを指します。過度なSNSやメールのチェック、必要以上に丁寧な資料を作ることもムダ作業です。

そして意外と多いのが作業のやり直し。これはムダ作業の典型です。

まだあります。不意の特急仕事も、「残業してまで、今これをしなくてもいい」と考えられるならムダ作業だと言えます。納期を確認せずに急ぎで処理しようとすると、ムダな特急仕事が増えてしまうことも。

上記のような、ムダ作業をなくすことが重要となります。

注意:雑談を「ムダ作業」と判断するのは早計

とはいえ、注意すべきことがあります。

雑談は不要だからといって、完全になくすようなことをしてしまうと、いざ誰かに相談するときに困ることになるでしょう。

お互いの関係性ができていなかったり、相手の状況が分からないために相談しにくいといった事態にもなりかねません。

特に、リモートワークを行なう上では、仕事の抱え込みをなくすために関係性を良くしておくことは不可欠。

適度な雑談はむしろ「重要な付随作業」と捉え、定期的に時間を取ってでも雑談をしたいところ。

一緒にランチをする、ミーティングでプライベートを共有する、またはオンラインで雑談をすることで、生産性を高めている会社もあります。

コロナ禍だからこそなくしたい「ムダ」とは?

数枚の紙を射抜く鉛筆
Image: MirageC/Getty Images

最後に、こうした状況だからこそ、チェックしておきたい「ムダ」をリストアップしてみました。

NG1. 全て自分で請け負ってしまう

対策:

仕事があふれてしまいそうな時は、上司や同僚にお願いする。お願いの仕方がわからない際は上司に相談。少なくとも、仕事の量を減らすことを考えること。

NG2. わからないことがあると1人で黙々と調べる

対策:

先に知っている人がいないかを、チャットかメールで聞いてみる。

NG3. 納期を確認せず、すべての作業を急ぎでこなす

対策:

納期の相談を先にすること。リモートワークだと人知れず残業してしまうことになる。

NG4. メールや書類作成を溜めてしまう

対策:

メールや書類作成は手離れをよくしておきたい。

件名のみ変更すればOKのテンプレート、よく使用する短文、文章登録をした文、マスターなどを用意し、簡単な文字の差し替えで済むよう事前準備を整える。チャットの場合は“スタンプ”で済ませる。

***

このように、1人で仕事を抱えてしまわないよう、処理できるものは手際よく済ませて、お願いできることは人に頼み、ムダな仕事を減らしていくことを考えてみてください。


今回は、「ムダをなくして仕事量を減らす方法」を紹介しました。

ムダな抱え込みをなくし、効率が確実にアップすることを確信します。今回の内容が少しでも参考になれば幸いです。

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伊庭 正康 株式会社らしさラボ 代表取締役

伊庭正康さん

リクルートグループ入社。残業レスで営業とマネジャーの両部門で累計40回以上の表彰を受賞。その後、部長、社内ベンチャーの代表を歴任。2011年、株式会社らしさラボ設立。リーダー、営業力、時間管理等、年間200回以上の研修に登壇。リピート率は9割以上。現在は、オンラインを活用した研修も好評。近著に12万部を超える『できるリーダーは、「これ」しかやらない メンバーが自ら動き出す「任せ方」のコツ (PHP研究所)』『できる営業は、「これ」しかやらない(PHP研究所)』のほか、新刊の『目標達成するリーダーが絶対やらないチームの動かし方(日本実業出版)』『結果を出す人がやっている! 仕事を「楽しくする」方法(アスカビジネス)』をはじめ、他多数の書籍がある。

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Source: Asana