営業ほどおもしろい仕事はない。なぜなら、不器用で人見知りであっても、ゲーム感覚で楽しみながら結果を出せ、お客様から多くの信頼を得ることも可能だから。
そう主張するのは、『できる営業は、「これ」しかやらない 短時間で成果を出す「トップセールス」の習慣』(伊庭正康 著、PHP研究所)の著者。人見知りでありながら、前職のリクルートにおいては数々の実績を打ち立てることができたという人物です。
研修の会社「らしさラボ」を設立してからは、営業力強化、リーダーシップ、フォロワーシップ、タイムマネジメント、ストレス対策などの研修・講演・コーチングを実施しているのだとか。ライフハッカーでも「仕事効率化」連載を担当しています。
そうしたバックグラウンドがあるからこそ、「営業はおもしろい」と断言できるのでしょう。
ただし、正しいやり方を知らないと、見える景色はまったく異なるそう。結果は不安定となり、下手をするとお客様から嫌われかねないというのです。
では、どうすればいいのか? その問いに対する答えが、本書にはあるわけです。
営業の正しいやり方とは、動きまわることでも説得しまくることでもありません。1日の限られた時間の中で「お客様の期待を超える行動」をどれだけ実践できているか、です。(「はじめに」より)
こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第7章「『営業がうまくいかないとき』のリアルな対処法」に焦点を当ててみたいと思います。
不景気で、成果が上がらなくなったときの対処法
「『得手に帆を揚げて…』とはよく言ったもので、得意な道を一生懸命に打ち込んでおりさえすれば、チャンスは必ずあるよ。一生のうちに好景気、不景気は必ずめぐってくる。そんなことにジタバタしても、仕方がないよ」 (本田技研工業創業者・本田宗一郎の言葉)
不景気になると目標達成が厳しくなるものですが、名経営者だった本田宗一郎氏は、上記のように語っているそうです。
したがって、必要以上に悩む必要はないということ。とはいえ待っていてはダメで、やはり努力は必要。
不可抗力で目標達成が厳しくなったときこそ、「新しいやり方」にトライすることは絶対のセオリーだと著者は記しています。
経験上、不景気のときにやったことのほうが、景気のよかったときにやったことより、次の成長につながったとも。
もし、不景気で先が見えないなら、こう考えてみてください。こんなときこそ「あなた流の新しいやり方」を開発するときだ、と。
さらに、営業の場合はやるべきことは簡単です。「会う人を変える」のです。そこに突破口があることは少なくありません。(265ページより)
たとえば法人営業であれば、目先のことしか見えていない担当者ではなく、「将来を考えている人」、すなわち経営者に会うべき。
なぜなら経営者は「必ず景気は回復する」という観点で、「いまのうちに準備をしたい」と考えるものだから。
個人営業でも同じで、景気の悪いときは「ご紹介」がいちばん。景気のいい人のまわりには景気のいい人が集まっているものなので、アフターフォローを欠かさないことも重要。
そうした発想と行動こそが、営業のおもしろさだというのです。もちろん失敗もあるでしょうが、それも不景気だからこそ許されるもの。
景気がよければ、そんな“あそび”はできないので、不景気のときこそ「会う人」をまず変えてみる。そうすれば、思った以上に、希望の光に包まれていることを実感できるものなのだといいます。(264ページより)
やる気が出ないときの対処法
営業とモチベーションは、切り離せないほど密接な関係にあるもの。
うまくいかないことがあると「やる気」がなくなってしまうわけですが、「しんどいとき、迷ったときは、5件だけアプローチしてみる」べきだと著者はいいます。
「進捗の法則」をご存知でしょうか。 説いたのは、テレサ・アマビールとスティーブン・クレイマー。 ハーバード・ビジネス・レビューにも寄稿する組織学と心理学の学者です。
内容はこう。「有意義な仕事の進捗を図ること」こそが、モチベーションに影響する。
大きな結果を得ることより、前に向かって少しでも進捗を実感することができれば、「やる気」が高まる、といった考え方です。
つまり、結果は後。結果が出ていなくても、「進捗」」を実感すれば、やる気を高めることはできるのです。(272〜273ページより)
「5件」であることにも理由があるようです。
1件だとうまくいかないかもしれないけれど、5件のアプローチをすれば、提案の機会をいただけるなど、いい話を聞けるチャンスを得やすいということ。その結果、「いい話」を通じて、前に進んでいる実感を得ることができるわけです。
心理学者のダニエル・ギルバートは、こう言っています。
「毎日、ささやかな良いことが十数回起こる人は、本当に驚くほど素晴らしいことが一回だけ起こる人よりも幸せである可能性が高い」と。
さらに、こうも言います。 「私たちは、一つか二つの大きな出来事が深い影響を与えると想像しがちですが、幸福は無数の小さな出来事の総和なのです」と。(274ページより)
著者の場合は「5件」の訪問をする際、「お客様から感謝される仕掛け」を用意していたそう。お客様が関心を持ちそうな情報を「営業ツール」にして持参していたというのです。
「お役に立てそうな資料を作成しました。もしよろしければ近くまで来ていますので、お持ちしたいと思いますが、いかがでしょうか?」と。
訪問するごとに「ありがとうね」といわれていると、少しずつ“もうちょっと、やってみたいな”と思えてくるもの。しかも、それが何度も続くと、やる気が徐々に高まっていくわけです。
だからこそ著者は、「やる気が出ないとき」こそ、お客様の「ありがとうね」をもらえるような「5件」のアプローチをしてみてはどうかと提案しているのです。(272ページより)
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著者が営業研修で提供しているスキルはもちろんのこと、研修では紹介しきれない理論や、具体的な実践方法までを紹介。そんな本書は、営業マンにとっての強力なサポート役となってくれることでしょう。
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Source: PHP研究所