「Z世代の思考や働き方が理解できない」なんて嘆いている方も、自分たちが若い頃を思い出すと、「お前たちの考えとは相容れない」なんて上の世代から言われていたのでは?

かくいう筆者は90年代の(ギャル)世代。昔は上記のようなことはよく言われたし、社会全体から奇異の目で見られたこともありました。しかし、そんな私たちの考えが次第に社会に溶け込み、今をつくっているわけです。良い悪いは抜きにして。

つまり、Z世代の価値観もこれからは当たり前になっていきます。そこで、今回はZ世代が新たにつくり、流行らせた働き方のトレンドや価値観を、XREFを参考にしながら紹介します。

Z世代発信、5つのバズワード。次なる「スタンダード」になる?

1. 『Rage applying(怒りにまかせた応募)

意味:現職に不満を持つ労働者が、怒りに任せて短期間のうちに多くの求人に応募する現象

生まれた背景

Z世代の多くがパンデミック下のリモートワークを長く経験しています。

結果として、それまでの世代が当たり前としてきた職場での対面コミュニケーションとは異なる形式の人間関係構築を強いられてしまいました。

そのために、サポートも乏しく、会社の一員と感じられない人も多く、フラストレーションに突き動かされ、手当たり次第に求人に応募してしまうのです。

2. 『Quiet quitting(静かな退職)

意味:自分に課せられている仕事以上の働きをするという考え方をやめること

生まれた背景

2022年にTikTokで爆発的に広まった「仕事そのものを辞めるのではなく、給料以上の求めに応じないこと」で、燃え尽きた人たちや、自分の健康を守らないといけない人たちから強い共感を得たコンセプトです。

これと対極にあるのが、2000年代初頭に流行った「ハッスルカルチャー」です。

私生活を犠牲にしてでも仕事に没頭するのが成功の鍵だと考えられていました。映画『プラダを着た悪魔』なんてまさに「ハッスルカルチャー」を描いた作品です。

3. 『Loud quitting(騒がしい退職)』

意味:それまで普通に働いていたのに、急に同僚や上司に「辞める」と伝えて辞めること

生まれた背景

従業員が、上司やリーダーに仕事上の不満を伝えたり、問題の改善を依頼したりしても、説明などなく却下されてしまったときなど、従業員と雇用者の信頼関係が修復し難いほど壊れてしまったときに起こる傾向があります。

本人が突然「辞める」と言い出すだけでなく、代理人を立てることもあります。どういったケースにせよ、ほかの従業員の士気を下げ、会社に損益を与える行為になります。

4. 『Quiet promotion(静かな昇進)

意味:責任が増えるものの、待遇が以前と変わらない事象

生まれた背景

「昇進のチャンス」や「後学のため」といった言葉とセットで、今よりも重い責任を負わせられることもあります。

同僚が産休/育休に入ったタイミングで、フォローとして仕事量が増えるなど、明確な昇進とは異なり、いつの間にか責任が増えているケースが少なくないために、「静かな」と言われています。

5. 『Bare minimum Mondays(必要最低限の月曜日)』

意味:仕事上の不安を和らげるために、月曜日は必要最低限の仕事しかしないこと

生まれた背景

月曜日がやってくる恐怖を意味する「Sunday scaries(日曜日の恐怖)」を和らげるために生まれたコンセプトで、TikTokを中心に流行しました。

月曜日は大事な会議などを入れずに、溜まったメールの返信や雑務といった必要最低限の仕事に費やす日にするのが良いという考え方です。

金曜日の午後の仕事量を減らして、次の週に回せるものは回す取り組みは、すでに個人でも企業単位でも取り入れられているのではないでしょうか。

Z世代だけじゃないはず。共感できたならまずは考えてみよう

ハッスルカルチャー(仕事中毒)の中で、出世や成功のためにがむしゃらになっていた世代や、「企業戦士」と呼ばれた世代にとって、「静かな退職」「騒がしい退職」は理解し難いと感じるかもしれません。

でも、言葉の意味やコンセプト、価値観が生まれた背景を知ると、それがここ最近生まれた不満や疑問ではないと気づかされるのでは?

日本の場合、長時間労働や報酬に見合わない責任といった問題を、労働者に我慢させることでやり過ごしてきました。その中で、無理をしすぎて体調を壊したり、私生活がうまくいかなくなったりした人は多いでしょう。

Z世代は柔軟性と多様性、公平性、包括性(DEI)などに重きを置く社会システムの中で育ってきたため、そういった問題に対して、いい意味で敏感で耐性がないと言えるのかもしれません。

自分の能力を過大評価して社会に多くを求めすぎたり、会社が不利益を被ったりするような振る舞いをするのは御法度ですが、「適正評価」や「無理をしない働き方」と解釈すれば、Z世代以外の人たちも彼らの価値観に共感できる側面があるかもしれません。

Source: XREF