この記事を開いて読んでいる方なら、スティーブ・ジョブズがどのような人物かは、すでにご存じでしょう。
Appleの共同創業者の一人として、画期的な数々のプロダクトを世に送り出して来たジョブズ。2011年に逝去してからも、今日に至るまで多大な影響を与え続けている、まさに現代の偉人です。
Appleの創業〜突然の解任、ピクサーでの成功〜Appleへの復帰など、彼の生涯にはさまざまな波乱とドラマがありました。
今回は、そんなスティーブ・ジョブズの生涯で、彼が際立った個性を発揮したエピソードと、そこから得られる教訓を4つ、お伝えします。
12歳、一本の電話が人生を変える
12歳の時、スティーブ・ジョブズは一本の電話をかけます。そしてその経験は、のちの人生全体に大きな影響を及ぼすことになりました。
ジョブズ少年が電話をかけた先は、なんとヒューレット・パッカード社の共同設立者ビル・ヒューレット。電話口で彼はヒューレットに向かって、なんと「周波数カウンタをつくりたいのですが、パーツが余っていたら分けてもらえないでしょうか」とお願い。
しかし、そんなジョブズ少年の大胆さが気に入ったヒューレットは笑って、ジョブズにパーツを譲ったばかりでなく、ヒューレット・パッカード社でのサマージョブまで与えたそうです。
のちのインタビューで、ジョブズはこのように語っています。
たいていの人間は、自分から電話をかけて頼んでみるということをしない。
それが、物事を実行に移す人間と、夢見るだけの人間の違いだ。
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大学を中退しても、通い続けた1つの授業
ジョブズはリード大学をわずか6カ月で中退します。その理由は「高い授業料を納めても将来のキャリアの決め手にはならない。支払ってくれていた養父母の出費を抑えるため」とのちに語っています。
中退したものの、ジョブズは友人の寮の床で寝泊まりしながらリード大学に通い続けます。そこでジョブズが感銘を受けた授業が「カリグラフィー(文字を美しく見せる技法)」。
その学習が、10年後のMacのデザインへと影響を与えるのです。これが有名な「点と点ををつなぐ」エピソードです。
美しいタイポグラフィー(フォントのデザイン)がパソコンに使われたのはMacが初めてです。
もし私があの大学の講座に立ち寄っていなかったら、複数のフォントやプロポーショナルフォントがMacに使われることはなかったでしょうし、WindowsもMacに倣ったものなので、後のどのパソコンに採用されることもなかったでしょう。
もし私が中退していなかったら、あのカリグラフィーの授業を聴くこともなかっただろうし、現在使われているあの美しいタイポグラフィーがパソコンで使われることもなかったかもしれません。
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iPhoneの危機に行なった歴史的記者会見
ジョブズがAppleで行なったさまざまな偉業やエピソードの中でも、もっとも印象的な出来事の1つがこの「2010年の記者会見」です。
これは当時発売されたiPhone 4が、持ち方によっては電波が遮断されてしまうとして問題となった、通称「アンテナゲート」事件のこと。
Appleは即座に記者会見を開き、ジョブズが記者たちの前に立つことに。
彼は事態への対応方針を明確に示すとともに、次のように述べました。
我々も完璧ではありません。それは、我々も理解しています。
皆さんもご承知ですね。スマホも例外ではない。
でも、すべてのユーザーをハッピーにすることが我々の願いなんです。
事実、Appleは現実的な解決策として、ユーザーが直接アンテナ部分に触れて受信に影響を与えてしまわないよう、Appleではスマホケースを無償で提供。さらに、「iPhone 4に満足いただけないユーザーには返金も」と表明しました。
この出来事は、「本質はデバイスがいかに優れているかではなく、ユーザーがハッピーかどうかがもっとも重要である」というジョブズの考えを、具体的な行動として示したエピソードとなりました。
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余命宣告は「もっとも重要なツールだった」
ジョブズの生涯を語るうえで、欠かせないエピソードが余命宣告です。死と向き合いながら、ジョブズはこのような言葉を残しました。
人に与えられた時間には限りがある。
だから、誰かの人生を生きて、時間を無駄にしてはいけない。
この言葉は2005年、スタンフォード大学の卒業式でのスピーチで語られた言葉です。その時、彼はすい臓癌の診断を受け、余命は3~6カ月ほどと宣告されたばかりでした。
ジョブズは、自身の死に向き合ったことについて、「人生で大きな決断をするうえで、私が手にしたなかでも、もっとも重要なツールだった」と述べています。それは、恐怖心、怠慢、そしてプライドなど、私たちの心に浮かぶほぼあらゆることが、死に直面すると剥がれ落ち、真の意味で大切なものだけが残るから。
余命宣告を受けてからジョブズは、毎日、自分自身に次のことを問いかけるようになりました。それは「今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることをやりたいと思うだろうか?」という問いです。
この問いに対する答えが「ノー」である日があまりに長く続くと、これは何かを変えなければならないというサインだとわかった。
ジョブズはそう語ります。
「生きる意義を問い直すこと」それが彼がスタンフォードの卒業生たち、そして私たちに伝えたかったことではないでしょうか。
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スティーブ・ジョブズはたくさんのエピソードと言葉を残しました。そこにある数々の教訓は、もしかしたらiPhoneやMacよりも、もっと大きな贈り物なのかもしれません。