道なき道を拓き、未だ見ぬ新しい価値を世に送り出す人「起業家」。未来に向かって挑むその原動力は? 仕事における哲学は…? 時代をリードする起業家へのインタビュー『仕事論。』シリーズ。

今回は、自然の中にもう一つの家を持てるサブスクリプションサービス「SANU 2nd Home」を展開する、株式会社Sanu(サヌ)代表の福島弦(ふくしま げん)さんをインタビュー。SANUのビジョン「Live with nature./自然と共に生きる。」に込めた自然への深い思いや、今後の展望について伺いました。

自然と共存するための接点、それが「SANU 2nd Home」

──起業の経緯を教えてください。

「SANU」は2019年の11月、本間貴裕(Founder/Brand Director)とわたし福島弦の2名で立ち上げました。本間とは、共通の友人の結婚式で出会って、意気投合。山や海へ出かける友人として、また、ビジネスパートナーとして関係を深めました。

実は、2人でSANUを起こした当時は、事業内容はまっさら、何も決まっていない状態でした。

「自然」をテーマにした新しいブランドを立ち上げようという構想はあったものの、「人を自然に連れていきたい」「自分たちも自然に触れられる事業にしたい」という大枠しか決まっていなかった。

僕たちの場合、事業モデルより先にSANUが目指す哲学やビジョンの設計からスタートしたんです。

──では、御社のビジョン「Live with nature./自然と共に生きる。」はどのようにして生まれたのでしょうか?

「自然を題材にして事業を成すとは、どういう意味があるのか?」という意義を、半年ぐらい悶々と考えていました。自然をテーマにすると自然を消費することにもなりますし、繊細な題材なので…。

そのときに大きなインスピレーションを与えてくれたのが、写真家・石川直樹さんの写真と添えられた一文です。

自然と共生するというのは、“人間が自然を守る”ことではなく、人間と自然が対等な関係を結ぶことではなかったか。(『この星の光の地図を写す』石川直樹 著、リトル・モア)

自然との触れ合いの喪失が、根源的な問題ではないか? と気づかされました。

地球環境との共存は人類にとってもっとも大きなテーマですが、共存するには自然に触れることが大事です。山の空気を吸い「気持ちがいい」という感覚がなければ、自然を労わろうとはなかなか思えません。

自然に触れる人の数を増やすこと。そこに事業を立ち上げる意味があるのではないか? と、そんな思いで会社のビジョンとして「Live with nature./自然と共に生きる。」を掲げました。

──ビジョン設計から「SANU 2nd Home」を着想するまでの経緯を教えてください。

弊社には「自然が好きだ」という揺るがないビジョンがあるので、ビジネスモデルはあくまでも“手段”という考えです。ですが、ビジョンを達成するためには、多くの人に深いインパクトを与えるような事業でなければなりません。

「SANU 2nd Home」の着想は、自分の消費者として満たされていないニーズからでした。僕は山に行くのが好きですが、何度も通いたくなるようないい宿泊施設がないことを実感していたんです。自分たちも使いたいと思えるような、心地よい気軽に使える空間を提供したい、と。

「SANU 2nd Home」の着想までは約2年。考えあぐねたあのころは、苦しかったですね(笑)。

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サービスと建築、二方向から自然へとつながる
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