仮にもし、「ひとりが好きな人」を「内向型人間」と定義づけるのであれば、ときにはそんな特性がネガティブに捉えられてしまうこともあるかもしれません。

たとえば「変わり者だ」とか、「つきあいづらい」とか。

とはいえ決して問題があるわけではなく、むしろ社会から必要とされる優れた資質に恵まれているのだと説くのは、『「ひとりが好きな人」の上手な生き方』(ティボ・ムリス 著、弓場 隆 訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者。

内向性を才能として社会のために役立てる最良の手段は、自分のそうした性格を適切に評価することだというのです。

ただし、現実問題として困ったことがあるのも事実でしょう。たとえば内向性についての良書はたくさん存在するものの、人生を再設計するための実用的な方法を教えてくれるものは少ないということ。そのため、読んでみればなんとなく勇気づけられはするけれど、具体性に欠けるため「次になにをすべきか」がわからずじまいになってしまうわけです。

しかもそういう本には、外向型のように振る舞うことを勧める傾向があるものでもあります。したがって、読んでいると「自分には欠陥があるのではないか」ように思えてくる可能性もあるのです。

そこで本書の出番。

本書の目的は、内向性について解説し、内向型として本来の生き方ができるように実用的なエクササイズを紹介することである。ときには率先してリーダーシップをとるように提案することもあるが、「外向型のように振る舞うべきだ」と言うつもりはまったくない。

内向的な性格を活かして社会に最大限の貢献をし、できるだけ幸せになってほしい。それが私の願いである。(「本書の目的」より)

そんな本書の第3章「内向的な性格を最大限に活かす」内の「人生をより良くするための社交、仕事、人間関係のヒント」のなかから、きょうは「仕事」に焦点を当ててみたいと思います。

仕事の満足度を向上させるためには?

大まかな判断基準として、いつも自尊心を損なってしまうような環境は、あなたにとって好ましくない。

ローリー・ヘルゴー(アメリカの心理学者、ニューヨーク私立大学教授)

(89ページより)

自分に合っていない仕事に就いていたり、適していない環境に身を置いたりすると、当然のことながら一日の終わりにはぐったりと疲れてしまいます。しかも、残念なことに現在の労働環境は、内向型の人にとって不利な場合が多いのだそうです。

たとえばオープンスペースは、内向型の人にとって最悪の環境のひとつ。オープンな場所に出向くのではなく、仕事に集中するためにプライベートな空間と静かな時間を必要としているからです。

そこで著者は、自分の環境を再設計して仕事の満足度を向上させるための提案をしています。

・休憩時間を活用して散策に出かける。

・自分だけの時間をつくるために、ひとりで昼食をとる。

・空いている会議室を探し、その部屋を使って中断されずに働く。

・ひとりでいる時間を捻出するために、早めに出勤するか遅くまで残る。

・周囲の雑音が聞こえないようにヘッドフォンを使う。

・たとえ週に一度でも自宅で働けるように交渉する。自宅で働くことを有利に交渉できるように自分の生産性を高く保つ。

・会議の前かあとでアイデアを提案してもいいか上司に尋ねる。そうすることで、たとえ会議中に発言できなくても、やる気があることを示し、自分の存在感をアピールできる。

・仕事中は中断時間を最小化したいと思っていることを同僚に伝え、自分に何が求められているかを尋ねる。仕事の邪魔をしてくる同僚にそれを伝えることは、とくに重要だ。

・電話よりもメールでコミュニケーションをとりたいと思っていることを伝える。

・許される範囲内で、なるべく会議に参加しない。

・中断せずに仕事に集中できるように勤務状況を調整する。(90〜91ページより)

これらのなかから、自分に合った方法を選んで試してみればいいということ。小さなことではありますが、そうすることで、オフィスでのストレスを少なからず改善できるかもしれません。(89ページより)

職場で上手に自己主張をする5つの方法

自分では自然だと思っていたとしても、内向型人間と外向型人間とでは考え方や行動パターンが大きく異なるものです。

たとえば一般的に内向型の人は、人前で話して目立つことは好まないはず。しかし、しゃべる前にひとりで考える時間を必要としていることや、会議で発言しないからといって組織に貢献したくないわけではないということを、外向型の人は理解していないかもしれないのです。

そこで著者は、自分の存在感をアピールするために次の提案を参考にしてほしいと述べています。

1:一対一の会話を増やす

内向型の人は会議では組織にあまり貢献できないかもしれませんが、一対一で話すことにさほどの抵抗はないはず。したがってそういう機会を増やせば、同僚とより深い関係を築くことができるわけです。たとえば昼食に誘ってみたり、他の人たちの出勤前か退勤後に一対一で話をしてもいいでしょう。

2:他人の手伝いをする

同僚と一緒にニュースレターや記事を書いたり、なにかを提案するなど、興味のあることについて手伝いを申し出ることも大切。自己PRをするのは得意ではないでしょうが、同僚について知っていることをもとに、相手を助けるためになにができるか、相手の目標達成を手伝うにはどうすればいいかを考えてみるのです。

3:書面でのコミュニケーションに集中する

会議のあと、考えやアイデアを書面で共有したいと伝えれば、組織に貢献したいという思いが伝わるだけでなく、考えたことを文章化する時間を確保することも可能に。

4:同僚に助けを求める

内向型の人は他人に助けを求めようとせず、自分でなんでもしたがるもの。しかし、助けを求めることは、同僚と接して感謝を伝えるための重要な方法でもあります。多くの人は人助けが好きなので、お互いに得をする可能性が高いそう。

5:上司に絶えず近況を伝える

自分がこれからしようとしていることを、上司に定期的に伝えることも重要。(92ページより)

時間をかけずに要点をつかめる簡潔な内容。そのため内向的な方は、本書を通じて自分が進むべき適切な道を判断することができるでしょう。

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Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン