道なき道を拓き、未だ見ぬ新しい価値を世に送り出す人「起業家」。未来に向かって挑むその原動力は? 仕事における哲学は…? 時代をリードする起業家へのインタビュー『仕事論。』シリーズ。
今回は、多くの企業が抱えているマーケター育成の課題を解決。「業績につながる人材育成サービス・グロースX」を提供する株式会社グロースX代表取締役の津下本耕太郎(つかもとこうたろう)さんに、起業の経緯やプロダクトに込めた想いなどを聞きました。
マーケティングは生き物。一緒に成長できる人材を育てる
──まず最初に、事業内容を簡単にお教えください。
企業向けマーケティング学習アプリ「グロースX」をはじめ、営業、人材採用、AI・DX人材、DE&Iなどの人材育成SaasツールをBtoBで提供しています。
主な製品は具体的には、デジタルマーケティング、AI、DXなど、マーケターに必要な知識を弊社が開発した独自のアプリで学び、実践につなげるためのディスカッションをしてもらうというものです。
たとえば「マーケティング総論」「新規獲得施策」「プロモーション設計」「ビジネスモデルの理解」などの学習カリキュラムを用意しています。また管理者には進捗を一括で把握できるダッシュボード機能もあります。
──なぜ「学びの支援」に着目されたのでしょうか?
私は2007年にデジタルマーケティング業界に入ったのですが、当時「今がデジタル系分野の過渡期だ」と言われていました。でもあれから15年たちましたが、どうやら「ずっと過渡期」なんですよね。
つまり、変化し続ける生き物みたいな分野だからこそ、知識をアップデートし続ける必要がある。今はリスキリングという言葉をよく聞くようになりましたが、当時の私も「習慣的にスキルをアップデートできるサービスをつくれないか」と思ったんです。
もうひとつ、マーケティングってOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)で学ぶことがほとんどで、人を育てる仕組みがまだ足りていないと感じていました。
現在のマーケティングは学ぶべき要素が非常に増えていて、「何から手をつけていいかわからない」という人も少なくありません。そうなると、とりあえず自分の目の前のことだけに意識が向く。結果的に全体を俯瞰で捉えられず、知識もアンバランスになる。そこで、「体系的な知識を身につけて成長できる人材を増やそう」と思い、プロダクトを考えました。

──そういった考えが、起業の経緯にもつながるわけですね。
そうですね。育成に困っているマネジメント層は非常に多いんです。
マーケティング知識、顧客視点を持ち、かつビジネス全体を捉えられる人材が今、必要とされています。でも研修だけの学習では限界がある。継続的・習慣的に学習ができる、スマホに特化した人材育成サービスには潜在的なニーズがある、と。
弊社のサービスはe-ラーニング(オンライン学習)だと解釈されることもあるのですが、e-ラーニングではないんです。
私自身、e-ラーニングを続けられたことがなくて。だからプロダクトをつくるにあたり、続かない人の気持ちを理解したうえで設計しました。だから、ただ学ぶだけではなく、知識のインプット(学習)と実践が循環して成長するような仕組みになっています。
たとえばアプリの中で、みんなで一緒に何かを考えたり、アイデアを出しあったり、同僚がどんな風に考えているか見えるような体験ができたりします。またランキングがあったりとソーシャル性もあり「離脱させない」プロダクトにしました。
e-ラーニングはなかなか続かないということも多いと思いますが、グロースXは数カ月経過しても導入先の100%の方が学習を続けているというケースも多数あります。