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『地図バカ-地図好きの地図好きによる地図好きのための本』(今尾恵介 著、中公新書ラクレ)は、著者が『中央公論』で平成29(2017)年から令和2(2020)年にわたって続いた「地図のある人生」という連載をまとめたもの。
新書化にあたって編集部から『地図バカ』というタイトルを打診されたときには、連載時のしゃれたタイトルから、ずいぶん一変したものだなと感じたといいます。しかしそれでも、著者は「地図バカ」を否定できないようです。
昨年は沖縄復帰と日中国交回復からそれぞれ五〇年の節目であったが、昭和四十七(一九七二)年といえば、私にとっては国土地理院の二万五〇〇〇分の一地形図に出会った記念すべき年である。
それから地形図をひたすら集めては鑑賞する生活を送ってきた。
社会人となってからは仕事のかたわらの趣味であり、「地図専業」で食べていくことができるようになったのは出版社を辞めた三年後の平成六(一九九四)年、『地図の遊び方』(けやき出版)を上梓してからなので、それでもまだ三〇年は経っていない。(「はじめにーー地図はみんなのもの」より)
この記述を確認するだけでも、「地図バカ」っぷりが想像できようというもの。また、これまで“地図界”で多くの本を書いてきた実績をお持ちでもあるため、「地図研究家」「地図の専門家」と呼ばれることが多いようです。それは当然の話だと思えますが、おもしろいのは、「そもそも私は方向音痴である」と明かしている点。
最初にどこかの講座で「私は方向音痴です」とカミングアウトしたら、何人もの受講者が安堵の表情を浮かべたのは印象に残った。
今年でちょうど四〇年所属しているアマチュアオーケストラの新交響楽団の音楽監督だった芥川也寸志さんの信条は「音楽はみんなのもの」であったが、これはとても本質的なものである。(「はじめにーー地図はみんなのもの」より)
つまり音楽がそうであるように、地図もまた「みんなのもの」であるということなのでしょう。そんな考え方を軸として書かれた本書の7章「天災と人災」のなかから、きょうは多くの人にとっての関心事について触れた「グーグルマップをどう使う?」に注目してみたいと思います。