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『岡本太郎の言葉』(桑原晃弥 著、リベラル社)がクローズアップしている芸術家の岡本太郎氏は1911年、漫画家の岡本一平と小説家の岡本かの子の長男として生まれました。一平は朝日新聞の「漫画慢文」で大きな名声を博し、かの子も初期には歌人として、後期には作家として多くの作品を残しています。`
2人の芸術家の間に生まれた岡本が芸術の世界へ進んだのはごく自然なことと言えなくもありませんが、教師や仲間に迎合しない「スジを通した生き方」をするために小学校を3度も転校したり、順位付けを嫌う生きざまこそが「岡本太郎」という稀有な芸術家をつくり上げることにつながったのではないでしょうか。(「はじめに」より)
事実、岡本氏は生涯一貫して「スジを通す」生き方をしました。著者によればそれを可能にしたものは、「勝って結構、負けて結構。ただ、完全燃焼、全力を尽くす」「むずかしい、危い、そう思えばなおさら、その中に踊り込むところに、生きがいがある」といった考え方。
たいていの人は失敗や、恥をかくことを恐れるものです。そのため結果的にはやりたいこともやらず、いいたいことを口にすることも避けてしまいがちかもしれません。対して岡本氏は、「好奇心の赴くままにやりたいことをやる」という生き方を貫いたため、多くの人の心をつかむことになったわけです。
先の見えにくい、明るい希望を持ちにくい時代ですが、そんな時代だからこそ人は岡本が言うように、弱いなら弱いままでいい、と覚悟を持ち、自分が本当にやりたいことに全力で取り組むことが必要なのです。(「はじめに」より)
こうした考え方に基づき、現代人にも役立ちそうな岡本氏のことばを集めた本書の第三章「成功や失敗を気にせず やりたいことをやれ」のなかから、いくつかのトピックスを抜き出してみましょう。
まずは「やる」と決める。そして「どうするか」を考える
制約の多いところで行動することこそ、
つまり成功が望めず逃げたくなるときにこそ、
無条件に挑む。
▶『自分の中に孤独を抱け』
(84ページより)
「やる勇気」を持つことよりも、「できない言い訳をする」ことのほうがよほど簡単。そのため、たとえばビジネスにおいて挑戦したいことがあるにもかかわらず、「いまは景気が悪いからその時期じゃない」「お金もかかるし人も必要だから、いまはまだ無理だ」などと「できない理由」ばかりを揚げてしまったりするわけです。
こうした言い訳の多い人に対して、岡本は「人を納得させるためにさかんに言い繕うわけだけど、結局それは自分としては是非とも行動したいんだが、やむを得ない事情からどうしても諦めざるを得ないのだとの弁明を自分自身に言い聞かせているだけだ」と断じています。(85ページより)
たしかにそのとおりで、条件がすべて整うタイミングを待っていたのでは、いつまで経ってもスタートを切ることはできません。大切なのは、制約があるなかでもまず「やる」と決めること。あとは「どうするか」を考えるだけでいいのです。(84ページより)
失敗は気にするな 再び挑戦すればいいだけだ
一度失敗したなら、
“よしもう一度失敗してやるぞ”というぐらいの
意気ごみでやることが大切なんだ。
▶『自分の運命に盾を突け』
(90ページより)
新しいことや慣れないことに挑戦するのを嫌がるのは、失敗を恐れるからにほかなりません。たとえば仕事においても、「失敗して上司から叱られるのは嫌だ」という不安から挑戦を避け、無難な仕事ばかりをするようになってしまうわけです。
しかし、それではなにを生み出すこともできませんし、自分自身を大きく成長させることも困難。このことについて、岡本太郎氏はこう述べているのだそうです。
「挑戦した上での不成功者と、挑戦を避けたままの不成功者とではまったく天地のへだたりがある。挑戦した不成功者には、再挑戦者としての新しい輝きが約束されるだろうが、挑戦を避けたままで降りてしまった奴には新しい人生などはない」(91ページより)
もちろん挑戦したからといって、成功が保証されているわけではありません。そもそも絶対の成功が約束されているのだとしたら、それは挑戦ですらないのです。つまり大切なのは、岡本氏がいうように全身全霊をかけて挑戦すること。結果的に失敗したとしても、そのときは「なぜ失敗したのか」と振り返り、もう一度、まったく新しい気持ちで再挑戦すればいいだけなのです。(90ページより)
ささやかな成功を追うより 自分の力で道を切り拓け
人生には、世渡りと、ほんとうに生き抜く道と二つあるはずだ。
▶『岡本太郎の眼』
(106ページより)
世間を渡り歩くのが上手な人を「世渡り上手」といいますが、そういう人にはいくつかの特徴があると著者は指摘しています。
- 目上の人にかわいがられる
- 人の気持ちや空気を察するのが早い
- 人見知りせず、誰とでも会話ができる
- ほめことばやお世辞をさらりといえる
- 頼ったり、お願いをするのに抵抗がない
といった特徴を持つ人が、一般的に「世渡り上手」と呼ばれるというのです。
岡本太郎は「人生には、世渡りと、ほんとうに生きぬく道と二つあるはずだ」と「世渡り」と「ほんとうに生きぬく道」を別物として考えていました。岡本が生きた時代、多くの日本人にとって「いい大学に入って、いい企業に就職する」ことは一生の安泰を約束してくれるものでしたが、岡本はこうした生き方は「この世をどううまく渡っていくかという処世的なスジしか考えない」のに対し、若者は「ジャングルの中を押し分けて進む」ことにこそ生きがいがあると考えていました。(107ページより)
成功か失敗かにかかわらず、自分の力で道を切り拓くことこそが大切なのだということです。(106ページより)
生きていくうえで大切なのは成功か失敗か、勝ったか負けたかではなく、「自分の人生をどれだけ懸命に精一杯生きたか」ということであるはず。
岡本太郎氏のことばを通じてそうした本質と向き合った本書は、迷いが生じたときにこそ役立ってくれそうです。
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