>>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験!
通訳者・翻訳家である『一度読んだら絶対に忘れない英単語の教科書』(牧野智一 著、SBクリエイティブ)の著者の頭のなかには、1万語の英単語が入っているそう。とはいえ記憶力が秀でているわけではなく、正しくは、「1万語の英単語の意味を類推できる」だけなのだとか。
そもそも、世の中にあるといわれている英単語は60万語。つまり1万語を記憶していたとしても、60分の1をカバーしていることにすぎないわけです。しかも30年以上の通訳者歴を経ても、初見の単語に出くわすことは日常茶飯事。それでも瞬時に和訳がつくれるのは、その場で“類推”しているからだというのです。
ただし、その類推にはきちんとした根拠があるようです。それは、英単語の“成り立ち(ストーリー)”。
英単語は、「適当にアルファベットを並べてつくられたもの」ではありません。多くの単語には「基本となる単語(語幹)」があります。その「語幹」と、ラテン語に由来する語源や、接頭辞・接尾辞とが組み合わさることによって、多くの単語は出来上がっています。(「はじめに」より)
したがって、初めて見る単語でも、その組み合わせに注目すればだいたいの意味が類推できてしまうということ。
ちなみに、本書に登場する英単語は500程度。しかし、あわせて解説されている英単語の「ストーリー」もセットで頭に入れれば、500語だけでなく、1万語近くの英単語の意味も“初見”で類推できる集中力が手に入るというわけです。
そんな本書のなかから、きょうは第2章「語源」に注目してみたいと思います。
「語源」の組み合わせから単語の意味を連想する
英単語のなかには、ラテン語(約2000年前に存在したローマ帝国で使われていた単語)に起源を持つものが数多くあるのだそうです。
そのため、ラテン語の語源が含まれている単語の場合、単語を分解してラテン語の語源に注目することで、意味を連想することができるようになります。(118ページより)
日本の学校教育では扱われないため、多くの人はラテン語に馴染みはないはず。そのため尻込みしてしまうかもしれませんが、押さえておくべき語源の数はそれほど多くないようです。
語源は膨大な数にのぼるものの、実際には使われていないもののほうが多いから。そこでここでは、ラテン語の語源が厳選して紹介されているのです。そのなかから、「『手』+『前に進める』で『操作する』」という項目に焦点を当ててみましょう。
ポイントは、ここで紹介されているmanとmaniは、どちらも「手」という意味で、ラテン語のmanus(マーヌス)が由来であるということ。そのため、manやmaniがつく単語は、「手」に関する意味の単語になるというのです。(118ページより)
manual(手動/手引き)
manualは、「manu(手)」と「-al(〜に関する)」で、「手動/手引き」という意味になります。「手をどのように使うか」というニュアンスです。そこから「手を使って」という意味と「手をどのように動かすか」という意味に派生しました。(120ページより)
たとえば「手を使って」の意味で思いつくのは、自動車のマニュアル車(manual transmission car)。また、「手をどのように動かすか」を示した取扱説明書のことを「マニュアル」と呼ぶことも同じ。そんなところからもわかるように、日本語でもすっかり浸透している単語といえるのです。(120ページより)
manicure(マニキュア)
manicureは「mani(手)」と「cure(治療する)」が合わさった単語。マニキュアはもともと、おしゃれではなく、爪が割れてしまったときの治療、あるいは爪が割れないよう対策するために塗られていたそうなのです。
manicureの「爪のお手入れをする」という意味から派生して、「爪をオシャレにするものという意味になったのです。(120ページより)
ちなみにcure(治療する)は、care(治療、世話)と同じくラテン語のcuratioから派生した単語だといいます。(120ページより)
manage(〜を操作する)
manageは「man(手)」と「-age(前に進める)」が合体して「〜を操作する」という意味になります。「手を動かす」ニュアンスからきています。(121ページより)
接尾辞の-ageは「前に進める/集合体/状態/行為」などを示すもの。そのため、「手を(人を)集めてまとめること」→「〜を管理する」という意味でも使われるのです。その他、baggage(荷物)、baronage(貴族)、marriage(結婚)、postage(郵送料)なども、接尾辞-ageが使われている単語になるといいます。
なお、manageは日本語では「マネージ」と呼んだり、managerを「マネージャー」と呼んだりします。が、正しい発音は「マネッジ」。そのため、「ネージ」と伸ばして発音しないように注意するべきだとも著者は記しています。(121ページより)
manipulate(〜を巧みに操作する)
manipulateは、「mani(手)」と「pulate(満たす)」が合体して「〜を巧みに操作する」という意味になります。manageと意味が似ていますが、「巧みに」というニュアンスが含まれるのがmanipulateの特徴です。「使いこなす」や「駆使する」と表現してもよいでしょう。(121ページより)
日本語でも、専門的な操作をする人や、音楽関係では楽器のトラックをつくる人を「マニピュレーター(manipulateに接尾辞-orがついてmanipuator)」と呼ばれたりするので、ピンとくる方も多いのではないでしょうか?(121ページより)
たしかにこうして語源に注目してみれば、さまざまなことを類推できます。そのため、英語の語彙力がなかなか上がらないと悩んでいる方にとって、本書は大きな助けになってくれることでしょう。
>>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験!
「毎日書評」をもっと読む「毎日書評」をVoicyで聞くSource: SBクリエイティブ