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悩みを誰かに話したり、弱音を吐いたりしたとき、「誰だってそうだよ」「もっと前向きに考えなよ」などといわれ、モヤッとした経験は誰にでもあるかもしれません。
また、そのたびに「自分はネガティブなんだな」「自己肯定感を高めなきゃ」などと自分を追い込みがちな方の場合は、次のように感じることもあるのではないでしょうか?
・やりたいことはたくさんあるのに、できなくて落ち込む
・落ち込みはないけれど、体が重く感じる
・働けてはいるけれど、家に帰るとぐったりしてなにもできない
・人といるときは落ち着いているのに、ひとりになると涙があふれる
・つい先走ったことをして、いつも失敗してしまう
(「はじめに」より)
『精神科医が教える 笑顔うつから抜け出す方法』(精神科医しょう 著、あさ出版)の著者によれば、こうした状態が続いているのであれば「笑顔うつ」かもしれないのだそうです。なんとか社会生活は送れているものの、内面で抑うつ症状や身体の不調を抱えている状態を、著者はそう呼んでいるというのです。
これは正式な名称ではありませんが、海外でも研究されており、英語では「smiling depression」といいます。
これは簡単にいえば、うつ病や適応障害の軽症か中等症の状態にあたります。(「はじめに」より)
笑顔うつは初期段階では異変の兆候がないため、甘えや性格の問題を片づけられがち。“笑顔の仮面”をつけて社会生活をなんとかやっていけられるからこそ、なかなかサポートが受けられず、つらい症状が悪化しやすいということ。そこで本書では、言語化しにくい笑顔うつについてわかりやすく解説しているわけです。
いずれにしても重要なのは、自分の状態を自覚し、それを克服するためのアクションを起こすことであるはず。そこで第6章「エネルギーをためて『うつうつ島』から抜け出そう!」のなかから、いくつかのポイントを抜き出してみたいと思います。
「もしかして?」と疑う
笑顔うつになる人には、調子の悪さが慢性化していて自覚できない人と、調子の悪さを自覚してはいるものの、それを認めたくない人がいるのだそうです。しかし、笑顔うつから抜け出すための第一歩は、そうした心身の不調を受け入れること。他の病気と同じように、心身の調子の悪さを早い段階で受け入れられる人ほど、病気の早期発見と改善につながるわけです。
著者のもとを訪れる患者さんも同じで、「自分は病気だ」と認識している人は治療成果が出やすくなるもの。そういった人を「病識がある」人というのだとか。病識とは、「自分は病気である」とはっきり認識できている状態。そのため治療に前向きで、「治そう」という意志が働くわけです。
では、不調を感じて精神科や心療内科を訪れる人は、実際にどんな話をしているのでしょうか? 著者によれば、患者さんの主訴(いちばん悩んでいることやいちばん訴えたいこと)で多いのは次のようなことだといいます。
・職場の上司や家族、パートナーとの人間関係
・仕事が合わない・仕事量が多くてしんどいなどの仕事関係
・不眠や食欲不振、体が重くてなにもする気になれないなどの体調関係
・まわりに相談できる人がいない、相談したけど理解してもらえないという無理解に関する悩み(189〜190ページより)
内容はさまざまで、なかには上司や友だちだけでなく、家族にすらも明かせない悩みを話してくる人もいるようです。また、些細なことであっても、医師からすれば「それは大変だったね」「もっと早く話してくれればよかったのに」と感じるケースもたくさんあるといいます。
だからこそ、しんどいときは「もしかして病気かな?」という意識を持ちつつ、早めに悩みを相談するべきなのです。(186ページより)
「信頼できる人」を見つける
では、頼れる人や相談できる相手がいなかったり、つらいことを伝えても解決につながらない場合は? そんなときには、2つの手段があるそうです。
頼れる人がいない場合1:クリニックで相談する
まず最初は、医師に相談し、自分の悩みや心身の状態について一緒に考えてみること。そうすると気持ちがラクになり、状況が好転することもあるということです。
「ちょっと不安があるだけで受診したら、医師から『なんで来たの?』と言われそうで心配」と思うかもしれませんが、多くの医師はそんなことは言いません。安心してください。
わたし個人の意見としては、社会生活に支障が出ている気がしたときは受診してほしいです。取り越し苦労に終わって「よかった」とホッとする場合もありますし、「別の病気かもしれない」と疑うこともできます。(224ページより)
心身の不調のため仕事で一定期間の休みをもらいたいという場合は、それを医師に伝えることも大切。
医師が「休養が必要」と判断した場合には診断書を書いてもらえるそうです(業務との因果関係がない一般的な病気やケガは傷病休職になり、一定の期間、傷病手当が支給されるようです)。
頼れる人がいない場合2:産業医に相談する
会社に契約している産業医がいれば、相談してみるのもひとつの手段。産業医の仕事は社員の健康の維持と増進をすることなので、必要な場合は会社に意見もしてくれるのです。
上司や相談窓口に相談しても解決されない場合は、産業医に相談して、産業医から休むことや勤務形態の変更を伝えてもらうのもいいでしょう。
産業医にはそれなりの発言権があるので、多くの場合意見は適用されます。
また、産業医から伝えてもらったほうが、「どうやって話せば会社に理解してもらえるかな」と悩む必要もありません。(226ページより)
職場の人に病気のことを知られたくない場合も、産業医に話すべき。そうした思いを、産業医は尊重してくれる可能性があるからです。(222ページより)
自分の心と体に起きていることがわかるだけでも、不安は解消すると著者はいいます。そんな思いを軸に書かれた本書は、ムリに笑顔をつくらなくてすむ心地よい日常を実現してくれるかもしれません。
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