三井物産株式会社でプロジェクト本部の人事総務室長として、人事戦略の企画・立案・実行を担当する阪井大雪(さかい・だいせつ)さん。
日々、多様性と現場目線を強く意識して仕事に取り組んでいるという阪井さんに、三井物産の中でもユニークな本部である同本部で働く醍醐味について伺いました。
競争力の源泉は人。─1700名の仲間と共に

世界中の人々の豊かな未来をインフラからつくる
プロジェクト本部は、「世界中の人々の豊かな未来をインフラからつくる」をミッションに掲げ、世界中の経済や社会の発展と、より良い地球環境づくりに必要なインフラを提供しています。
アジア、中東・アフリカ・ユーラシア、北米・中南米、大洋州・欧州そして日本と、地域ごとに5つの事業部に分かれ、各地域のインフラ開発・事業管理を行なっています。
と阪井さん。
プロジェクト本部が担うのは、電力、資源インフラ、物流インフラ、社会環境インフラなどの事業領域。再生可能エネルギー発電やガスパイプライン、デジタルインフラなど、プロジェクトの内容は多岐にわたります。
プロジェクト本部は、三井物産の事業本部の中でも商品名が部署の名前に入っていないユニークな組織の一つです。
現在、事業本部の収益基盤の一つとなっているのが発電事業。一方で、脱炭素化の流れを受け、資産ポートフォリオの入替えを積極的に進めており、洋上風力・太陽光発電などの再生可能エネルギーの事業開発にも注力しています。
また、オイル&ガスセクターのLNGプラントや洋上生産設備では、他本部とも連携しながら、DXを活用したインフラの価値向上も進めているところです。
組織を支える「多彩な人材」が競争力の源泉
インフラ事業はステークホルダーも多く、開発期間が長く、案件の規模も大きいのが特徴。
プロジェクト本部では、これらのインフラ事業を通じた人々のより良い暮らしづくりの実現に向け、高い視座と志を共有する多彩なメンバーが集まり、日々活躍していると言います。
ホスト国をはじめとする多くのステークホルダーとの対話を通じて、関係者をまとめ上げながらプロジェクトを進めています。
皆、インフラ事業を通じたさまざまな地域の国づくりに対して、熱い想いを持って日々切磋琢磨しています。
プロジェクト本部に在籍しているのは、本店採用の社員が約420名と、海外採用の約80名を加えた500名。さらに、関係会社で働く約1200名を合わせた約1700名の仲間がグローバルに活躍しています。
所属するメンバーは、入社時から事業本部にいる人のみならず、他部門から異動してきた人、そしてキャリア入社の人などその経歴もさまざま。
ダイバーシティという言葉が浸透する20年以上も前から多様な人材を受け入れ、仲間で知恵を出し合い、試行錯誤しながら成長してきた多様性のある組織であり、この組織を支える人材が競争力の源泉となっていると思います。
阪井さんは、2022年4月から人事総務室長として、新人・キャリア採用、人材育成、人事戦略の企画・立案・実行を担当。プロジェクト本部で働く魅力についてこう話します。
インフラ事業は開発や推進の難易度が高い一方で、きわめて社会貢献度が高い。
社会課題の解決や中長期的な目線での国づくりに貢献できる使命感・責任感を持って取り組めるところに、醍醐味やワクワク感があると思います。
多様性のある組織だからこそできること─成長の糧となる現場経験とサポート体制
多様な経験を持ったメンバーが集まった組織
多様性のある組織であるプロジェクト本部。この本部のメンバーは、必ずしも入社当時のメンバーばかりではないのが組織の特徴とのこと。
実際、阪井さんが最初に配属されたのは法務部。海外投資事業の法務や知的財産法務担当としてキャリアをスタートさせましたが、社内公募の若手海外派遣制度である修業生制度を経て、営業部門に転出。その時のことをこう話します。
法務部では、主に当社の海外事業投資案件や物流ビジネスにおける稟議審査や契約書の作成や交渉を担当。稟議書や契約などを通じてビジネスの基本を徹底的に学ぶことができ貴重な経験をすることができました。
その一方で、日々営業部門の契約書のチェックをするのではなく、自分で案件をつくり自分でゼロから契約書をつくってみたいと思うようになりました。
そこで、入社3年目に一念発起して海外修業生制度に応募。当時成長著しい中国で語学と実務研修を行ない、あらためて営業部門で自ら案件をつくりたいと思い、営業部門への帰任を希望したのです。
帰国後、プロジェクト本部の前身であった部署に配属、念願の営業部門に転出されます。
そしてLNGプラントや石油化学プラントの営業を担当。未経験にもかかわらず、多様性の高い組織文化の中で、経験の幅を拡げていったのです。
入社5年目で本格的に営業デビューとなり、当初はわからないことだらけでした。
しかし、プロジェクト本部では、そこに長く在籍するメンバーと平等に機会が与えられ、多くの案件と経験豊富な先輩や仲間と一緒に仕事をすることができました。
他本部からの異動者やキャリア入社の方々にも成長の機会が与えられる文化が根付いており、スキル(Skill)や経験よりも与えられた機会において、どれだけ想い(Will)を持って仕事するかが重視されると思います。
志を同じくする先輩や仲間と共に、互いの技術や知識を生かしながら案件を開発していける環境があるのはプロジェクト本部の大きな魅力だと思います。
現場や若手もチャレンジできる風土がある
機会のみならず、現場や若手に積極的に裁量権が与えられるのも三井物産の特徴です。
当時まだ30代になったばかりでしたが、新興国のインフラ案件を主担当者として受注。
現場の若手が三井物産を代表してホスト国、国営石油会社、電力会社との対話を行なうことに当初は驚きましたが、ときに冷や汗をかきながら交渉に臨み、現場で走り回った経験は今に生きていると思います。
サウジアラビア、UAEでの海外駐在を経て帰国し、その後、IPP電力事業や石油化学プラント案件などでプロジェクトマネジャーを担当。担当する事業分野や業務内容も変化していったと話します。
プロジェクトの案件規模が大きくなればなるほど、ステークホルダーの数も増えていきます。
ときに利害が対立し、利益が相反する関係者をまとめ上げるためには徹底したコミュニケーションやチーム内での連携が不可欠。常に気づきや学びがあると実感しています。
研修を刷新し、働き方改革にも着手─より良い職場、ワークライフバランス実現のために

気軽に相談できる「1on1」実施
2022年4月からは営業の現場を離れているという阪井さんですが、人事総務室長として本部内のメンバーと接する上で大切にしていることがあると言います。
自分も営業部門に配属になったときは不安が大きかったこともあり、現場目線を忘れないようにしています。また、若手やキャリア入社の皆さんの気持ちに寄り添うよう心がけています。
若手のころに自分が書いたノートを時折引っ張り出しては、未経験で営業の現場に飛び込んだときや経験不足から苦労していたときの自分と重ね合わせ、「今こんな不安を抱えているのではないだろうか」と想像しながら対応を考えることもあります。
組織づくりの面では、気軽に相談できる組織風土の醸成と、本部員との直接の1on1に努めているそう。
私のスケジュールを全員に公開し「空いているところがあれば自由に1on1の予定を入れてください」と伝えています。また、会議室のブラインドも極力閉め切らずにオープンな空間にしています。
事前準備やフォローも含めると1on1は時間を要するので、私のスケジュールは空きがほとんどなくなってしまうこともあり、一部の方からはスケジュール調整が大変と不評ですが(笑)。
会社生活も長くなると自分だけではどうにもできないことの多さに気づいたり、あのころ自分も人にもっと相談すれば良かったと思うこともあったりしたので、気軽に相談できる手段の一つとして1on1の実施は注力したいと思っています。
注力している2つの研修プログラム
それと並行して、研修の刷新にも取り組んできたという阪井さん。中でも特に注力しているのが、現場を意識した研修プログラム。
コロナ禍で現場に行けない若手やキャリア入社の方が増え、プログラムを見直したことをきっかけに、できるだけ現場を自分の目で見てもらう現場研修を増やしました。
私自身が法務部担当だったころに、契約書の背景にある実際のプロジェクトの現場を見てみたいと強く思ったこともあります。実際の現場を見た上で仕事をすることでより良い動機付けと高いパフォーマンスの発揮が期待できると思っています。
実際の研修では視察して終わりではありません。パートナー企業の方に、実際のインフラの現場での課題や工夫など、現場にある暗黙知の共有や実際の現場の実情を直接お話しいただくことで、今後インフラ事業の現場を担う方々に肌感覚を持ってもらうように意識しています。
直近では当社が保有する北海道の社有林、社有林材を燃料の一部に使用しているバイオマス発電所、CO2の回収・貯蓄をするCCS施設の見学を通じプロジェクトの理解を深める研修を実施しました。
さらに、心理的安全性を高める研修プログラムにも特段のこだわりがあると言います。
アウトドア研修を取り入れています。自然の中での焚き火を囲みながら自己開示や相互理解を深めるプログラムですが、営業部にいた3年ほど前からこの研修を現場導入してきました。
インフラプロジェクトの仕事にはチームワークが欠かせません。また一人で抱え込んでも解決できない課題にも直面することもあります。
The Bad News firstではありませんが、何か問題が起きたときにすぐ打ち手を行ない、影響を最小化する必要があります。
そのためにも、ちょっとした気づきや課題を気軽に仲間と共有できるような組織をめざし、普段からコミュニケーションを大事にしています。
そして、阪井さんがもっとも比重を置いているというのが、働きやすい職場づくり。ワークライフバランスに向けた取り組みです。
これまで担当地域によっては時差があるため、どうしても労働時間が不規則になりがちでしたが、リモートワークの活用や効率的なタイムマネジメントによって限られた時間の中でも同じ成果を出せるような働き方の実現をめざしてきました。
より働きやすい組織のために
女性活躍やワークライフバランスにも特に気を配っていると話します。
実際に育児休暇から復職したメンバーが、育児や復職に関するお役立ち情報『パパママ応援資料』を本部内に展開。
スムーズな復職や男性の育休取得を後押ししたり、介護が必要な家族がいる方、健康状態に問題を抱えている方でも働きやすいような環境づくりに努めてきたりしました。
ほかにも、Diversity & Inclusionイベントの推進、ストレスマネジメント、睡眠改善、健康管理等、本部員向けのWell-beingの取り組みも大事にしているという阪井さん。
こうした一連の取り組みが実を結びつつある今こそ、組織が変わるチャンスだと言います。
本部員のメンバーが雑談する場面を見かける機会が多くなったと感じています。
コロナ禍が明けて出社する人数が増え、社内に活気が戻ってきたこのタイミングにふさわしい新たな施策を打ち出すことで、より働きやすくパフォーマンスを最大限発揮できる組織にしていけたらと考えています。
求めるのは、想いを持った人材─キャリア採用を通じた多様性のさらなる向上をめざして

SkillよりもWillを大事にしたい
インフラ事業の推進を通じて豊かな未来の実現をめざすプロジェクト本部が、これまで以上に高い成果を上げ、新たな価値を創出していくために必要なのが、志を同じくする仲間。
キャリア採用プロセスを通じてより多様性を高めることが競争力につながると言います。
私たちが求めるのは想いを持ったメンバー。SkillよりもWillを大事にしたいと思います。
知識や技術はあとから身につけられると考えているので、人々のより良い暮らしづくりに貢献したいという想いをひとつ持って来ていただけたらと思います。
実際、プロジェクト本部には課長クラスの室長ポジションが17ありますが、そのうち5人はキャリア入社の方です。前職は同業種だけでなく、保険会社、テレビ局など、さまざまなバックグラウンドを持った方が活躍しています。
当社でのキャリア年数に関わらず、Willを持った仲間にフェアに機会が与えられ、周囲からの信頼を得て、活躍している証です。
多様な経歴を持つ6人の本部員の多様なキャリアストーリーはこちらをご覧ください。現場で働くさまざまなメンバーがそれぞれの想いや夢、仕事の醍醐味などを語っています。
求めているのは、多様性
商社パーソンというと画一的なイメージを持たれがちですが、実際は異なり、プロジェクト本部がいま求めているのは、多様性。
VUCAの時代を生き抜いていくためには、性別や年齢、国籍、経歴、価値観など異なる属性を持つ多様性ある人材が欠かせません。今後キャリア採用を通じていろいろな方に仲間に入ってもらい、刺激を与えてもらいながら組織が強くなっていければと考えています。
業務に関する知識や技術を身につけ、当社特有の仕事の進め方や社内外のネットワークなどを理解し、自分のものにしていくためのサポート体制も万全です。これまでの経験や知見、人脈を生かして、ケミストリーが生み出されることを期待しています。
今後は、人を中心に置いた組織づくりをますます強化していきたいと話す阪井さん。プロジェクト本部の将来をこう展望します。
人材こそが競争力の源泉との考えから、本部長自身が就任当初から旗振り役となり、人材中心のマネジメントスタイルを打ち出してきました。これからもその方針をさらに強化していきたいと考えています。
グローバルのメンバーを含む1700名のプロジェクト本部全体を視野に入れながら、まずは本店のメンバーにD&Iを浸透させ、さらに多様な人材が活躍し、それぞれの価値観を認めて新しい価値を生み出す組織にしていきたいですね。
※記載内容は2023年7月時点のものです。
Image/Source: talentbook, 三井物産株式会社