何年か会社員をやっていると、「独立、しようかな…」と考える人もいるでしょう。自分の仕事に自信が出てきて、独り立ちしてもっとやりたいことに集中してみたい、と考えるのは夢がふくらむことです。

私は30歳で独立し何年かフリーランスで過ごし、今は株式会社にしています。実は、当初は独立するつもりがなかったので、巻き込まれたような感じでした。会社がつぶれた場合など、いきなり独立開業を余儀なくされるような人もいます。

「どんな仕事で独立するか」とか「クライアント獲得の見込みはあるか」「売上のあてはどうか」といった、独立にあたって考えなければいけないことはたくさんありますが、考えをあと回しにしがちなテーマに、税金や社会保険料の仕組みがあります。

「独立しようかな」と考えたら知っておきたい税金と社会保険料の仕組み

会社員はたいていの場合、自分のお金まわりの手続きをしません。会社の総務部が税と社会保険料の計算から納付まで代わりにやってくれているからです。

しかし、独立開業するなら、税金や社会保険料のことも自分で考えなければいけません。今回は絶対に知っておきたいポイントをまとめてみます。

まず、個人でやるか会社としてやるかを決める

最初の分岐点であり、その後の手続きにも大きく影響してくるのが、まずは「個人事業主」としてやっていくのか「株式会社」をつくるところまで最初から行なうのかです。

ビジネスの規模が大きく、最初から何人か雇ってオフィスも借りるようなら、いきなり株式会社をつくってスタートすることが考えられます。

一方で、準備の負担は大きくなります。法人の登記はちょっと大変ですし、会社の銀行口座をつくったりもしなければなりません。数百万円から数千万円の資金調達もスタート時点で必要になるでしょう。

フリーランスの多くは、個人事業主として登録している人たちです。ほとんどの場合は自宅を事務所とし、個人事業主として開業したことを税務署都道府県税事務所市区町村に届け出します。これにより、個人事業主として税金の手続きをすることになります。

個人事業主としてしばらくやってみて、事業が軌道に乗ったら株式会社化するというのもよくあるパターンです。

個人事業主でも株式会社でも、社員やバイトを雇うことはできますので(人を雇うときは、労災保険・雇用保険への加入など、追加の手続きが必要になります)、悩んだら個人事業主でスタートしてみるといいでしょう。

それではここから、原則として個人事業主について説明をします。

フリーランス、自分で管理・納付すべき税金は?

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所得税住民税についてはもちろん、個人として払うことになります。会社員のときはほとんど手続き不要でしたが(会社が代わりに計算・徴収・精算・手続きをしてくれていたため)、独立したあとは自分で手続きをします。

昨年1月から12月の収入をチェックし確定申告を行ない、これにもとづいて所得税や住民税の納税をしていきます。

個人事業主というのはある意味、公私の財布がごっちゃになっている状態で、年間の収支を精算し、税金を納めます。簡略化していえば「年間売上−経費=利益」になる分を確定させて、所得税や住民税の計算に回すわけです。

確定申告のとき、青色申告(きちんとした帳簿をつけて書類を作成する)をすると非課税枠が増えるので、税理士あるいは記帳のためのクラウドサービスの契約を考えておくといいでしょう。

個人事業税や消費税を納める必要もある

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また、個人の所得税や住民税だけでなく、仕事にかかる税金が発生することがあります。法定された70種の業務については個人事業税*1を納める必要があります。たとえば料理店業は第一種事業として5%の税率、というように決まっています(ちなみに、執筆・著述業、いわゆるライターは70業種の具体的な列挙に含まれないので、個人事業税の対象外となっています)。

また、消費税についても精算・納付する必要が生じます。課税売上高から課税仕入高を引いた分に消費税率を掛けます(仕入れた分は仕入れ先が消費税を納める担当になるので、売上全額に消費税を払うわけではない)。

とはいえ、2年前の課税売上高(税抜き)が1000万円超かどうかを見るので、開業後にいきなり消費税を納める心配はありません(2023年10月からスタートするインボイス制度については、本稿では割愛させていただきます)。

なお、税金の未納は延滞税もかかりますし、いいことがありません。一時的に延納を申し出ることは可能ですが結局納付せざるを得ませんので、売上が上がったときはきちんとお金を残しておきましょう。

参考:*1. 東京都主税局 個人事業税

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社会保険料の負担・納付はどれくらいになる?
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