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『勉強が一番、簡単でした 読んだら誰でも勉強したくなる奇跡の物語』(チャン・スンス 著、吉川 南 訳、ダイヤモンド社)の著者は、ソウル大学に首席合格したという実績の持ち主。とはいえ、貧しい家庭環境に育ったため大学進学を早くに放棄したというだけあって、そこに行き着くまでの道のりは決して楽ではなかったようです。
荒れた生活を送っていた10代を経て、勉学への情熱が燃え上がったのは20歳のとき。その時点で大学受験を決意し、生き方を一変させたのでした。しかし、パワーショベル助手、ゲームセンター店員、プロパンガスとおしぼりの配達員、タクシー運転手、工事現場の日雇い労働者などの職業を転々としながら、数年にわたって受験に臨むもすべて失敗。
それでも夢を諦めずに独自の勉強法を編み出し、4回目の挑戦でついにソウル大学に首席合格したのです。さらに2003年には司法試験にも合格し、現在は弁護士として活動しているのだそう。まるで韓国ドラマに出てきそうな話ですが、つまり本書はそうした実体験をつづったもの。そして韓国において、本書は70万部のベストセラーになったといいます。
誰でも自分が望む人生を生きたいと思っているはずだ。(中略)自分の望みを追い求める権利は誰にでもある。
私は意地になった。自分の人生を制約している条件を、拒否することにしたのだ。この5年間は、こうしたことと闘う時間だった。最大の障害は、まさに私自身の限界、私が持って生まれた悪条件だった。つまり、私が越えるべき一番高い山は「私自身」だったのだ。(「プロローグ」より)
過酷な条件を乗り越えてきたとはいえ、著者は自分のことを「特別に強い人間」ではないと述べています。ただ、やりたいことがあり、それに没頭しただけだというのです。「誰にでも、自分が望む人生を生きる権利がある」と断言できるのは、そうした思いを軸とした努力があってこそなのでしょう。
そんな本書の1「勉強が一番、簡単でした」のなかから、「勉強は道具を使わず、頭のなかでやる」に焦点を当ててみたいと思います。
ノートと鉛筆は使わない
著者の勉強スタイルは、「ほとんど手を動かさない」というちょっと変わったもの。一般的に、暗記や理解をする際には、ノートにメモをしたりするのではないかと思います。ところが、なにも書かないというのです。数学の問題も暗算で解くことが多く、それ以外の科目はノートと鉛筆をほとんど使わないそう。
参考書を読むときも、本を両手で持って30cm以上離して立て、本に戦いでも挑むように活字をにらみ付ける。
英単語や歴史の年代を暗記するときも、ノートに書かない。地学で習う複雑な天球図や惑星の軌道も、手で図を描いたりするより、黙って座ったまま頭のなかに図を描いて理解するように努める。(26ページより)
もしかしたら、「それは頭がいいからできることだろう」と思われるかもしれません。が、著者はそれを否定しています。自分が鉛筆を使わずに勉強するようになったのは、文字を追いながら手を動かすという2つのことを同時にできないからにすぎないのだと。
書くことに神経を使っていると気持ちがそちらに奪われてしまうため、自分がなにを勉強しているのかさえ忘れてしまったりするもの。そこで、ひたすら読むことに集中するために書くのをやめたというわけです。(26ページより)
頭だけで勉強することの利点
頭のなかで何度もつぶやいてなにかを覚えるのは、いかにも非効率的であるようにも思えます。けれども、少し慣れれば書いて覚えるのと効率的に大きな差はないのだといいます。
つまり、慣れの問題なのだ。さらに頭のなかだけで暗記するのを習慣づけると、スピード的にかなり有利になる。いくら鉛筆を早く動かしても、頭で考えるよりも早くはならないからだ。
頭だけで勉強することの利点はさらにいくつかあるが、そのひとつは、もっと勉強に集中できるという点だ。教科書を読んでいて気が散るのは、意識に一瞬の隙ができるせいだが、単語をひとつ覚えるにも、ずっと頭のなかで単語をつぶやいていれば気が散る暇はなくなる。(27ページより)
そういう手段を用いることによって脳が刺激されるということ。そして忘れるべきでないのは、それがかなり頭の訓練になるということだそうです。(27ページより)
脳を使えば頭がよくなる
頭は使えば使うほどよくなり、逆に、使わなければそれだけ固くなるもの。それは、自分の経験からもすぐにわかることだと著者は述べています。
いつかテレビを見ていたら、80歳を越える老詩人が健康の秘訣を語っていた。その詩人は朝起きると、まず朝鮮半島の山を白頭山[中朝国境に位置する朝鮮半島の最高峰]に始まり高い順に数百個も唱えるのだという。いまも旺盛な創作活動が可能なのは、こうした頭の訓練のたまものだろう。(28ページより)
世界的な物理学者スティーヴン・ホーキング博士は、解を書くのに大学ノート1冊分が必要な数学の問題を暗算で難なく解いたという。一般的にはとても想像できないことだ。もちろん、並外れた知能を持って生まれた博士だからこそ可能なことだと見ることもできるだろう。
だが、私はそうは思わない。(28ページより)
若いころにボートの選手だったというホーキング博士が、難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)にかかってしまったのは有名な話。その結果、四肢をピクリとも動かせない状態になってしまったわけです。
その結果、彼は体のうちで脳しか使うことができなくなり、そのため人よりたくさん脳を使った。だからこそ、頭がよくなったのではないか。著者はそう考えているというのです。
その推論がどこまで正しいかをはっきり示すことは、決して簡単ではないかもしれません。しかしそれでも、脳を使えば頭がよくなることは否定できないのではないでしょうか。(28ページより)
本書で明らかにされている著者の思いや行動が説得力を感じさせるのは、その根底に過酷な学歴社会を努力によって生き抜いてきた実績があるからこそ。
さまざまな受験を勝ち抜くためのテキストとして活用できるだけでなく、「生き方」を学ぶこともできる本書の内容は、多くの方の心に届くことでしょう。
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