人が育った環境は、その人が健全な対人関係を維持できるかどうかに影響します。この厄介な問題は、あらゆるセルフヘルプやメンタルヘルス的な取り組みで扱われています。

最近は、「アタッチメント(愛着)理論」に関連して耳にすることが多いのではないでしょうか。アタッチメント理論は決して目新しいものではありませんが、人間関係を分析・定義する方法として、注目を集めるようになっています。

ライターのJenna Birch氏は、ワシントン・ポスト紙の連載「Solo-ish」に寄せたコラムの中で、恋人と別れた直後に『異性の心を上手に透視する方法』(著:アミール・レバイン、レイチェル・ヘラー/邦訳:プレジデント社)という本を読み、恋愛観が変わったと語っています。

この本のベースにあるのは、次のような考えです。

どんな子どもにも、誰かに愛着を感じたいという欲求が生まれつき備わっています。そしてその欲求が、親によってどのように受け入れられるか(あるいは退けられるか)が、大人になってからの他者に対する愛着の抱き方(あるいは避け方)を決定する要因となります。

アタッチメントの4つのタイプ

アタッチメント理論が人気を集めている理由は明らかです。自分自身のことがわかるテストが用意されているからです。

この本では、アタッチメントには主に4つのタイプがあるとされています。どのタイプに当てはまるかで、人間関係に対するあなたのアプローチを説明できる可能性があるというのです。4つのタイプは以下の通りです。

  • 安定型:幸いなことに、全人口の約50%を「安定型」の人が占めると言われています。あなたが安定型なら、生育過程で自分の要求に応じてくれる人に恵まれ、「人と離れることは怖いことではない」と思わせてくれる人に恵まれたということです。安定型の人は親密な関係を回避せず、恋愛関係にさほど不安を抱きません。おそらく人間関係でそこまでひどい体験をしていないからでしょう。
  • 不安型:本によれば、全人口の約20%を「不安型」の人が占めています。不安型の人たちは、親密な関係に心地よさを感じます。その関係性があまりに心地よいため、恋人の膝の上に乗っているとき、相手がリモコンを取るために離れようものなら、もう自分を愛してくれなくなったのかと不安になるのです。このタイプが必要とするのは、大きな安心です。それはおそらく、生育過程で自分の求めに応えてくれる人に恵まれなかったからでしょう。また彼らはとても敏感で、問題が生じると鋭く察知します。
  • 回避型:このタイプは「距離を置く人」に育てられた影響で、独立心が非常に強く、総じて親密な関係性が苦手な人たちとされます。本によれば、全人口の約25%を「回避型」が占めています。大学生の頃に付き合った相手は、このタイプばかりだったという人もいるのではないでしょうか。
  • 無秩序型全人口の約5%を占める「無秩序型」は、複数のアタッチメント・タイプが混ざった、スリル満点タイプ。まさに「愛のジェットコースター」です(「怖がり型」や「不安と回避(の両方)」と呼ばれることもあります)。

アタッチメント理論の限界

アタッチメント理論には、多くの批判もあります。タイプが4つしかないため、人間が持つさまざまな傾向を網羅しているとは思えないからです。

2016年には、心理学者でセックス・セラピストのMichael Aaron氏が「Psychology Today」に寄せた記事の中で、アタッチメント理論はあまりにも短絡的すぎると述べています。

この理論ではアタッチメントについて、人間関係のあらゆることに当てはめることができる、ある種の一貫した図式だと仮定しているようです。

しかし最近の研究から、人間は異なる相手に異なる形で愛着を持ちうることがわかっています。実際、子どもが母親には安定型、父親には回避型、叔母には不安型といった具合に、愛着の持ち方が異なる場合があります。

さらにAaron氏は、この理論が「ノーマル」な関係という特定の考えに人々を従わせる手段として使われている、とも述べています。「対人的および性的な願望に対して、恣意的で道徳的な社会規範」を押しつけているというのです。

これは興味深い指摘です。たとえば、1対1だけが健全な恋愛関係なのでしょうか? 「ノーマル」な関係に落ち着きたくないという人は、おかしいのでしょうか?

アタッチメント理論は暗黙のうちに、「誰もが目指すべき道は1つしかない。それを目指さないとしたら、(恋愛や親密な関係に対して、よりオープンなアプローチをとっているから、というよりは)その人の生育過程に問題があるからだ」と主張しているように思えます。

アタッチメント理論はどう役に立つのか?

とはいえ、自分の傾向を大まかにでも把握しておくことは、役に立つガイドとなる可能性があります。たとえ、自分が分類されるアタッチメント・タイプが気に入らなかったとしても。

そもそも、たいていの人はさまざまな行動をとる多面的な存在です。いずれのアタッチメント・タイプについても、それを本質的にネガティブなものとは捉えないほうがいいでしょう。

たとえば不安型の人の場合、ほかのタイプよりもいち早く問題を察知し、それらに対処できる可能性があるということです。回避型の人なら、厄介な問題から抜け出すのがうまいかもしれませんし、また、あまり多くを望まずに済むでしょう。

要するに、あなたの特性に最も合うのはどんな相手か、ということを教えてくれる理論なのです。

Birch氏の場合、自身が不安型であることを知ったおかげで、安定型の人と付き合ったほうがベターであると自覚できました。愛情を求める彼女に対して、距離をとったり軽蔑したりといった反応をしないタイプの人です。

不安型同士でも付き合うことはできますが、ときには安定型の人と付き合ってみると、あなた自身もより安定する可能性があります。安定した人と一緒にいる過程で学ぶからです。たとえうまくいかなくても、次に誰かと付き合うための学びとなるでしょう。

Birch氏によると、ジャーナリストで『The Attachment Effect: Exploring the Powerful Ways Our Earliest Bond Shapes Our Relationships and Lives』の著者であるPeter Lovenheim氏も、アタッチメントのタイプがわかれば、なぜうまくいった関係もあれば、うまくいかなかった関係もあるのか、その理由がはっきりする可能性があると述べています。

自分のアタッチメント・タイプを知ることは、大きな力になります。自覚がないまま不安型として生きていくのは大変です。

たとえば、恋愛関係に生じる対立や不満の意味が理解できないでしょう。けれどもアタッチメント・タイプを知ると、何かに心を刺激されたとき、「これは私のアタッチメント・タイプのせいだ」と考えられるようになります。

さらには、「そのように反応する必要はない」と考えて、行動を変えることもできます。

Lovenheim氏やアタッチメント理論の動きは、過去がどうであろうと、自分の行動を振り返って、自分の力で変えられることはないか考えてみよう、と人々に呼びかけているのではないでしょうか。

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Source: The Washington Post, Amazon(1,2),web-research-design.net,

Psychology Today,

Aime Lutkin - Lifehacker US[原文