ChatGPTをはじめとした生成AIツールの普及で、ビジネスパーソンに求められるスキルにも変化が起きはじめています。時代に取り残されないために、私たちは何を学び、どんなスキルを身につけていけばいいのか?
Udemyグローバリゼーション&モバイルエンジニアリング部門責任者のカーティック・アイヤパン・グナセカラン氏に、生成AI時代に求められるスキルと学びの重要性についてお聞きしました。
生成AIで9700万人分の新たな仕事が生まれる
——生成AIが普及しつつある今、ビジネスパーソンには何が求められているのでしょうか?
これからは、同じことを繰り返すような単純な作業の多くを生成AIに任せ、人間はよりクリエイティブな仕事を行なうようになると思います。
まずは生成AIが自分の仕事にどう活用できるのかを知ることが必要です。プロンプトエンジニアリングを学ぶことは、そのためのよいスタートになるはずです。
——具体的に、私たちの仕事はどう変わっていくのですか?
生成AIによって仕事が奪われるといわれますが、それは誤解です。「世界経済フォーラム」World Economic Forumのデータによると、生成AIによって8500万人の職が失われると同時に9700万人分の新しい仕事が作られていくとされています。
データの入力などの単調な事務作業を担っていた人ならば、データサイエンティストやデータアナリストを目指せるかもしれません。
また、企業側は、生成AIの普及によって新たに生み出される仕事を見極め、その仕事のために必要なスキルを従業員が身につけられるようにすることが求められます。

——それでも、「AIに自分の仕事を奪われる」ことを心配している人が多いようです。AIと上手に共存していくためにはどんな考え方が必要ですか?
たとえば生成AIで新しいコンテンツを作ることはできますが、そのためにはまずプロンプトが必要です。つまり、使う側の人間が行動を起こさなければ、AIは働かないのです。
だからこそ、私たちはAIをどうコントロールし、どう使うかを学ぶべきだと思います。AIをどう使うのか、どこで使うかを決めるのは人間です。働く人たちに力を与え、問題に対するよりよい対応を見つけるためにはどう活用するかを考えることが重要です。
学ぶモチベーションの高い人には、明るい未来がある
——これを機に、これからの時代により必要とされる仕事にシフトしたいと考えている人は、何をするべきでしょうか?
新たなスキルを身につけて先に進むためには、AIプログラミングやAIに関するテクノロジーを学び続けることが重要です。学んでいくモチベーションの高い方にはとても明るい未来が待っています。
たとえば10年前にはデータサイエンティストという職業はありませんでしたが、今はとても需要が高く、高い収入が得られる仕事になっています。これは、今世界で起きている新しい可能性であり、新しい変革です。業界にとっても個人の生活にとってもゲームチェンジャーとなるでしょう。
——逆に、自分の仕事が生成AIに置き換えられる可能性があるにも関わらず、次の目標が定まっていない人はどうすればよいでしょう?
今の仕事をAIで改善する方法を考えてみるとよいかもしれません。たとえば、Excelにデータを登録する作業をしている人で、1時間に5シート分の作業を行なっているなら、AIを使うことでそれを100シートに増やせるかもしれません。
今の仕事がAIで効率化されると、AIをパートナーだと思えるようになり、AIについてもっと学んでいこうという意欲も高まると思います。
——それでも、生成AIを積極的に使おうとしない人もいるように思います。その人たちにはどんなことを伝えたいですか?
歴史を見ればわかるとおり、新しい技術が出てきたときには、それを取り入れることが非常に重要です。新たなテクノロジーを取り入れなければ取り残されてしまいますし、変化もできません。
日本の多くの人たちはAIに対して非常にポジティブなイメージを抱いています。たとえば、野村総合研究所の調査結果では、46.2%はAIがビジネスの効率と生産性を向上させると考え、21.4%がAIが新しい雇用を創出すると答えています。また、15%がよりよい社会を作ると答えています。
生成AIを使うことに抵抗のある人には、このようなAIに対するポジティブなイメージを知ってもらうことが重要です。私たちは取り残されたくありませんし、AIを恐れる必要もありません。新しい技術を受け入れ、より明るい未来に向けて歩んでいけるのです。
学ぶことは人間の遺伝子に組み込まれている
——生成AIの登場以降、Udemyで学ぶ人のニーズに変化は起きていますか?
たしかに変化しています。Udemyが四半期ごとに発表しているグローバル・ワークプレイス・ラーニングインデックスからは、2023年第1四半期と比較して、6月末時点で、ChatGPTに関連したコースは386%増、生成AIに関するコースは278%増、プロンプト・エンジニアリング関連コースは190%増と世界的に大きな成長が見られます。
また、ChatGPT関連のコースには世界で約140万人、日本だけでも約7万人の人が登録しています。
生成AIのスキルはあらゆる業界にとって欠かせないものとなるため、これから先もより多くの生成AIのコースが開発されていくと思います。
今後はよりよい学びをサポートするために、自分にとって最適なコースをAIが提案したり、進捗をサポートしたりする機能や、AIとインタラクションを取りながら学んでいける機能も追加していきたいと考えています。
——日本の読者に向けて、学ぶことの楽しさや魅力についてメッセージをお願いします。
人間にとって、「学ぶ」ということは遺伝子に組み込まれたものだと思っています。人類は学ぶことによって進化し、発展してきました。
たとえば石をたたいて火を起こすことや、狩りの方法を学ぶこと、車輪の作り方を学ぶこともそうでしょう。
人類の進化におけるすべての段階で、進化の分岐点は、学びによってもたらされています。この学びをこれからも継続していくことが非常に重要です。
日本の文化では、あらゆることを学び、さらに特定の分野を深く学ぶことが根付いていると感じます。また、日本の方たちは仕事にとてもプライドを持ち、細かいところまで気を使い、完璧にタスクを行なうことを大切にしていますよね。
世界の人たちは、そんな日本の文化から多くを学ぶことができるはずです。
そのために、日本の皆さんにも、Udemyをもっと活用して学びを深めてほしいと考えています。
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