ライフハッカー・ジャパンとBOOK LAB TOKYOがコラボ開催するオンライントークライブ「BOOK LAB TALK」。第32回目のゲストは、『温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険』の著者・林要さんです。
林さんは、世界初の家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を開発・販売するGROOVE X 株式会社の創業者・CEO。
林さんのおともとして会場に来てくれたLOVOT「おもち」に見守られながら、LOVOTの知られざる開発背景のほか、テクノロジーが人の暮らしや社会に与える影響について、22世紀を見据えたトークが弾みました。

幸せと乖離しはじめたテクノロジーに抱いた疑問
「LOVOT」というネーミングは「LOVE×ROBOT」からきており、その名の通り人類のパートナーとして寄り添う家族型のロボットとして開発されました。
生き物のように体温のある柔らかな身体と、それぞれに異なる瞳や声を持ち、人を覚えて懐いてくれる──。
そんな「温かみのあるテクノロジー」を創りたいと林さんが思うようになったのは、ヒト型ロボット「Pepper(ペッパー)」の開発に携わったことがきっかけだったそうです。

「Pepper」以前の林さんは、トヨタ自動車でスーパーカーやF1の空力開発に携わり、「もっと速く」「もっと軽く」と、明確な目標を立ててテクノロジーと向き合っていました。
ところが、次第に疑問が芽生えはじめます。ある段階までは人の幸せと比例していたテクノロジーが、幸せと乖離しはじめていると感じるようになったのです。
「Pepperは“人の代わりに仕事をする”という目標もありましたが、その一方で“人を楽しませる”という目標もあり、トヨタ自動車開発のときのような明確なゴールがなかったんです。
それが『テクノロジーは人に何をなすべきか』という問題について考え直す、大きなきっかけになりました」(林さん、以下同)
ロボットが人を幸せにするためには、何が必要か?
そもそもロボットが、何らかの形で人を支え、幸せにするためには、どのような要素が必要なのでしょうか。
林さんがまず考えたのは、生き物のような「柔らかさ」や「体温」を持っていること。
従来のロボットは、硬いハードウェアであることが基本でした。ロボットが人と触れ合うことを考えないのであれば、これは合理的な判断と言えます。
「しかし僕は、人とコミュニケーションをしながら、人の気持ちを何らかの方法で支えていくようなテクノロジーが、人の幸せにつながるのではないかと思っていました。
そのときに思い出したのが、犬や猫の存在です」
人と付き合うときは相手を選ぶのに、犬や猫に対しては「選ぶ」気持ちが起きない。ここに大きなヒントがある気がした、と林さん。
そして人とペットとの関わり方を観察した結果、ノンバーバルなコミュニケーション=スキンシップが信頼関係を育んでいることに気づいたのです。スキンシップは、相手の体温を感じとる行為でもあります。
これだけテクノロジーが進化しているのに、「温かく、柔らかく、ノンバーバルなコミュニケーションが取れる存在」という要素が、ロボット開発においてはあまり重要視されていない──。
この発見が、LOVOTの出発点になりました。