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私は、関西を中心に活動しているナレーター兼声優です。
いわゆる声の仕事をして生活をしています。
そんな私が、なぜ発達障害の本を書いているのかというと私自身が、自閉スペクトラム症(ASD)、そして、注意欠如・多動性障害(ADHD)と診断された発達障害の当事者だからです。(「まえがき」より)
『発達障害で「ぐちゃぐちゃな私」が最高に輝く方法』(中村 郁 著、秀和システム)は、このような自己紹介からはじまります。
いまでこそ仕事をしながら普通の人間らしい生活を送っているものの、生まれてから現在に至るまで、さまざまな困難を抱えながら生きてきたというのです。
そのことについては具体的にさまざまな事例が語られていますが、端的にいえばそれは、「普通の人にできることが、自分にはできない」という状態。しかもそれが発達障害の影響であることはあとになってから知ったため、学生時代にもかなりつらい思いをしたようです。
発達障害を持つ人は、好きなことには全力投球し、信じられないほどの力を発揮することが可能。しかし一方、普通の人が普通にできることができなかったりもします。
そのため自責の念にかられることも多く、うつ病や不眠症などの二次障害を引き起こしてしまうことも。著者も不眠症に苦しめられた経験があるそうですが、苦手を手放し「好き」を選択して生きることで、不眠症からも解放されたといいます。
今現在の医学では、発達障害を治すことはできません。
できないことはできない。それでいいのです。
大切なのは、環境を調整することと、生きづらさを軽減するための工夫です。(「まえがき」より)
そこで本書において著者は、これまで自身が「ぐちゃぐちゃ思考」とともに生きてきたなかで見つけたという“ちょっとした工夫”を紹介しているわけです。きょうはそのなかから第2章「コミュ障でも問題なし! 常識とは真逆に行くほどうまくいく」に焦点を当ててみたいと思います。
雑談? 場なんか盛り上げなくていい
ADHD気質を持つ発達障害の人にとって、非常に難しいことのひとつが雑談。人との距離感を測ることが苦手だったり、相手の気持ちやその場の雰囲気を読み取ることが苦手であるだけに、テーマが決められていない雑談は難しいわけです。
そればかりか、複数人での雑談になるとさらに困難を極めるようです。なぜなら、各人が話している会話の内容を聞き取って理解し、それに対して自分の意見をまとめて発言するという、高度な技術が求められるから。
しかし、ここで絶対に間違えてはいけないことがあるのだといいます。
「雑談タイムは、あなたのショータイムではない」ということです。
雑談は、相手との信頼関係を構築していくためにあるものです。好き放題に話していいはずがありません。
ナレーターも、雑談をするタイミングは多くあります。収録スタジオのドアを開けた瞬間から、いや開ける前から、すでに雑談への準備をしておくのです。ナレーターは、自分自身が商品なので、自分で自分を売り込まなければならないからです。(64〜65ページより)
著者は以前、「雑談タイムはアピールタイムになる」と教わったことがあるそう。実際に、雑談で場をひとしきり盛り上げてからナレーション収録に移行する先輩も少なくなかったようです。
しかし、自分が同じことをやろうとしても、うまくいかなかったのだとか。「なにかおもしろいことをいわなければ」と思ってしまうと、まったくことばが出てこなくなってしまうというのです。また複数人で話していると、自分がどのタイミングで話していいのかわからず、頭のなかで会話を処理していくだけで精一杯になってしまうこともあったといいます。
でも、そんな経験があるからこそ、やがて「雑談は自分のアピールタイムではなく、相手へのリスペクトタイム」だということに気づいたのだそうです。
たとえ流暢にしゃべれなくても、おもしろいことがいえなくても、話が弾まなかったとしても、相手へのリスペクトと真心を持っていれば、必ずその空気は相手やまわりに伝わります。(67ページより)
“場を盛り上げることのないナレーター”として20年間仕事を続けているという著者のあり方こそが、こうした考え方の裏づけになっていることはいうまでもありません。(64ページより)
話すより聞けばいい
そして、雑談についてもうひとつ重要なポイントがあるそうです。
それは、自分から無理して話す必要はなく、とにかく相手の話を聞くということ。
「話くらい聞いているよ」と思われる方も多いかもしれませんが、じつは話を聞くというのは簡単なことではありません。
まず、話をしている人の目をしっかり見てください。
人の目を見ることが苦手だという方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、目と目の間、眉間のあたりを見つめるようにしてください。
体の向きもしっかり相手に向けるようにしてくださいね。(68ページより)
大切なのは、相手の話に共感し、相槌を打ちつつ、相手が聞いてほしいと思っている話を最後まで聞くこと。途中でさえぎってしまうのは、当然ながらNGです。
奇跡的に最後まで聞くことができたら、次に気をつけなければならないのは「わかるわかるお化け」の存在です。
自分の話をしている途中で、相手から「わかるわかる! 私もこの前……」と、延々と自分の話を続けられた経験、あなたにもありませんか?
人は共感してもらいたい生きものですが、わかるわかるお化けのおそろしいところは、人の話を奪っていくところです。こうなると、話をしたほうは「私の話はどこ行った?」となり、自分の話は3分の1も聞いてもらえなかった印象を受けるでしょう。
それどころか、相手の話を最後まで聞かずにさえぎることは、相手が本当に話したかったことの真意を理解できずに終わることになってしまいます。(70〜71ページより)
だからこそ、「さえぎらない」「奪わない」という2点に気をつけ、相手のことばひとつひとつに耳を傾けるべきだということです。(68ページより)
紹介されている“ちょっとした工夫”は、どれもシンプルなことばかり。でも、人間関係も習慣も思考も、すべてシンプルであるべきだと著者はいいます。
なぜなら、生きることは意外とシンプルなことだから。同じような悩みを抱えている方にとって、これは有効な考え方なのではないでしょうか。
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