『JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則』(ニック・マジューリ 著、 児島 修 訳、ダイヤモンド社)の著者は、本書のタイトルに関連して次のように述べています。
「ジャスト・キープ・バイイング」とは、収益を生み出す様々な資産を継続的に購入することだ。
収益を生み出す資産とは、将来的に不労所得を生み出せる、株式、債券、不動産などの資産のこと。
ただし、細かな戦略はそれほど重要ではない。
なにより大事なのは、「どんな金融資産を、いつ、いくらくらい買うべきか」ではなく、ただひたすら買い続けることだからだ。
このアイデアはとても単純に見える。
実際、極めて単純だ。
家賃や住宅ローンを払うのと同じように投資を習慣にし、食料品を買うように金融資産を買うーーただそれだけなのだ。(「はじめに」より)
もちろん、この考えに従おうとすることは、資産を築く道のりのほんの一歩。しかも実践しようとすれば、さまざまな疑問が生じてきたとしても不思議ではありません。
だからこそ、著者は本書において、パーソナルファイナンス(個人にとっての資産運用やお金の問題全般)や投資に関しての疑問や質問に答えているのです。
なにより重要なのは、これらの質問に対する答えが、単なる個人的意見や推測ではなく、データと証拠に裏づけられたものであることだ。(「はじめに」より)
そんな本書の第1部「貯金力アップ篇」のなかから、きょうは第4章「罪悪感なしでお金を使う方法――『2倍ルール』と充実感の最大化」に焦点を当ててみたいと思います。
罪悪感を覚えずに買い物が楽しめる2つの方法
たしかにお金は重要だけれど、値札を見るたびに不安を感じていたのであれば身が持ちません。充分なお金があるのになにかを買うことに躊躇してばかりいるなら、資金不足ではなく、お金の使い方に関する「根本的な考え方」に問題があるわけです。
だからこそ必要なのは、罪悪感につきまとわれることなく、安心してお金を使えるようになる新しい考え方。著者は、その効果的な方法を2つ紹介しています。
1 :2倍ルール
2 :「充実感」を第一に考える
(93ページより)
この2つを組み合わせれば、罪悪感を覚えずに買い物が楽しめるようになるというのです。それぞれを確認してみましょう。(92ページより)
買い物するときの「2倍ルール」
「贅沢な買い物をするときは、必ずそれと同額の投資をする」――これが2倍ルールだ。
たとえば、400ドルのシャレた靴を買うなら、400ドルの株(または他の投資資産)も買う。
この2倍ルールに従うことで、買い物をするとき、冷静に「自分は本当にこの商品を買いたいと思っているのか?」と立ち止まって考えられる。買い物と投資で2倍の現金が出ていくことになるからだ。(93ページより)
著者がこの2倍ルールを気に入っているのは、高い買い物をするときの罪悪感がなくなるからだそう。散財しても、それと同額の投資資産を買うことになるとわかっているため、お金を使いすぎたかもしれないと心配しなくてもいいわけです。
なお、なにかを買おうとしたときに重要なのは、自分がそれを贅沢と感じるかどうか。10ドルの買い物であれ1000ドルの買い物であれ、2倍ルールに従うことで罪悪感から解放され、富を楽しめるようになるということです。
ちなみに、2倍ルールは投資資産以外のものを対象にしてもいい。
たとえば、200ドルのものを買ったとき、同額を慈善団体に寄付してもいいだろう。そうすることで、買い物に対する罪悪感をなくせる。
自分のために贅沢品を買ったのと同額を、意義ある目的のチャリティに寄付する。誰かの役に立ったというすがすがしさがあるから、買い物をしても気分が悪くならない。(94ページより)
2倍ルールはこのように、買い物をすることの罪悪感から私たちを救ってくれるシンプルな方法だということです。(94ページより)
「充実感」を第一に考えてお金を使う
お金を安心して使うための著者からのアドバイス、その2つ目は、充実感が得られるお金の使い方を優先させること。一時的な楽しさではなく、いつまでも心を豊かにし続けてくれる充実感に目を向けるべきだという考え方です。
たとえば、フルマラソンを完走するのは必ずしも楽しいことばかりではないはず。練習もしなければいけませんし、走っている最中にも苦しさを味わうことになるのですから。しかしそれでも、完走できれば大きな達成感や充実感が得られるはずで、それこそが重要だということ。
ただしそれは、「ハッピーなお金の使い方をするな」というわけではないようです。
たとえばここで紹介されているのは、書籍『Happy Money: The Science of Happier Spending(ハッピーマネー:幸せなお金の使い方の科学)』(Elizabeth Dunn & Michael Norton著、Simon & Schuster、未邦訳)のなかに登場する、全体的な幸福度を高める5つのお金の使い方。数々の研究によって明らかにされたものだそうです。
・体験を買う
・自分のために(たまに)贅沢をする
・時間を買う
・前払いする(例:旅行費用の金額を前金で払う)
・人のために使う
(96ページより)
このようなお金の使い方をすると、幸福感が高まりやすいというのです。さらに突き詰めれば、「お金は自分が望む生活を実現する道具」であるべきだということ。
本当に難しいのはお金の使い方ではなく、人生で本当に欲しいものはなにかを見つけること。その答えが見つかれば、お金を使うことが簡単になり、楽しくなるはず。つまり重要なのは、「なにを買うかではなく、どんな基準で買うか」だということなのです。(95ページより)
本書は、読者の時間を最大限に尊重する方法によって書かれているそう。読者は、自分の現在の資産形成の段階に合った、興味のある章から読み始めることもできるのです。つまりは「ジャスト・キープ・バイイング」のコンセプトを、自分に見合った形で理解できるわけです。
Source: ダイヤモンド社