道なき道を拓き、未だ見ぬ新しい価値を世に送り出す人「起業家」。未来に向かって挑むその原動力は? 仕事における哲学は…? 時代をリードする起業家へのインタビュー『仕事論。』シリーズ。

今やビジネスに不可欠となったカレンダーツール。今回は、複数のカレンダーの連携を実現する日程調整ツール「Spir(スピア)」をリリースした、株式会社Spir代表取締役の大山晋輔さんに、起業までの経緯やプロダクトに込めた想いなどをお聞きしました。

「人とどうつながるか」「時間をどう使うか」それが課題

──まずは事業内容について教えてください。

相手も、自分も、思いどおりの調整を。」というコンセプトで、予定管理から日程調整まで戦略的にタイムマネジメントできる日程調整ツール「Spir(スピア)」を開発、運用をしています。Spirはカレンダーのインターフェースを持つプラットフォームで、複数のカレンダーアカウントやWeb会議システムを統合して管理できるツールです。

みなさんもビジネスシーンにおいて「スケジュール調整が大変」という経験があると思いますが、Spirはメンバーそれぞれのスケジュールから日程候補を自動で調整できるというものです。

たとえば参加メンバーのカレンダーを同期してそれぞれのNG枠を削除し、それをURLにして先方に送り、日程が確定すれば各自のカレンダーに自動で予定が反映。候補日時を書き出したり、リマインドメールを送る必要もありませんし、カレンダーと調整ツールを行き来する必要もなくなります。

──起業の経緯を教えていただけますか。

前職は、経済情報プラットフォームの「SPEEDA」やソーシャル経済メディアの「NewsPicks」を運営するユーザベースで、アメリカでのローカライズの責任者を担当していました。

しかしある時、ビザの都合で帰国せざるを得なくなり、やむなく日本に戻ることに。そこで「じゃあこれから何をやるか」となった時に、自分のこれまでを見つめ直し、「新たな事業を立ち上げたい。自分自身の手で、世界中の人に使っていただけるようなプロダクトをゼロからつくるチャレンジをしたい」という考えに至ったんです。

それまではずっと、プロダクトオーナーやイノベーターというよりは、COO(Chief Operating Officer、最高執行責任者)的な言わば参謀のポジションを担ってきたのですが、それに対して違和感というか引っかかりを感じていました。「自分もイノベーターになれるのではないか」という思いがあったのも、起業に至った要因の一つです。

──日程調整ツールは最初から構想にあったのですか?

いえ、実は何もプランがないまま退社し、会社を立ち上げました

何でチャレンジをするか、いろいろ考えるなかで「世の中のビジネスパーソンがつながるプラットフォームに可能性があるのではないか」と思うようになったんです。

たとえば今、目の前の人に紹介したい人がいたとします。これまではメールなどで「紹介したい人がいるんですが」「あ、近々ぜひ」なんていう話になっても、結局実現しなかったりしましたよね。でも、日程調整が簡単になると人と会うハードルが下がるんです。お互いの空き時間をさっと調整でき、会うチャンスが格段に上がる。このシンプルさがコミュニケーションを生み出し、多くの人にとってのビジネスチャンスになるのでは、と思いました。

──人と人がつながるところに、ご自身もペインを感じていたということですね。

はい、そうです。それとあわせて「時間をどう使うか?」というのも課題として自分の中にずっとありました。

1日24時間というのは誰もが平等に持っている貴重なアセットで、与えられているその24時間をどう使うかでビジネスも人生も変わっていくと思っています。ですから、「時間を使う体験をサポートしたい」という思いがあったのです。

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プロダクト・レッド・グロース──製品主導でビジネスは成長する
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