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ChatGPTに代表される「ジェネレーティブAI(人間の出すオーダーに応じ、テキストや画像などの生成物をつくり出せるAI)」によって、私たちは日常で用いている「ことば」を使って洗練されたAIシステムと「会話」ができるようになりました。
AIシステムを設計するプログラマーと同じように、すべての人がAIと直接やりとりすることができるようになったわけで、『AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方』(伊藤穰一 著、SBクリエイティブ)の著者もそのことを「魔法のような出来事」だと表現しています。
これまでAIは、一部の専門家やテクノロジー好きの人たちが有する「専門知識(教養)」でした。それ以外の人たちは、AIについてよく知らなくても、現状のパフォーマンスや将来性にそれほど差は出なかった。しかし、これからは違います。
自分の生産性を上げることに、AIはいかに寄与しうるか。この点を理解し、実際に活用できるようになれば、AIはもはや「未知なるテクノロジー」ではなく、「有能なアシスタント」「伴走者」「パートナー」になります。(「はじめに」より)
ジェネレーティブAIによって、面倒な仕事やチームワーク、マネジメントや組織のあり方を一瞬で劇的に効率化することができると著者は述べています。
個人の働き方や生き方はもとより、会社組織や教育、文化などあらゆる領域に大きな影響を及ぼしていくことは間違いないだろうとも。
だとすれば、私たちはジェネレーティブAIをいかに使っていくべきなのでしょうか? それを理解するためには、AIがどのようなものであり、それが私たちの人生や世界にどんな影響を与えるのかを理解する必要があるはず。
そこで、新時代を生き抜くためのリテラシーを「AI DRIVEN」と位置づけ、AIと共存する働き方や生き方を身につけるためのサポートをしようという思いから本書は生まれたのだそうです。
きょうはそのなかから、第1章「仕事 僕たちの役割は「DJ的」になる」に焦点を当ててみたいと思います。
「掛け合わせ、練り上げる」僕たちの仕事
ジェネレーティブAIがますます進化し普及していくと、人間の仕事、働き方、ビジネスモデルは総じて「DJ」的になっていくだろうと著者は予測しています。これは、非常に興味深い見解だと個人的にも感じます。
DJは基本的に、自分では音楽をつくりません。いろんな音楽の断片を寄せ集めてきて、機材でエフェクトをかけるなどして、コラージュのように1つの音楽を構成します。
しかもDJには、音楽理論の知識は必須ではありません。
むしろDJに求められるのは理論に基づく作曲能力ではなくサンプリング、つまり「どんな断片を掛け合わせ、どのように機材を扱ったらかっこいい音楽になるか」というセンスです。
端的にいえば、「ゼロから生み出すこと」ではなく「掛け合わせ、練り上げること」が、DJのクリエイティビティの見せどころです。そこが、ジェネレーティブAIを使って仕事をするのと、よく似ているのです。(96ページより)
つまりジェネレーティブAIを使いこなせば、自分の手で「ゼロから生み出す」という旧来的なプロセスはほぼなくなるということ。ジェネレーティブAIに指示をしてたたき台を生成してもらい、それをブラッシュアップして成果物を練り上げるわけです。したがって上手なプロンプトを入力し、筋のいいたたき台を生成させることができるかどうかによって、最終的な成果物のクオリティも違ってくるのです。
もちろん知識を持っていて損はないでしょうが、知識以上に、ジェネレーティブAIが自分の意図どおりに働いてくれるように、言語化して上手に並べるセンスが求められるわけです。
「どんなことばを掛け合わせ、どうジェネレーションAIを扱ったら、筋のいいたたき台が生成されるか」を考えるセンスが求められるということ。その点において、DJと同じように「掛け合わせ、練り上げること」が人間のクリエイティビティの見せどころになるのです。(95ページより)
草案を検討し、ベストなものを選ぶ
端的にいえば今後は、ジェネレーティブAIが生成した「たたき台」をチェック、精査し、ベストなものを選ぶ、もしくはベストなものへと練り上げていくことが、人間のおもな仕事になっていくと考えられるのです。
ジェネレーティブAIは、現在は、かなり頻繁に間違えます。したがって、自分が間違いに気づけないような、まったく知らない分野でジェネレーティブAIに頼るのは危険です。
一方、ある程度自分が理解している分野のことならば、ジェネレーティブAIは非常に使えるツールになります。
エラーをチェックする手間を割かなくてはいけないといっても、常にゼロから自分で手を動かして生成するより、ジェネレーティブAIを使ったほうが、格段に仕事の効率は上がります。(「はじめに」より)
つまり、まずジェネレーティブAIに仕事をさせて、それを自分の目でチェックし、誤りがあったら直す。こうしたプロセスを踏んでパフォーマンスを上げていくことが、新時代に活躍する人の働き方として定着していく。著者はそう推測しているのです。(97ページより)
「合理性」ではなく「おもしろさ」で評価される時代へ
ジェネレーティブAIが有能なツールになればなるほど、「人間にしかできないこと」をすることこそが人間の仕事になっていくはず。では、「人間にしかできないこと」とはなんでしょうか? この問いに対して著者は、「おもしろいこと」「風変わりなこと」だと答えています。
重要な事実は、「ジェネレーティブAIの生成物は、蓄積された過去のデータのサンプリングにすぎない」ということです。
もちろん、人間のクリエイティビティも過去のデータを多分に参照したうえで生まれるものですが、そこに「自分」という人間ならではの「ひねり」を加えることは、人間にしかできません。(100ページより)
そのため今後さらに求められるのは、「どれだけ整合性の高い優等生的な答えを出せるか」よりも、「どれほどおもしろい、風変わりなことができるか」という自分だけの「ひねり」。すなわち従来にはなかった新たな発想を加えることができるかどうかで、人間の評価は変わっていくことになるわけです。
つまりジェネレーティブAIの浸透は、平均点をとることよりも、尖った個性を発揮することのほうが高く評価される時代の到来を意味しているということになるのでしょう。(99ページより)
実践的な例や説明を用い、同時にAIが発展するなかで生じているリスクや諸問題についても注意を払いつつ、AIを有効活用するためのメソッドを解説した一冊。これからさらに開かれていくであろう新たな時代を生きていくために、大きく役立ってくれそうです。
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