>>Kindle unlimited、2カ月99円で読み放題キャンペーン中!
『私はないものを数えない。』(葦原 海 著、サンマーク出版)の著者は、高校在学中だった16歳のとき事故に遭って両足を切断した経験の持ち主。それは、人生を大きく変える出来事であったに違いありません。端的にいえば、いろいろな意味で否定的な気持ちになってしまったとしても不思議はないわけです。
ところが本人は、こう主張するのです。
起きた出来事は、変えられない。
でも、それをどう受け止めるかは、自分で決められる。
だから私は決めたーー両足をなくしたんじゃない。
「足は姫にあげたんだ」って。
受け止めたあと、その新しい世界でどう生きていくかは、全部、自分の好きなように決めていい。私は、全部、自分で決めてきた。
両足があってもなくても変わらない、この私、葦原海として。(「プロローグ 車椅子モデル、ランウェイに立つ」より)
事実、専門学校在学中にNHK番組内のファッションショーに出演したことをきっかけに、「エンタメの力で健常者と障害者の壁をこわす!そのために表現者になろう」と決意してモデル活動を開始したのだそう。
2021年の東京パラリンピック閉会式パフォーマーとして注目を浴び、2022年にはミラノコレクション、2023年にはパリコレクションのランウェイを車椅子で歩き、世界デビュー。以後も唯一無二の「両足のない車椅子ユーザーのモデル」として活躍されています。
また、上記の発言からもわかるとおり、ハンディキャップをものともしない発言も注目を呼ぶことに。その前向きさは、本書のもはっきりと表れています。
きょうは2章「『せっかく生きてるし!』いつでも楽しさは見つかる」04「足がないことより、スマホがないことに絶望した話。」のなかから、いくつかのトピックスを抜き出してみたいと思います。
「仕方ない」って意外といい!
いまは「仕方ない」ことでも、いつか変えられるタイミングが訪れることも多い。
そう述べている著者は、事故に遭う前は遊びとバイトが生活の中心で、家は「お風呂に入って寝るところ」だったそう。親の管理下にある環境は面倒で、早く大人になりたいと感じていたのだといいます。
しかし次第に余裕を持って考えることができるようになり、ひとり暮らしをして自由に動けている現在は、両親ともいい関係であるようです。
10代の私が親と悲惨なバトルにならずにすんだのは、「20歳までは仕方ない」と環境を変えることをあきらめたーーというか、仕方ないと受け入れたから。
いくら親でも自分とは違う人間で、「自分以外を変えるのは無理」と思ったのも、よかったんじゃないかな。(80ページより)
それは「期間限定」で「仕方ない」と割り切り、めげないやり方なのだといいます。重要なポイントは、すべての環境が変えられるわけではないこと。自分が変わることで、まわりも変わると考えたわけです。
これはきれいな言葉だけど、うまくいかないこともあると思う。
たとえば私の場合、「足がない」というのがそれ。
自分で変えようと思っても変わらないし、「30歳になったら元通り」とはいかないし、何かのタイミングでもそのまんま。
じゃあ、どうすればいいんだろ?
私は「足がない」というのを知った瞬間、受け入れた。
「足がないのは、もう変えられないこと、仕方ない」って。(80ページより)
それは、あきらめたのでも、いじけたのでも、開きなおりでもないといいます。つまり、変えられないなら、「じゃあ、いまの環境でどうする?」と考えた方が早いということです。これは、とても重要な考え方ではないでしょうか?(79ページより)
好きなように選んで、好きなように楽しむ
著者は「両足を失って、変わったことはなんですか?」とよく聞かれるそうですが、変わったことは「あまりない」のだとか。
もともと明るかったから、急に明るくなったわけじゃない。
健常者とは違う立ち位置、ちょっと変わった状況にはなったけど、足があってもなくても、私は生まれつき「変わった子」だった。
我が道をいく系、というか?(89ページより)
つまり、足の有無に関係なく、つねに自分らしくあり続けているということ。もちろん自分ひとりでできる範囲は狭まり、できなくなったことがあるのも事実。
しかしその大半は、友だち、仕事仲間、親、まわりの人の助けを借りれば解決できること。「あれもこれも、できなくなった」という感覚はなく、むしろ車椅子ユーザーになって生きやすくなったのだそうです。
今の私は、「これはできない・あれはできない」と、物理的にできないことがはっきりある。
だからこそ、自分が「やりたくて、できること」が見つけやすくなった。(90ページより)
両足をなくして、「私はこれ」って選べるようになった。
無数にあった選択肢がほどよく絞られて、それでもまだまだたくさん選択肢はあって、快適で、ちょうどいい。
好きなように選んで、好きなように楽しんで、だからとてもハッピーだ。
ある意味、生きやすくなったと思っている。(91ページより)
16歳までの著者は、いつも将来や未来を楽しみにしていたそうです。そして25歳になり、いまを全力で楽しもうと思うようになったのだといいます。
できないことがあったら、「なにができるか」が見えてくるもの。そして、なにができるか見えてきたら、やろうと決めて、あとはやるだけ。
著者のこうした考え方は、この世界を生きるすべての人にもあてはまることではないでしょうか?(88ページより)
つらいことや苦しいこと、あるいは自分の望まないことが起きたとき、人はとかくネガティブ思考になってしまいがち。しかし、「どうせ〜だから」と口に出したところでなにも変わりません。
むしろ大切なのは、“いまある状況”を受け入れ、最大限に楽しむこと。そんな本質を実感するためにも、本書は大きな力になってくれることでしょう。
>>Kindle unlimited、2カ月99円で読み放題キャンペーン中!
「毎日書評」をもっと読む「毎日書評」をVoicyで聞くSource: サンマーク出版