Appleには時々、本当に驚かされますが、今回もまたびっくりさせられました。2023年5月9日に、iPadのための映像編集ソフト「Final Cut Pro」と音楽制作ソフト「Logic Pro」が発表されたのです。

これでようやく、iPadが、プロレベルの動画や音楽を制作できるタッチスクリーンのツールになります。しかも、macOS版を単に移植したものではありません。

では、早速詳しくみていきましょう。

iPadは強力な動画制作マシンになった

iPadのためのFinal Cut ProとLogic Proがあれば、動画を撮影から編集まで一貫してできます。

iPadで撮影した動画をFinal Cut Proで編集することができますし、オンスクリーンの鍵盤でつくった曲や、内蔵マイクで録音したオーディオをLogic Proでミックスすることも可能です。

クオリティをもっと上げたいのであれば、別の機器が必要になるでしょう。けれども理論的には、iPadのためのFinal Cut ProかLogic Proがあれば、最初から最後までiPadだけで、作品を完成させられるわけです。

iPadのためのFinal Cut Proでできること

スクロール用のジョグホイール

iPadでFinal Cut Proを使うなら、「ジョグホイール」に慣れる必要があります。

これは、マウスについているスクロール用のホイールと同じように機能するよう、設計されているようです。ジョグホイールをスクロールすれば、タイムラインを移動したり、クリップを動かしたり、フレーム単位で編集したりできます。

ジョグホイールが、経験豊富なエディターの作業をどう変えるのか、編集作業をスピードアップさせてくれるのか否か、気になるところです。

iPad向けFinal Cut Proでの編集
Image: Apple

Apple Pencil

Apple Pencilが使えることも、「iPadのためのFinal Cut Pro」ならではです。Final Cut ProのタイムラインでApple Pencilによる操作が可能になったのはこれが初めてで、映像の上に文字や絵などを書き入れられます。

撮影の設定も可能

「プロ向けのカメラモード」という機能では、iPadで動画を撮影するときに、Final Cut Proのコントロールを使うことができます。

たとえば、録画時間の確認や、フォーカス、露出、ホワイトバランスなどの設定調整が可能です。M2チップ搭載のiPad Proをお持ちなら、ProResで録画することもできます。

そのほかの編集機能

こうした点を除けば、あとはおなじみのFinal Cut Proとほぼ同じだと思われます。たとえば、以下のような機能が使えます。

  • マルチカムビデオ編集やグラフィックス
  • ビデオエフェクト
  • オーディオエフェクト
  • グリーンスクリーンを使わずに背景の除去・置き換えができる「シーン除去マスク」
  • 制作している映像のアスペクト比を調整できる「自動クロップ」
  • 録音したオーディオから背景ノイズを除去できる「声を分離」

さらに、iPadとMac間でFinal Cut Proのプロジェクトを転送でき、どちらのデバイスでも編集作業が可能です。

iPadのためのLogic Proでできること

iPadのLogic Proには、新たなサウンドブラウザが登場しました。サイドバーには音源パッチ、オーディオパッチ、プラグイン、サンプル、ループなどがまとまって表示されるので、あれこれ試してみて、「いいな」と思ったら使ってみましょう。

iPad向けLogic Proでの編集
Image: Apple

Appleによれば、Logic Proには100を超える音源とエフェクトプラグインが搭載されているとのこと。

iPadのスクリーン上で楽器の演奏ができ、キーボードやドラムのパートで、特に活躍するはずです。あれこれ組み合わせれば、これぞと思えるサウンドを作り出せます。

新登場した「Beat Breaker」は、Multi-Touchを使ってサウンドを変化させられるプラグインです。「Quick Sampler」を使えば、特定のオーディオサンプルが、まったく新たな音源に一変し、それを演奏することもできます。

「ステップシーケンサー」と「Drum Machine Designer」では、カスタムドラムキットを作成し、自分だけのビートを生み出しましょう。

私が何よりもワクワクしているのはミキサーです。ボリュームフェーダーやパンの調整、プラグインの変更など、すべてがタッチスクリーンで操作可能なのですから、きっと楽しいに違いありません。

Multi-Touchの使い勝手が、Final Cut ProよりLogic Proのほうが上なのかどうかは、気になるところです。Final Cut Proと同様に、Logic Proでも、プロジェクトをiPadからMacに転送可能です。

しかも、Logic Proでサウンドトラックを制作し、それをiPad版Final Cut Proで使うこともできます。

価格と互換性:新しいiPadが必要になるかも

残念ながら、Final Cut ProとLogic Proをすでに購入済みであっても、iPad版を使うにはお金がかかります。

macOSのためのLogic Proは3万円、macOSのためのFinal Cut Proは4万5000円ですが、 iPad版はいずれもサブスクリプション形式で、買い取ることはできません。無料版もなければ、macOS版の購入者向け割引特典もないのはがっかりです。

とはいえ、サブスクリプション価格はそれほど高くありません。アプリ1つにつき月額700円、年額は7000円です。新規登録者は1カ月間の無料トライアル付きで、アプリが誕生したばかりですから、いまのところは全員に当てはまります。

どちらも、2023年5月23日からApp Storeで提供が開始されます。

対応しているiPadに注意

ただし、Final Cut Proのほうは何かとハードルが高そうです。システム条件がLogic Proよりもちょっと厳しいからです。Final Cut Proは、M1チップを搭載したiPadが必要です(Logic Proなら、A12 Bionic以降のチップのiPadでも使えます)。

これにはがっかりさせられました。

市販されている多くのiPadは、アップグレードが不要なほどパワフルなのに、それでもFinal Cut Proを使えないのです。特に、A12Z iPad Proが対応していないのは残念でなりません。

iPadユーザーにおすすめ!仕事で威力を発揮する7つのマルチタスク術 | ライフハッカー・ジャパン

iPadユーザーにおすすめ!仕事で威力を発揮する7つのマルチタスク術 | ライフハッカー・ジャパン

Source: Apple