道なき道を拓き、未だ見ぬ新しい価値を世に送り出す人「起業家」。未来に向かって挑むその原動力は? 仕事における哲学は…? 時代をリードする起業家へのインタビュー『仕事論。』シリーズ。

今回は、新規事業に出会えるプラットフォーム「Spready(スプレディ)」を提供するSpready(スプレディ)株式会社代表の佐古雅亮(さこまさあき)さんをインタビュー。起業に至るまでの経緯やこの事業の面白さ、また、事業を通じて叶えたい未来について語っていただきました。

「社会のペイン」に取り組むと、人生を決めた

──起業しようと思ったきっかけや、経緯を教えてください。

まず、僕のキャリアをお話しすると、新卒で総合人材系サービス会社のインテリジェンス(現パーソルグループ)に入社し、10年勤務しました。

29歳のときにインテリジェンス内で新規事業を立ち上げる出島組織へ配属され、以降、新規事業に関する仕事に専心しています。

20代のころはずっと、迷っていました。新卒でインテリジェンスに入社したのが2008年。成長産業ということで人材業界を選んだのですが、その年にリーマンショックもあり、以前の人材業界のような活気もなかった。「このままこの業界で働くべきか」はずっと悩んでいましたね。

ただ、成長環境を求めて入った人材業界ですが、バブルのような成長産業から、社会課題の解決が求められる産業へと変化していくことを肌で感じたことは、大きな転機となりました。

たとえば、2013年に政府から「日本再興戦略」が発表され、人手不足は解決すべき社会課題として明確に定義されましたし、その後は副業解禁の流れなども生まれましたね。

2000年前後にベンチャーとして誕生した人材ビジネスの多くの担い手は、「社会課題を解決する集団」という使命を求められるようになりました。

「社会のペイン」と言われる領域で仕事ができるなら、そのために自分の命を使おうと決心したのは29歳のときです。

──その時のご決断が、現在の事業につながっているわけですが、そう考えると未来を予期しての判断だったわけですね。

不思議なもので、意思決定をすると先が見るようになってきます

当時、自身でも新規事業の立ち上げをしていましたが、世の中にはたくさんのマッチングサービスが存在するのに、適切なものが一つもなかったんです。

たとえばある特定業界に詳しい方との意見交換だったり、受容度調査を目的とした想定ユーザへのインタビューだったり。新規事業において必要とするマッチングは、転職・採用関連とは異なり、対象者が「マスではなくてニッチ」なんです。それも、多様なニッチ・セグメント(集団区分)にアプローチをする必要がある。

そこで、新規事業で必要な出会いをCtoCで実現する「マッチングプラットフォーム」をつくろうと、2018年の5月にSpreadyを創業しました。

何かのきっかけで僕が生まれ変わって起業したのではなく、今までやってきた仕事が社会課題化したことで重要度が上がった。自分の中に大きな“意義”を見いだしたことが、起業を後押ししたのかもしれません。

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単なるマッチングの枠を超えた「新規事業のプロフェッショナル」の理由
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