>>Kindle unlimited、2カ月99円で読み放題キャンペーン中!

ソーシャルジャスティス 小児精神科医、社会を診る』(内田 舞 著、文春新書)の著者は、ハーバード大学准教授、小児精神科医・脳科学者。トランプ政権下のアメリカで新型コロナパンデミックを経験した2020年当時は、3人目の子がおなかにいる妊婦でもあったのだそうです。

特筆すべきは、ワクチンの安全性や有効性を示す治験の結果や、妊婦には影響を与えにくいと考えられるmRNAワクチンの仕組みを吟味し、妊娠34週目だった2021年1月初旬にワクチン接種を受けたという事実。

世界でも初めてに近い段階で妊娠中にワクチンを接種できた立場として、あとに続く妊婦さんのためになる情報を提供しようと、ワクチン接種をした妊婦の追跡研究に積極的に参加。

正確な化学情報に基づいて納得できる判断をしてもらいたいとの思いから、ワクチン接種の意義や情報を考え合わせたうえで、「接種するリスク」と「接種しないリスク」を天秤にかけた説明をしてきたのだといいます。

また、「ワクチンを接種すると流産する、不妊になる」といったデマが広がるなか、SNSに投稿したのがおなかの大きな自身がワクチンを接種した姿を写した写真(本書のカバーにもなっています)。結果、想像以上の反響があったものの、SNS上で数千件にもおよぶ誹謗中傷のことばに直面することにもなったのだとか。

「死産報告書:死因は母親のワクチン接種」などと書かれたメッセージも届きました。

(中略)その選択が正しいと論理的にわかってはいても、お腹の中の赤ちゃんが死ぬという言葉をかけられ続けると、胎動が気になってしまったり、また、妊娠中にワクチンを接種したとメディアで紹介された私自身が健康な子を産まなければ、日本のワクチン忌避はさらに深まりかねないと要らぬ責任を感じてしまいました。

(「プロローグ 妊婦のワクチン啓発で気づいたThemとUs」より)

それでも、すべての批判や否定的な意見の表明が「悪い」わけではないと著者はいいます。

自分の大切にしているものを侮辱されたときには正直な思いを伝えてもよく、社会への悪影響が懸念されるなにかを正そうとする人たちがいることも尊重すべきだから。ただし、近年の「炎上」の荒波に乗じたネガティブな意見の大半はまた別ものでもあるはず。

次のページ>>
なぜ人は不安になると攻撃性が高まってしまうのか?
123