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現代社会において、40代・50代は間違いなく「若い世代」。日本全体の平均年齢が上がっているなか、老人の仲間入りをさせてもらうには早すぎるわけです。

ところが『不老脳』(和田秀樹 著、新潮新書)の著者によれば、どれだけ「自分は若い」と思ったところで、脳科学的にはそうもいかないようです。なぜなら、脳の老化は40代でとっくに始まっているから。

なかでも深刻なのは、前頭葉の老化なのだとか。前頭葉が老化すれば、当然ながら個人としての活動レベルが落ちます。そればかりか、そうした人たちが増えれば日本全体の活性が落ち、沈滞を招くということです。

前頭葉の役割は多岐にわたります。運動するときや言葉を操るとき、泣いたり笑ったりするときに働くのが前頭葉です。

前頭葉はさらに「前頭連合野」「ブローカ野」「運動前野」「補足運動野」「前頭眼野」「一次運動野」に分けることができるのですが、それぞれに高度な機能を担っています。

中でも「前頭連合野」は思考や判断といった情報の処理や、集中力や意欲、情動のコントロール、創造性や計画性、社会性といった“人間らしさの源泉”とも言える役割を担います。

前頭葉の機能がすべて解明されているわけではありませんが、前頭葉とはいわば、人間の“知性”そのものを司ると言い換えてもいいかもしれません。(15〜16ページより)

たとえば「老人は怒りっぽい」などといわれますが、年をとると怒りっぽくなるのではなく、前頭葉の機能である「情動のコントロール」がうまく働かなくなると考えられるそうなのです。つまり、怒りの感情が湧いたときに「ブレーキが利かなくなる」ということ。そう考えると、老人に限らず「キレやすい」人が増えたように感じることにも納得がいきます。前頭葉が正常に機能していれば、自分の社会的立場や置かれている状況、トラブルの対処法なども脳裏に浮かび、怒りの感情は抑制できるはずなのですから。

「あおり運転」にも前頭葉が影響?

人の感情は大脳辺縁系という、前頭葉よりずっと奥、脳のもっとも内側にある深い領域で生起されます。その感情に対して、これまでの経験や知識を動員して、行動にブレーキをかける役割を果たすのが前頭葉です。(28〜29ページより)

ところが前頭葉の機能が低下すると、経験や知識がむしろ「なぜこうならないんだ」というような怒りや悲しみを強化してしまうことになるのです。

前頭葉には洞察力という「隠れたルールを見出す」「突然ルールが変更されたことに気づく」機能もあるそうですが、それが働いていないと「こんな発言はまずい」との判断も働かなくなるわけです。

そのため沸き立つ感情を抑えられなくなってしまうということで、近年多い「あおり運転」などもそれにあたるようです。あおり運転をして捕まれば、運転免許は取り消されるでしょうし、3年以下の懲役か50万円以下の罰金です。そればかりか、周囲の見る目も変わるでしょう。

それがわかっているのに抑制が利かないとしたら、通常の脳の働きとはいえないということ。「感情をコントロールする司令塔としての前頭葉は、きちんと機能していないのではないか」と疑わざるを得ないのです。

感情のコントロールが難しい人が増えています。

しかもそれが若者に限らず、いい年をした大人や老人にも一定数いる社会が現実です。その一方で、わたしたち日本人はすでに半数以上が40代後半以上で、40代以上は6割を超えます。

そこに、「早い人なら40代前半から前頭葉の老化が始まる」というファクトを加えると、ゾッとするような結論が見えてこないでしょうか。「6割の日本人が前頭葉の機能不全に陥っているのかもしれないという現実です。(32ページより)

事実、知性にあふれ、記憶も確かで計算も速く、時事にも明るく発言も根拠に基づいてしっかりしているという人でも、実際に調べてみると前頭葉だけが縮んでいるということが珍しくないのだそうです。(28ページより)

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日常的に「前頭葉を鍛える」5ヶ条とは?
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