精神科医である『「誰かのため」に生きすぎない』(藤野智哉 著、ディスカヴァー・トゥエンティワン)の著者は、多くの人と関わるなかでよく感じることがあるのだそうです。
それは、「誰か」のためにがんばれる人、他人には気づかいのできるやさしい人も、自分の疲れやしんどさには目を向けられないケースが多いということ。もちろん人のためにがんばるのは悪いことではないけれど、自分自身にも目を向けてほしいというのです。
そして、そんな方たちに向け、次のようなメッセージを投げかけてもいます。
しんどいんなら、もっと手を抜いてもいい。
「助けて」って頼ったり、甘えたりしていい。
もっと自分を優先にしてもいい。
なんでもかんでも自分で背負わなくてもいいんです。(「はじめに」より)
がんばりすぎて自分が倒れたり、つぶれたりしたのではもったいない。もっと自分の価値を感じたほうがいい。だからこそ、「誰かのため」の人生ではなく、「自分のため」の人生を生きることが大切だということ。
そう言われても、いきなり「誰かのため」をすっぱりやめることはできない人も多いと思います。
だから、ちょっとだけ「誰かのため」にやっていることを減らしてみる。
そしてそのぶん「自分のため」の時間を増やしてみる。
「誰かのため」に生きすぎている自分をちょっとだけゆるめてみる。
そんな行動をしてほしいのです。(「はじめに」より)
こうした考え方に基づく本書のなかから、きょうは第4章「無理せずがんばりすぎない『人間関係』のヒント」に焦点を当ててみたいと思います。
しんどさは、比較できるものではない
自分のつらさやしんどさ、悩みを話したとき、「その程度ならまだましだよ」と返してくる人がいます。多くの場合、本人に悪気はないのでしょうが。
でもね、他人のつらさを勝手に推し量り、「つらさマウント」とるのは禁止です。つらさやしんどさは比べるものではないし、比べられるものでもありません。
あなたにはあなたのつらさがあっていいのです。
あなたのそのつらさや、しんどさを、誰かと比べて我慢する必要はないのです。(169〜170ページより)
もちろん世の中には、もっとひどい状態の人や、厳しい環境があるのも事実かもしれません。しかし、だからといって、自分のつらさと比較して「まだましだ」と思うのも筋違い。
よく、「あなたがムダに過ごしたきょうは、誰かが死ぬほど生きたかった明日」だといわれることがあります。しかし、それが「きょうを一生懸命生きよう」という意味であることはわかるけれども、とはいえ「私がムダにした一日」と「誰かが強く望んだ一日」を比較しなくてもいいのにな、と著者は感じるのだそうです。
あなたがムダに過ごした今日は、誰かが死ぬほど生きたかった明日ではありません。
あなた自身が生き延びた今日を、誰かに恥じる必要はないのです。(171ページより)
自分の気持ちを他人とくらべる必要はないということ。なぜなら自分のことは、自分の問題だから。そのため、つらい気持ちや悲しい気持ちを、誰かと比較して我慢したりする必要はないわけです。(168ページより)
どうしても許せない人に、復讐したいなら
「あの人がどうしても許せない」というように、“許せない誰か”にとらわれて苦しんでいる方もいらっしゃるかもしれません。そういう人のことは忘れた方がいい、気にしないほうがいいとわかってはいても、ずっとその思いにとらわれてしまうわけです。著者は、そんな人に伝えたいことばがあるそうです。
あなたを不幸にした人への一番の仕返しは、あなたが幸せになることです。(177ページより)
相手を恨み、相手のことで苦しんでいるあいだ、自分自身は不幸なまま。もしも相手がこちらの不幸を願っているのだとしたら、相手の思うつぼだということになってしまいます。
しかし、相手のことはすっぱり忘れ、自分がハッピーでいることで相手の思惑をぶち壊せるのであれば、それがいちばんいいはず。だからこそ、自分が幸せになることで「許せない人」に復讐してしまおうという発想です。
そもそも相手をうらんでいる時間なんてもったいないです。
「時間」は、すなわち「命」です。
許せない人のためにあなたの命をムダにしないでください。(178ページより)
「許せない人」を許せないのは、相手がこちらの予想を裏切ったから。そのため、いっそう怒りが湧いてくると考えることもできるわけです。
事実、人間は予想外のことを急にされると、イラっときたり、動揺したりするもの。だからこそ、可能な限りあらゆることを予想しておいたほうがいいのではないかと著者はいいます。
「かもしれない運転」ってあるじゃないですか。起こりうる危険を、あらかじめ予測しながら運転することで、事故を防ぐ方法です。
それと同じように、「相手は自分とは全然違っていて、驚くようなことをする『かもしれない』」と想像してみると、ちょっと気持ちが落ち着いてきませんか?(179ページより)
「裏切るかもしれない」「嘘をつくかもしれない」「遅刻するかもしれない」というように、人間関係においても「かもしれない運転」をすることで、傷ついたり悲しんだりすることが減るかもしれないというわけです。(177ページより)
幼少時に病気で生死の境をさまよったことがあるからこそ、いま、与えられた時間でできることはやりたいと著者は考えているのだといいます。
そうした考えを軸とした本書を参考にしながら、「誰かのため」に生きすぎている自分が本当に進むべき道を模索してみてはいかがでしょうか?
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