近年「生まれつき非常に感受性が鋭く、敏感な気質をもった人」への注目度が高まっています。
こうした心の特質をもつ人の一部は「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」や「とても敏感な人」と呼ばれることもありますが、「他人にはやさしくできるのに、自分にはやさしくできない」ことが特徴のひとつ。
とくに抱きやすいとされるのが、他者に対する「罪悪感」です。
『身勝手な世界に生きるまじめすぎる人たち 罪悪感を手放して毎日をラクにする方法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、デンマーク出身の牧師・心理療法士であり、HSPに苦しむ世界中の人に自己理解のきっかけをもたらしてきたイルセ・サンの新刊。
本書では生きづらさの原因となる「過剰な罪悪感」に注目し、どうすれば神経がすり減るような葛藤から逃れて、自分自身にあたたかな目を向けられるようになるのかを教えてくれています。
罪悪感は「責任感のある人間」の証

本書で「まじめすぎる人たち」と表現される人々が他者に対して抱く罪悪感とは、たとえば次のようなものです。
・雰囲気が悪かったり、幸福でなかったり、痛みを感じたりすると、すぐに自分のせいだと感じる。
・友人や家族からの誘い(お願い)を断れない。断ると1日ひどい気分で過ごすことになるから。
・人と接すると激しく疲労し、そのことをふがいなく感じる。
これらは、彼らが自分自身を誰よりも厳しく評価しているから起こること。
自己評価には主観が入ることでさまざまな要素が絡み、過度に辛辣になることも少なくないと著者は述べています。
その厳しい自己評価の結果、あなたが罪悪感を覚えることがあるのならば、先にお伝えしておきましょう。
「罪悪感を覚えるのは、悪いことではありません」
なぜならそれは、あなたがあらゆることに対してポジティブな影響を及ぼそうと願う、責任感のある人間だという証拠なのですから。
(『身勝手な世界に生きるまじめすぎる人たち 罪悪感を手放して毎日をラクにする方法』12ページより引用)
過剰な罪悪感から解放されるには、「自責の念と罪悪感のメカニズムを知り、責任の境界線がどこにあるのかを明確にする」ことが必要だと著者はいいます。
しかし、どこまでが適切な罪悪感で、どこからが過剰なのか──「まじめすぎる人たち」がそれを自分で判断するのは、とても難しいこと。
本書はそうした人のために、著者自身の経験や、著者のクライアントの体験が豊富に紹介されているのが特徴です。
母親に対して抱き続けてきた「罪悪感」

あるとき、著者が入院中の母を見舞ったときのこと。面会後に鏡で自分の顔を見た著者は、たった2時間で自分が疲れ切り、ひどい顔色になっていることに驚いたのだとか。
当時の著者には、なぜ母といることで自分が疲弊してしまうのか、いまいちよくわかっていなかったといいます。じつはその理由こそが、罪悪感だったのです。
子ども時代からずっと、母親との関係性において、私の心を主に支配していたのは、「罪悪感」でした。
それが不合理なものだということははっきりわかっていました。
それでも私は何十年もの間、罪悪感が、ほかの感情を押しのけ、私の心で陣取るのを許してしまっていました。
(『身勝手な世界に生きるまじめすぎる人たち 罪悪感を手放して毎日をラクにする方法』29ページより引用)
本書に登場する人の多くを苦しめているのが、親子やパートナーに対して、相手を常に喜ばせることができないことから生じる罪悪感や自責の念。
期待に応えたいと願うまじめな気持ちが、自分の心を支配し、人生を生きづらくさせるほど大きく成長してしまうのです。
「自分への幻想」を手放せば自由になれる

自分の核というべき人間関係において、なぜこうした苦しみが生まれるのか。
著者がその理由のひとつと考えるのが、「自分自身の重要性、権力、影響力への過信」です。
私は長年、母親との関係につきまとう罪悪感と闘ってきました。
その原因は、権力を持つという幻想です。私は母に、私のことを見つめ、受け容れられるような健全で、接しやすい人になってほしいという願いを抱いていました。
そして、うまくいけば、自分が母を変えられるとも思っていたのです。
私は何年も自分を責め続け、ついにある日、自分には権力があるという幻想を手放し、無力さや悲しみを感じられるようになりました。
そうしてはじめて、罪悪感から自由になれたのです。
(『身勝手な世界に生きるまじめすぎる人たち 罪悪感を手放して毎日をラクにする方法』215ページより引用)
人生における困難と闘ううえで、自分の能力を過信しすぎることは、大きな苦しみの原因になる場合があると著者はいいます。
「すべての責任を負おうとする」ということは、「あらゆることを変える権力が自分にある」と信じることでもある、と。
「自分への幻想」を手放すことは、罪悪感を手放し、軽やかな心を手に入れるための第一歩。
自分自身をやさしく扱えないと感じる人にとって、本書は生きる指針のひとつとなるはずです。
マイロハスより転載(2021.2.15公開記事)
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Image: Shutterstock
Source: ディスカヴァー・トゥエンティワン