創造的な活動ができなくなってしまう「創造性の壊死(Creative Mortification)」に、苦しんだことはありますか。

これは、教育学者Ronald Beghetto博士がつくった言葉で、悪い結果が出たために、創造的な道を歩き続ける意欲を失くしてしまうことを意味します。

たとえば、誰でも参加できる「オープンマイク」のイベントで「スタンダップコメディ」をやってみたけれども、笑いを取るどころかザワついてしまい、お笑いの道を諦めたとか、オーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」でアコーディオンを演奏したものの、散々な結果だったためアコーディオンを燃やしてしまった、などがこれに当たります。

「創造性の壊死」は、否定的な反応をされて一時的に落ち込むこととは違います。YouTubeのコメント欄を読んだりして一時的に落ち込んだりするのは「創造性の抑圧(Creative Suppression)」と呼ばれますが、創造的な活動にはつきものです。

「創造性の壊死」がどういうものかは、言葉のもともとの定義から理解できます。

「mortification」とは「死に至らしめること」を意味し、言葉が暗示する通り、あらゆる最終的な状態を表します。

歌が大好きだったのに、学芸会に出たあと、まったく歌わなくなってしまったとか、小学4年生のときの美術の先生の批評が原因で、それ以来ずっと「絵は描けません」と言い続けている、などが「創造性の壊死」です。

「創造性の壊死」とは、すっかり諦めてしまうことなのです。

「失意」が「壊死」になるとき

Beghetto博士の研究によると、「創造性の壊死」には、主に2つの要因があります。1つ目は、「結果が悪かったのは、『創造的能力の限界』のせいだと考えること」、2つ目は「ネガティブな感情、特に恥ずかしさを経験すること」です。

1. 自分には才能がないと思いはじめる

創造性を存分に発揮して成功している人に、どうやってそうなったか尋ねたら、たいていの人は「一生懸命、努力しました」と答えるでしょう。「これは生まれつきです」と答える人はほとんどいないと思います。

それでも、「創造的な活動には、生まれつき才能があるかないかが関わっている」と考える人はたくさんいます。特に自分のこととなると、そう考えがち。

「創造性の壊死」は、外的な出来事、つまり「自分の生まれつきの才能」に対して感じる不安に、追い打ちをかけるような出来事によって生じることがあるのです。

2. 耐えられないほどの羞恥を覚える

「創造性の壊死」を引き起こす2つ目の主な要因は、「恥ずかしさ」です。

自分が思うほど上手くできなかったことが恥ずかしい、という感情は、誰でも覚えがあるでしょう。創造的な活動に関しては、その傷がさらに深くなることが多いのです。人前で恥ずかしい思いをした場合は、特にそうです。

創造的な活動には、自分の奥深くにある大事な部分を、ほかの人にさらけ出すような感覚があります。そのようにして表現したことが受け入れられないと(あるいは、受け入れられていないと感じるだけでも)、おそらく恥ずかしさに襲われるでしょう。

そして、恥ずかしいというネガティブな感情はとても強力なため、何とかして避けようとする人が多いのです。それで、自分がそれまで楽しんでいたことも、諦めてしまうわけです。

「創造性の壊死」に打ち克つためには

「創造性の壊死」を誰もが克服できるような万能薬はありません

私たちはそれぞれの道を歩んでおり、精神的な問題に型通りの答えが当てはまることは、めったにないのです。

それでも、いくつか役に立ちそうなポイントを紹介しておきましょう

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立ち直るにはまず、創造性に関する誤解を解くことから
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