今月、ティム・クックのAppleのCEOとしての在任期間が、ジョブズを抜いて最長となりました。
2011年に亡くなったジョブズは、4249日間CEOを務めました。厳密には、ジョブズはそれ以前にも暫定的にCEOに就任していましたが、公式記録としてはクックの在任期間が最長です。
世界でも最大規模で、時価総額も大きく、さらにはクリエイティブの最先端を行くといっても過言ではない組織を率いることについて、今月、GQ誌のインタビューにクックが答えました。
このとき彼が言及した、ジョブズから受け継いだ教えこそが、11年半にわたるクックの成功の要因だと言えそうです。
クックを成功に導いたジョブズの教え
ここがスティーブの素晴らしいところだと思うのですが、彼は、イノベーションや創造性が、ごく一部の限られた部署から生まれるのではないことをよく理解していました。組織のどこからでも生まれうる、と。
この言葉を聞くと、Appleの目指すところを定めたのがジョブズであっても、10年以上にわたってそこに向かって組織を率いてきたのはクックであることが理解できます。
今日のApple は、もはや1976年にジョブスが仲間とガレージで創業した企業ではありません。
iPodやiMac、iPhone などのAppleを代表する製品の生みの親としてジョブズが評価されていますが、ジョブズなくしてはiPhone は存在しなかったと同時に、クックなしではこの世に送り出されなかったのもまた事実です。
我々は、ほかの分野同様オペレーションでも、イノベーションや創造性を重視するようにしています。デザインした製品をつくり上げるために。
Appleは、これほどの規模の企業としては特異なところがあります。通常の大企業のように、損益計算書を持つ部門に分かれていないことです。
それどころか、ジョブスが1997年にAppleに復帰した後、最初に着手したのは、これら損益計算書を廃止し、設計・ソフトウェア開発・製造などの業務別に会社を再編成することでした。
あらゆる場所に見られるAppleのイノベーションマインド
そして、Appleのイノベーションマインドはこの再編成に留まりません。
製品開発チームが開発を、設計チームが外観や仕様を決定することに変わりありませんが、Appleの成功の根底にはジョブズのある信念があります。
組織のどの部署でもイノベーションを。
創造性とイノベーションに関するこの信念、世の中の大抵の企業が想定していることを真っ向から否定する、大胆な発言といっていいでしょう。
「製品を創造する」タイプとの印象を持たれたことのないクックにとって、この発言は特に重要な意味を持ちます。
設計者でもエンジニアでもない、製品のビジョンを持つ指導者でもない。クックは CEO(最高経営責任者)なのです。
確かに、GoogleのCEO、サンダー・ピチャイのように元エンジニアがCEOになることもあるでしょう。ジョブズのような製品ビジョンを持つ者がなることも。
彼らの経験がテック企業を経営していくうえで重要であったことは疑う余地はありません。
それでも、創造性はあらゆる部門で発揮される、またそうあるべきという信念がクックを成功に導くカギになったことは確かです。
これは、クックが、前任者であり師でもあるジョブズから学び、信条としたことでもあります。そのコミットメントがクックの成功のカギとなりました。
Source: GQ
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