自分の姿勢を良くしようとしているのに、良くなっている気がしないという人は、このことを聞いたら驚くかもしれません。
学校や会社でどんな姿勢で立っても、座っても、実際にはまったく問題ではないかもしれないのです。少なくとも、自分に合わない姿勢になっていなければ。
姿勢と苦痛にはそこまで関連がない
ここで1つ興味深い質問をします。あなたはなぜ自分の姿勢を直さなければと思っているのですか?
真っ直ぐ立ったり座ったりしているほうが見た目が良い、もしくは何となく「良い」感じがする、という思い込みに囚われているのかもしれません。
しかし、それで直さなければと思う必要はないのです。
真っ直ぐ座ったほうが見た目が良いと思うなら、真っ直ぐ座ればいいですし、猫背気味のほうが快適なのであれば、そう座ればいいです。
この研究をしている科学者グループは、次のように述べています。
性別、気品、役職、倫理、魅力などを反映した姿勢が、長年にわたって典型となったことで、意味のない姿勢が理想として強化されています
しかし、多くの人が、悪い姿勢は何となく体に悪そうだと考えているところもあります。それで、人間工学的に悪いものがあれば、会社や職場を責めているのではないでしょうか。
何時間も不自然な姿勢のままでいると体を痛めるかもしれないので、そのような姿勢を避けるのは当然です。背筋を伸ばして、床に足をついて座れるイスのほうがいいです。
しかし、だからといって、前屈みになってしまうからと、背筋を伸ばして座らなければならないという意味ではありません。
立ったり座ったりする姿勢が痛みにつながるという考え方も、合っているわけありません。
腰が大きく曲がっている人のほうが、腰痛になりやすいわけでもなく、意識的に自分の姿勢を“正して”、腰痛が軽減するわけでもありません。(腰痛について詳しく知りたい人は、こちらのガイド記事に載っていることを試してみるといいかもしれません)
誰にでも合う「正しい」姿勢はない
「背筋を伸ばして」座ったり、「最適な」姿勢で座ったりするメリットがあったとしても、問題もあります。専門家が賛成しかねる、良いといわれる姿勢もあります。
約300人のヨーロッパの理学療法士を対象としたアンケートで、同じ人がやっている異なる姿勢のうち、「一番良いもの」を聞いたところ、9つの姿勢が選ばれました。理学療法士の回答は主に2つの姿勢に偏りましたが、その2つは非常に違うものでした。
さらに大事なのは、いわゆる「正しい」と思われている姿勢には、維持するのが大変なものもあります。背筋を伸ばして座るには、より筋肉を使うことになるので、疲れやすく、休憩したくなる姿勢とも言えます。
快適な姿勢というのは人によって異なるので、いろいろな姿勢を試してみるのがいいでしょう
人々の姿勢に対する思い込みを再評価する研究の著者は、上のように書いています。実際、腰痛がある人は、たとえ猫背であっても、リラックスできる姿勢のほうが痛みが緩和するかもしれません。
結局、人間の体は、毎日さまざまな姿勢や体勢になって動かされています。先ほどの著者は「背骨は頑丈なので信用していい」と強調しています。
1日中さまざまな姿勢で座っているかもしれず、腰を曲げたり、何かを拾うのに前屈みになったり、やるべき作業に応じて、背骨を曲げたり伸ばしたりしています。
「正しい」姿勢で立ったり座ったりするのに囚われていると、逆効果にもなりかねません。自分が立ったり、座ったり、動いたりする姿勢が、間違っているかもしれないと、無駄に恐れることになります。
Source: Movement Science Media(1, 2), National Library of Medicine(1, 2), Support the Guardian,