「AIの時代がやってくる」
これは、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO兼会長が、同社の直近の決算説明会で述べた強気の言葉です。
AIに関する最近のPWCの調査では、昨年52%の企業がAIの導入計画を加速させたことがわかっており、IDCの予測でもAIに対する世界の支出が2026年までに3,000億ドルを超えるとされています。
では、ビジネスリーダーとして、AIが進化し続ける世界に、どう対処すればいいのでしょうか。
1. 好奇心を持ち続け、核となるビジネスの目標から外れない
リーダーは、好奇心と適応力を持ち続ける必要があります。
AIに対して少し怖く感じるかもしれませんが、だからといって受け入れるのを躊躇ってはいけません。
一夜にしてAIの専門家になる必要はありませんが、AIとは何か、どのように機能するのか、組織内でどのような応用方法が考えられるかについて、大まかに理解しておくべきでしょう。
また、AIをめぐる大々的な宣伝に踊らされ、組織のあらゆる側面にAIを導入しなければならないように感じてしまうのも無理はありません。
しかし、覚えておくべきなのは、AIはリーダーシップの道具箱の中にあるツールの1つに過ぎないということです。全体像に焦点を合わせ、AIによって組織のどこに、どのように付加価値をもたらすことができるかを戦略的に考えることが重要です。
AIを使うためだけにAIを使うのはやめましょう。
AIが組織の目標や価値観に合致することを確認し、それを従業員、投資家、顧客というすべてのステークホルダーに効果的に伝えられるようにしましょう。
2. 小さくはじめて繰り返す
すぐに本格的に取り組む必要はありません。小さくはじめて、特定の問題や使用事例に焦点を当てましょう。たとえば、データ入力やカスタマーサービスの問い合わせなど、決まりきった作業をAIで自動化できます。
ある程度成功したら、その勢いに乗ってさらに大きな課題に取り組むと良いでしょう。
また、AIはまだ比較的新しい技術であるため、進めつつ繰り返して改善することが重要だということも覚えておきましょう。
失敗すること、何かを試してうまくいかないことを恐れないでください。エリック・シュミットが以下のように述べた、Googleの考え方を取り入れましょう。
私たちは失敗を称える。この会社では、非常に難しいことに挑戦して、うまくいかなかったとしても、そこから学び、新しいことに生かすことができればいい。
3. 人材がこれまで以上に重要
AIはすばらしいことがいろいろとできますが、人間が持っている心の知能や創造性はまだ欠けています。
機械がデータ量の多いルーチン化されたワークフローを人間よりもうまくこなせるようになるにつれて、信頼関係を構築する人間の能力こそが希少な資源となっていくでしょう。そのため、人材を育てていく仕組みが必要です。
一方では、教育やトレーニングに進んで投資し、その分野の専門家とパートナーシップを築き、学習と改善を続ける文化を育む必要があります。他方では、AIを活用した職場で重要となるスキルを見直す必要があります。
たとえば、批判的思考、効果的なコミュニケーション、テクノロジーへの適応力、他者との関係を構築・維持する能力は、今後も価値の高い、需要を持ち続けるヒューマンスキルです。
また、リーダーとして、自分自身の人間性や共感を維持し、アルゴリズムだけに頼って意思決定しないことも忘れてはなりません。AIは人間の能力を高めるためのツールであって、それに取って代わるものではないということを覚えておきましょう。
4. 優れた能力を持つ多様性のあるチームを創る
リーダーが理解しなければならないのは、AIの偏りは学習させたデータ次第だということです。データに偏りや差別が含まれていれば、そうした偏りがAIシステムの出力に反映されます。
これによって、雇用や融資、刑事司法などの分野で誤った情報や差別的な結果につながる恐れがあるのです。
AIを使った取り組みを行なうには、優れた能力を持つ多様性のあるチームを編成しなければなりません。
これには、技術的な専門家だけでなく、様々な背景や考え方を持つ人たちも必要です。幅広い経験や視点を持つチームを作ることで、AIを使った取り組みを受容的で倫理的なものにできます。
究極的に言えば、AIは現在のビジネスのやり方を創造的に破壊し、変革するテクノロジーです。この変革の核にあるのは、従来のリーダーシップのモデルから、アジリティや適応性、変化を受け入れる意欲を重視する新しいパラダイムへの移行です。
イノベーションと新しい試みの文化を育み、機械と協働できる優れた能力を持つチームを構築して、ステークホルダーにAIの利点を効果的に伝えることができるリーダーには、今後数年間で成功を収めるのにうってつけの状況となるでしょう。
Originally published by Fast Company [原文]
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